いぶりがっこ
夜行バスを利用し秋田駅に着いた僕は、固まった身体をほぐしつつ駅から出てくる人を眺めていた。
強い日差しに顔をしかめるサラリーマン、ハンカチをうちわ代わりにしている二人組の女性
良い意味で垢抜けていない女子高生、その隣には突発性毛髪切断症候群を患ってしまった上にメラニン色素の餌食となったガングロの学生。
辛い闘病生活を支えてあげてほしい、彼の母親にでもそう言われたのだろう。
不幸なことに彼女の母親と頭髪の育たない彼の母親は仲が良かったのだ。
思えば彼女の人生はいつもこうだった。
幼い頃から共に行動させられていた彼女は興味を持ったピアノ教室に通うことは叶わず、中学生の時に初めて好きになったクラスメイトと街へ出かけることもできず、委員会すらも彼とペアで組まされていた。
高校に入ればようやく自由な生活を送れる––––。
そんな彼女の希望は入学初日に裏切られることとなる。
新しい生活に期待を寄せ、春休みの間に覚えた化粧で気合を入れた彼女が玄関を開けると彼と、彼の母親がいた。
その時から彼女は全てを諦めたのだろう。
汗で透けた色気のない下着が全てを物語っていた。
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