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犯罪でござる


順ちゃんさんの聞いた話しをまとめるとこうだ。

ここ最近、おばちゃんのいるお土産屋さんの在庫数が頻繁に合わないらしい。

その数字がたまたま、村長さんを飛び越え本社の耳に入ったとか。

その為、問題が結構大きくなってしまったそうだ。

おばちゃんこと熊田さんはお土産屋さんのシフトリーダーをしている為、責任を問われていて、近日中に問題を解決出来ないようであれば降格となり、他店に移動となるらしい。


次は麻子先輩が独自に集めた情報だ。

おばちゃんに事情を聞いたところ、万引きしてるような怪しい集団がいるらしい。

ただ、怪しいと思ってはいても証拠がなかなか掴めなくて、村長も協力しあの手この手で頑張ってはいるものの成果は出ていないそうだ。

つまり、犯人を捕まえることが出来れば、丸く収まるようである。麻子先輩はおばちゃんを助けると息巻いているが、どうだろう。

話を聞く限りでは、なかなか狡猾な万引き集団のようだし、現行犯で捕獲するのは難しそうだ。



次の日、麻子先輩に何か良い案はないかなと聞かれるが、すぐには浮かぶはずもない。

日に日におばちゃん達は疲れてきたのか、やや諦めモードに入っていく。

「何とかおばちゃんを助けてあげたいのに... うぅ~。金○一少年やコナ○くんのように証拠突きつけて犯人はお前だ!って問題を解決出来る能力が欲しいぃぃ。」と麻子先輩も天を見上げながら吠えている。...ちょっと怖い。


疲れていつもの元気がないおばちゃんや、悲しそうに項垂れる麻子先輩を見ていると、何か自分も落ち着かない。

以前の俺は、他人の為に何か無償で行動する事って面倒くささが勝ってしまっていたが、ここはもっと真剣に頑張って対策を考えてみよう。

だって俺がこの職場を楽しいって思えるのは二人のお陰でもあるわけだし... ごにょごにょ。


うぅ~ん。証拠。証拠を突きつけるねぇ...。





それから数日後。事態は急変する。

手裏剣小屋で師匠譲りの太鼓乱舞をしていると、向かいのお土産屋さんが騒がしい。

気にはなるが聖なる太鼓の舞いは、やめられない。止まらない。


帰りに更衣室の前で麻子先輩とおばちゃんを見つける。

何やら泣いてる麻子先輩をおばちゃんがなぐさめているように見える。原因はさっきの騒ぎだろう。


「お疲れさまです。大丈夫ですか?」

「ひぐっひぐっ〇ゞ#$□△※◇▽○ゞ#」

麻子先輩が泣きながらしゃべるが、何を言っているのかわからない。

おばちゃんが苦笑いしながら、騒ぎについて説明してくれた。


今日の夕方、怪しいと睨んでいた中学生ぐらいの三人組が来店したらしい。

その三人組を注意深く監視していると、盗る所を見たので慌てて捕まえたが、ざっと探してみても商品は持っておらず、逆に文句を言われる有り様。結果こちら側が謝るということがあったそうだ。

その事件を知った麻子先輩は悔しくて号泣中らしい。

聖なる太鼓の舞いの裏側で、そんな事件が起こっていようとは夢にも思わなかった。

「おばちゃんの見間違えよねぇ。皆にも迷惑掛けちゃってごめんなさいね。」

むむむむむ。



次の日の朝、パークオープン前にそれは襲来した。

前日の中学生の母親が乗り込んできたのだ。

今日も手裏剣小屋担当だった俺は慌てて騒ぎを覗きにいった。


ヒステリックに怒る母親、その後ろでおちゃらけて挑発する子供、ひたすら頭を下げている、村長とおばちゃん。


「うちの子を犯罪者あつかいするなんて、どー責任とるつもりよ!」

是非とも語尾に『ざます』を付けていただきたい。

お似合いだと思いますよ。奥様。


思考がやや飛んだが、現時点の子供の様子は誰が見ても、こいつはやってると思うような憎たらしい態度だった。


にんにんにんにんにににんにん♪


俺の心の中でにんにん音頭が流れだす。

そろそろスーパーヒーローの登場らしい。

勝利は確信している。


村長の隣までスススッと近寄る。中心人物たちが一斉に俺を見た。


「警察よびましょ。万引きは犯罪なのでござる。」


その言葉が母親をヒートアップさせた。

それを無視するかのように俺はお土産屋さんの壁際まで行き、飾り物の隙間から隠しカメラを数個取り出す。

そして、もう一度みんなの視線を集めた。


「一週間ぐらい続けてますんで、きっといいもの撮れてますよ。」

もちろん中身は確認済みだ。

村長やおばちゃん達はポカンとしている。


そこからは速かった。

泣きそうになる子供、何かを察し青ざめる母親。

後始末は本社まかせになった。



更衣室前で手を振る人がいる。おばちゃんと麻子先輩だ。


「聞いたよ、聞いたよ!!猿くん!見たかったなー。忍法【盗撮の術】!!』

麻子先輩が笑顔だ。

「なんかこっちが悪者みたいじゃないですか。」

「そうよぉ。猿本君のおかげでおばちゃん助かったんだから、【助かったの術】よ。」

なんだその術は。術と付ければ何でもいい訳ではないぞ。

けど、おばちゃんも笑顔だ。


監視カメラの場所はバレていたので隠しカメラを用意してみたのだが、上手くいって良かった。まさか店内カメラだらけとは思うまい。

隆史に感謝だ。ドライブレコーダーの話を聞いていたから、何となく思い付いた作戦だった。

金○一少年やコナ○くんのような格好いい解決方法じゃないけど、まぁ、結果オーライってことで。


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