表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/41

006 桜ヶ丘結奈6

 空の宮中央の駅前には、おしゃれなカフェやレストランが立ち並ぶ一帯があって、「スイーツ小径(こみち)」っていう名前がついているほどだ。その名の通り、お店によってさまざまなスイーツが食べられる。星花女子はもちろん、近くで働くOLさんたちにも人気のスポットだった。欠点は、足を運びすぎると体重計に乗るのが怖くなることと、ネーミングが安易すぎてちょっと恥ずかしいこと。


 立ち並ぶ店々の中から、スマホで調べたカフェを探し当てる。あまり派手派手しくなく、落ち着いた雰囲気のする店構えだ。和風のスイーツのほかにランチメニューもあるらしく、お昼どきの店内は女性客でにぎわっていた。


「ここでいい?」

「おー! 抹茶パフェのお店、探してくれたんですか?」

 店の前にはうぐいす色の看板が立ててある。まあね、とドヤ顔をした。ありがとう、食べログ。


 ドアの鈴を鳴らして店内に入る。案内された窓際の二人席に向かい合って座り、メニューに額を寄せる。カフェっぽい洋食の写真が並んでいる。せっかくだから、奏乃ちゃんと一緒のものを頼もうかな。そっちのほうが友達っぽいし。


「何にする?」

「むむー。オムライスと、黒蜜抹茶パフェですかねー」

「ふーん……じゃあ、わたしもオムライスにしよ」

「えぇーっ」

 奏乃ちゃんが文句ありげな声を出す。一緒じゃダメなんだろうか。


「じゃ、あたしはラザニアにします」

「なんで!?」

 ひみつー。問い詰めるひまもくれず、奏乃ちゃんはにこにこしながら通りがかった店員さんに声をかけてしまった。


「先輩からどうぞ」

「えーっと……じゃあ、ラザニアと、抹茶ラテのアイスで」

 奏乃ちゃんの出方をうかがってみる。どうしてカフェで心理戦をしないといけないんだろう。


「あと、特製オムライスのスイーツセットの抹茶パフェとー……ミックスサンドと、ホットミルクティーおねがいしまーす」

 やっぱり、オムライスにしてきた。なんかおまけがついてたけど。じゃあ。


「えーっと、じゃあわたしも……むっ!?」

「以上でお願いします」

 唇を人差し指と親指でつままれた。指先から、いつものきんもくせいの匂いが舞った。しゃべれない。ずるい、と目で抗議すると、彼女の楽しそうな顔が映る。


「……よろしいですか?」

「いいです」

 奏乃ちゃんがうなづく。ウェイトレスさんは苦笑いしながら注文を確認して、キッチンに戻っていく。ようやく、二本の指がわたしの唇から離れていった。冷たい指先の感触が残る。普段ひとに触られないようなところを触れられて、耳まで血が通うのを感じる。


「……もー!」

「うふふ。かわいいですねー」

「………」

「怒らないでくださいよー。パフェ、ひとくちあげますから」

 別に怒ってない。奏乃ちゃんにからかわれたのが悔しいだけだ。まあでも、もらえるなら、もらっておこう。


「それで、ラザニアとオムライス、どっちがいいですか? あ、ミックスサンドもありますよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