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338・説得

前回のあらすじ


イザルス達の持ち込んでいたモンスターの体内には違法薬物の誘引剤が詰め込まれていた。アネット等を含め一同騎士団に連行されるが、そこに駆け付けたギルド側の手で釈放されるアネット。しかしイザルス達は当事者として監禁される事が決まった。



「なる程のぉ まさかそんな手でくるとは 外門の意味が無いわい」



 説明を必要とする箇所は騎士団だけでなく、当然冒険者ギルドも求めてくる。モンスター関連は言うなれば冒険者の華。彼等にしてみればそれを汚された思いだろう。


 ギルド長の部屋にて周囲を複数人で囲まれた僕達は今、半ばお説教にも似た境遇に晒されている。



「ワーカー連中はとっちめるとしてだ 問題はどうやって外敵を見付けるかだな そいつ等を排除しなければこの問題の解決にはならないぜ」

「町の外からやって来るとなると広域捜査しかないが 件の製造拠点は店一軒分で事足りたのだろう? 自然の地形を利用して地下でも作られたら発見は困難だ」

「確か捕まってるワーカーは町に店を構えていると聞く 加えてモンスターを直接受け取ってるときた 完全に黒じゃないか 即刻捕まえて口を割らせればいいのでは?」

「ふーむ どうだろうな 一商人などトカゲの尻尾だろう 切られて終わりではないか?」



 ギルド関係者は真ん中に据えた僕達なんかいない者かのように無視して口々議論に花を咲かす。僕達はただ巻き込まれただけなのに、疎外感にも似たこの空気は何となく居たたまれない。


 これを切っ掛けに誘引剤事件に終止符を打ちたいギルドサイドは、ああでもないこうでもないと各々妙案を持ち寄った。しかしどれも決定打に欠けるようで結論がでない。


 そんな纏まらない有識者の会話に一石を投じる一言が、放ったらかしにされてる中の1人ミストリアから出た。



〔イザルス達・・・彼等ワーカーに協力を仰げば宜しいのではありませんか?〕


「何だ急に 敵かどうかも分からん連中など信用する訳にはいかんだろ」

「協力する振りをして逃げられては敵わん 折角手にした手掛かりでもあるのだしな」


〔少なくとも彼等は敵ではありませんわ それは()()保証致します ね ギルド長〕


「ふぅむ・・・ じゃが敵でなくとも その身内となれば手心を加える可能性は否定できんじゃろ 裏切らん保証にはならん」


〔どうでしょう 彼は少なくとも家の事をよく思ってはいないみたいです 今回に至っては犯罪の片棒まで担がされたのです 不信感は私達以上に募らせてる筈ですわ〕


「内から崩す・・・か ここで進言するからには何か手立てはあるのかの?」


〔犯人を捕まえる事を念頭に置くのではなく 彼等の事業の邪魔をすれば薬物の流入を断つ事に繋がるのではないですか? ちなみにイザルス達が拘束された事を彼等の家・・・雇い主に知らせました?〕


「それはまだじゃ 捕まったワーカー達からの自供を得られるまで 下手な横槍を入れられる訳にもいかんしな」


〔・・・では 今回持ち込まれたモンスターと薬物はどうされました?〕


「あれは証拠品じゃ 手はつけとらんよ」


〔ならば開いたモンスターに元通りにし 薬物を詰めて縫合して下さい それをイザルス達に運ばせて何事もなかったように偽装します


 彼等はあくまで運搬役なので モンスターを引き渡している連中こそ実行犯 なのでイザルス達をつけ 合流した犯人の後を尾行します 上手くいけば製造拠点まで案内してくれるかもしれませんよ?〕


「あー 理には適ってるが そんなトントン拍子に事が進むか?」


〔その為にもイザルス達は解放して いつも通り過ごしてもらうのです 別に特別協力を要請する必要はありません 何事もなければ彼等はまたモンスターを寄越すでしょう 上手くいくかは我々次第です〕


「ハッ 言ってくれる」



 誘引剤が商人にとってどれ程の利益になるのかは分からないけど、危険を犯してでも実行するからには相応の収入になるんだろう。ミストリアの言う通り辞められない家業と言うやつだ。



「となると 人選はどうするかの」


「乗るのかよ親父!」


「普段通りと言うのが気に入った 事は急を有する 捕まったワーカーに疑念を抱かれてはマズイからの さて・・・騎士団をどう説得したものか」


「それなら僕も行きたいです エルヴィラさんもそうだけど イザルス達にも事情を話さなきゃだし 真相を知ってしまった以上 彼等は選ばなければならないから」


「ふむ ではここで一度採決をとろう 皆の衆 これに反対意見はないかの?」


「「「・・・・・・・」」」



 それからのギルドの動きは早かった。光陰矢の如し。彼等は時間の大切さを心得ているようだ。ランドルフさんの一声でギルド全体が一枚岩のように動く様を見た。


 一人一人が率先して行動に起こす様子は僕に心強さを与えてくれる。と同時に僕も何かしなくてはと背中を押された気分になった。










「イザルス 落ち着いて聞いて欲しいんだ」


「・・・」



 僕達が詰所を離れている間、騎士団による尋問を受けたのか、彼等は返事も返せない程グッタリと消沈していた。薬物案件は人間のみならずダンジョンのモンスターをも動かす一大事。


