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1・スキルさんとの出会い

 僕は冒険者に憧れていた。


 僕の住む町ハルメリーも昔は寂しい片田舎。戦禍に巻き込まれた廃墟の町だったそうだ。


 しかしある人物の登場でハルメリーも腕利きが集う冒険者の町へと変貌する。


 その人物こそ伝説とまで言われた探窟家コドリン。


 彼が発見したダンジョンからは猛者をも唸らせる凶悪なモンスターと、市場経済を潤す鉱物資源が湯水のように湧いたのだとか。


 噂が噂を呼びこのハルメリーは少しずつ少しずつその規模を拡大していった。


 僕はそんな町で育ったんだ。


 道行く冒険者達の颯爽とした様は今でも僕の脳に焼き付いて離れない。それだけ僕には憧れの存在・・・英雄のように写ったんだ。


 その感情は誰にも否定できないだろう。何せ供達の遊びと言ったらもっぱら冒険者ごっこと相場が決まっていたんだから。


 僕も例に漏れずそれに混じって暗くなるまで遊んだものだった。





 しかし誰しも自分の望んだ人生を歩める訳じゃない。


 この世には『スキルさん』と言う小さいお人形みたいな生き物がいる。普段は空中を浮いていたり地面を転がっていたり木陰でお昼寝していたり・・・


 一見するととても愛らしいスキルさんだけど、彼等に気に入られれば奇跡ともとれる多大な恩恵で超常的な力を手にする事ができるとか。


 ここに集う冒険者達もそんなスキルさんと仲良くなった人達ばかりだ。だからか子供達は親の目を盗み自分の望むスキルさん探しに躍起になる。


 話し掛けてみたり撫でてみたり時には餌で釣ってみたりと、皆何とか仲良くなれるよう日々努めているのだ。しかしどの家の親もそれを快く思わないらしい。何でだろう・・・


 しかし一方で才能が有る子は早い内からスキルさんとお友達になるそうだ。僕の周りにもそういう子は何人かいた。


 でも僕は中々お友だちにはなれなかった。





 冒険者になりたい──────


 スキルさんとお友達になりたいと言うより、漠然と冒険に憧れていたのがいけないのか、スキルさんは中々僕に応えてはくれなかった。


 才能がものを言うのだろうか。確かに他の子と比べると背も小さくて力も弱くて直ぐ疲れる。おまけに足も遅い・・・


 それでも愚直に頑張ればと買ってもらった木の剣を手に自分信じて素振りをするのだ。例え周囲からお前には無理だと毎日浴びせられようとも。


 僕は諦めない。





 そんなある日のこと家の裏庭で剣を振っていると木の木陰から此方をじ~っと見つめる1人のスキルさんと目があった。


 時刻は夕方を過ぎ辺りは夜の静寂に包まれようとしている時分だった。そのスキルさんは今まで見た事のない夜の(とばり)より深い闇を湛えてそこにいた。



「あなたはスキルさん?」



 スキルさんは僕の声に驚いたのかサッと木陰に隠れてしまうが、僕の事が気になるのか頭を半分覗かせてこっちを見ていた。



「スキルさん 良かったら僕とお話ししませんか?」



 その言葉にスキルさんは警戒しながらも恐る恐る近付いてきて僕の言葉に応えてくれた。



『何してるの~?』


「剣の稽古をしてるんです 僕は将来冒険者になりたいんです」


『冒険者~?』


「はい 冒険者は凄いんです! 色々な世界を巡って様々な体験を仲間と共に乗り越える! 僕はそんな彼らに畏敬の念を抱いているんです!」


『お~ 凄そ~』


「スキルさんは何か好きな事とかやりたい事 夢なんかはあるんですか?」


『夢~・・・・・・あるよ~?』


「へぇ~ それはどんな夢なんですか?」


『え~とね~ ボクの世界を素晴らしいって言ってもらえる事~』


「スキルさんの世界ですか? そんなのあるんですか?」


『あるよ~ ボクと一緒に辿り着く先の世界~』


「それって冒険者達が憧れる勇者とか英雄とかですか!?」


『ん~ たぶん~?』


「わ~! そんな世界があるのなら僕も見てみたいです!」


『見る~? でも~・・・・ボクは誰からも喜ばれた事が無いんだ~』


「そうなんですか? でも普通の人には見られない世界があるのなら 僕は見てみたいです」


『きっと普通の人でも普通じゃない人でも見られない世界が見られるよ~』


「それは凄いです! スキルさん! 良ければその世界 僕にも見せてくれませんか?」


『いいよ~ でもほんとにいいの~?』


「僕は冒険がしたいんです そこでしか見られない景色があるのなら 是非とも見てみたい! 体験してみたいです!」


『ふ~ん わかった~ これからよろしくね~☆』



 そう言ってスキルさんは僕の足下まで来ると、まるで猫が体を擦り付けるようにくっついてきた。


 そして僕の視界は今まで見た事も無い夜より深い漆黒の闇へと包まれていったのだ。





 これが僕とスキルさん“盲目さん”との出会いだった。





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