006 桜ヶ丘結奈6
空の宮中央の駅前には、おしゃれなカフェやレストランが立ち並ぶ一帯があって、「スイーツ小径」っていう名前がついているほどだ。その名の通り、お店によってさまざまなスイーツが食べられる。星花女子はもちろん、近くで働くOLさんたちにも人気のスポットだった。欠点は、足を運びすぎると体重計に乗るのが怖くなることと、ネーミングが安易すぎてちょっと恥ずかしいこと。
立ち並ぶ店々の中から、スマホで調べたカフェを探し当てる。あまり派手派手しくなく、落ち着いた雰囲気のする店構えだ。和風のスイーツのほかにランチメニューもあるらしく、お昼どきの店内は女性客でにぎわっていた。
「ここでいい?」
「おー! 抹茶パフェのお店、探してくれたんですか?」
店の前にはうぐいす色の看板が立ててある。まあね、とドヤ顔をした。ありがとう、食べログ。
ドアの鈴を鳴らして店内に入る。案内された窓際の二人席に向かい合って座り、メニューに額を寄せる。カフェっぽい洋食の写真が並んでいる。せっかくだから、奏乃ちゃんと一緒のものを頼もうかな。そっちのほうが友達っぽいし。
「何にする?」
「むむー。オムライスと、黒蜜抹茶パフェですかねー」
「ふーん……じゃあ、わたしもオムライスにしよ」
「えぇーっ」
奏乃ちゃんが文句ありげな声を出す。一緒じゃダメなんだろうか。
「じゃ、あたしはラザニアにします」
「なんで!?」
ひみつー。問い詰めるひまもくれず、奏乃ちゃんはにこにこしながら通りがかった店員さんに声をかけてしまった。
「先輩からどうぞ」
「えーっと……じゃあ、ラザニアと、抹茶ラテのアイスで」
奏乃ちゃんの出方をうかがってみる。どうしてカフェで心理戦をしないといけないんだろう。
「あと、特製オムライスのスイーツセットの抹茶パフェとー……ミックスサンドと、ホットミルクティーおねがいしまーす」
やっぱり、オムライスにしてきた。なんかおまけがついてたけど。じゃあ。
「えーっと、じゃあわたしも……むっ!?」
「以上でお願いします」
唇を人差し指と親指でつままれた。指先から、いつものきんもくせいの匂いが舞った。しゃべれない。ずるい、と目で抗議すると、彼女の楽しそうな顔が映る。
「……よろしいですか?」
「いいです」
奏乃ちゃんがうなづく。ウェイトレスさんは苦笑いしながら注文を確認して、キッチンに戻っていく。ようやく、二本の指がわたしの唇から離れていった。冷たい指先の感触が残る。普段ひとに触られないようなところを触れられて、耳まで血が通うのを感じる。
「……もー!」
「うふふ。かわいいですねー」
「………」
「怒らないでくださいよー。パフェ、ひとくちあげますから」
別に怒ってない。奏乃ちゃんにからかわれたのが悔しいだけだ。まあでも、もらえるなら、もらっておこう。
「それで、ラザニアとオムライス、どっちがいいですか? あ、ミックスサンドもありますよ」