 それによる弊害が内と外とでポツポツ表れてるようで、対処に当たる騎士団もこの件に関してはピリピリとしている。儘ならない苛立をイザルス達にぶつけても不思議ではないだろう。



「君達が持ち込んでるモンスターについてギルドが動く事になったんだ ・・・今は騎士団を説得中だけど もし許可がおりたら 君達には普段通り 普通にしててもらいたいんだ」


「? ・・・どう言う 事だよ」


「モンスターの中に仕込まれてたのは 今ハルメリーで問題になってる薬物で ギルドも騎士団もその出所を探ってるんだ だから・・・」


「俺達にモンスター渡してる奴等が怪しいって事か そいつ等をどうにかしたいって事だよな」


「うん それで・・・もしかしたら君の家にも何かしらの影響が及ぶかも しれないんだ・・・」


「・・・ ・・・ まぁ そう なるよな」


「協力して もらえる?」


「・・・ いいぜ やってやるよ」


「いいの? 家族関係とか 今までの環境とか 全部変わっちゃうかもなんだよ?」


「いい 俺にとって家族の中に居場所なんてなかったから 今回の事もバレたらバレたで俺達のせいにするに決まってるんだ そう言う奴だよ ウチの家族は」

「イザルス 本当にいいのか?」

「ああ お前等は俺の家の事知ってるだろ? 今回の事で決心ついたよ ホントはもっと早く答えを出すべきだったけど 結局ここまでグダグダ長引かせちまった」



 彼からは以前、自分の家族についてチラリと聞かされた事がある。心証はあまり芳しくないようで、まがりなりに満たされた家族観ではなさそうだった。


 それにしても自分の家族を犯罪に巻き込む親って本当にいたんだ。


 ・・・望まぬ子を売る親もいるんだから、そう言う人もいておかしくないのか。



「で 具体的には何をすればいいんだ?」


「今日と同じくモンスターを受け取ってほしいんだ もちろんバレた事はご家族にも内緒にね?」


「それだけか? 何か釈然としないな そっちが動くんなら俺も何かやってやりたいぜ」


「ううん いつも通りがいいんだ 相手に違和感を与えちゃダメだから その代わり君達が接触している人達の人数とかスキルさんとかの事を話してほしいんだ」



 自分達が動けない事を残念がってたけど、彼等からもたらされる情報は有益だ。それを踏まえて作戦を練られれば此方にとって大きなアドバンテージとなる。


 後はエルヴィラさんを説得できるかだけど・・・ 今はミストリアを連れていったランドルフさんを信じよう。



 ★



「なる程 話は分かった しかし事は慎重に動かねば頭を取り逃がす事になりかねんぞ 牢屋のワーカーの潔白も証明された訳ではないからな 途中で裏切られては全てが水泡に帰す」


「それは大丈夫じゃろ ワシが保証する」


「貴殿の功績は信頼の証であろうが それが作戦成功の保証にはならん 相手が犯罪組織にせよ貴族であるにせよ とるなら一網打尽にせねばならんからな」


〔とは言え悠長に事を構えていては 彼等は手を変え品を変えるでしょう 今回は偶然手の内が分かりましたが 次は果たしてどうなるか〕


「急く気持ちも分かります 私もこの件は早々に解決したい ですがこの手の輩は取り逃がすと地下に引っ込み行方をくらます だからこそ確実性を重視したい」


「奴等は森でやり取りをしとる モンスターの種類からスプリントノーゼ方面から調達しとるらしい事が判明した 犯罪組織と言うならば彼の街程 理に適った土地もなかろう」


「厄介この上ないな あそこは悪の巣窟と名高い もし拠点があの街となると向こうの貴族にも話を通さねば ろくな調査もままならん」


〔それは・・・もしそうなった場合 伏魔殿なりの自浄作用が働くでしょう あの街の本質は悪意のコントロールと聞きました 他領に影響を及ぼす厄介者は粛正されるかと 現に隣の公爵家とのいざこざはこれまで聞き及んではおりません 問題は厄介事の種を街の外で育てている場合です〕


「需要があるから供給する者がいる 歯止めは効かないか・・・ 何であれ真相が分からぬではいつまでも動けん 分かった ギルドの提案に乗ろう」



 欲は人を変える。頭の痛い話だ。しかしその魅力には抗い難い魔力が籠っている事をこの身は知っている。一度手を伸ばせば引っ込めるのは難しい。


『予見の目』


 私の家族から温もりを奪った力だが、幸運にも絆が関係を修復した。だが薬物にあるのは搾取と破滅。その力を自ら断てる者がいったいどの程度いる事か。


 人を腐らす所業を撒く者は、それにどんなお題目が付こうとも悪だ。自分さえ良ければいい、今さえ良ければいい。そんな思考が蔓延した世界はきっと地獄色に染まるのだろうな。





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