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月下の蛍②

 


 練習に行くといつも通り、犬飼が俺を見て舌打ちをする。

 しかし今の俺は事情を知っている。

 今までどこの狼だ、誰か縛っとけと思っていたが今は可愛いチワワに見える。


 「ロリコン。」


 ボソッと呟いた俺の声に、通りすぎた犬飼がビクッと反応した。そのあと、走って順ちゃんさんの所に行き、何か抗議している。

 ざまぁ。



 メンバーの皆さんの協力もあり、フォーメーションA以外はおおよそスムーズに決まる。アニバーサリーパフォーマンスまであと3日。フォーメーションAだけが決まらないことに焦りが出て空回りする段階は数日前に通りすぎた。今はただただ黙々と回りを観察し、反復練習だ。

 そうこうしているところへ珍しく犬飼が俺のところへ近づいて来た。

 「当日は、美樹も来るんだ。しくじったら吊るす!」

 「妹さん美樹ちゃんって言うのかぁ。楽しみだなぁ。」

 「...っっ!?おまえっ!!!」

 チワワをからかうのは面白い。しかし犬飼の言う通り失敗は許されない。

 

 しかし、残念ながら本番前日の練習でも、一度もフォーメーションAが揃う事はなかった。




 「あーざーこーせんばぁーい、緊張するー断れば良かったー。」

 「練習したんだから、大丈夫よ。それに便利丸改、機能追加したんでしょ。」


 そう、便利丸改は夕方パフォーマンス用に館長が光るようにしてくれた。出番があるかは別として...。

 それよりも、今はとある事実が判明した為、麻子先輩に慰めてもらっているのだ。なんと、明日のアニバーサリーパフォーマンスはテレビで流れるらしい。アミューズメントパークの特集に数分だが急遽決まったそうだ。


 「猿本君。お客さん増やすためにも頼んだよー。」

 なんて村長が朗らかに言って来た。自分で出演してくれ!!






 アニバーサリーパフォーマンス当日。

 とうとうこの日が来てしまった...。プログラムは頭に入っている。あとはフォーメーションAを成功させるだけだ。頑張れ俺!!


 現在夕方6時。パフォーマンス開始まであと30分。

 パークの入口からお城に向かうメイン通りでパフォーマンスは行われる。時代劇のセットのような建物の前にパフォーマンス用のスペースがとられていて、すでに大勢の人達が回りを囲んでいる。

 

 「順ちゃんさん、カメラいる、カメラいますよ。」

 心臓が飛び出そうだ。そんなか弱い俺に犬飼が絡んでくる。

 「順ちゃん、今からでもこの猿はずそうぜ。」

 イラッ。

 「ん~??美樹ちゃんはどこかなぁ~?」

 「てめえ!!」

 そんなやり取りを犬飼としている時、表のスペースが急に騒がしくなった。覗いてみると数人の酔っ払いらしき奴等が大声で揉めている。


 「不味いなぁ...もう時間になる。テレビもきてるし、問題を起こされると、最悪パフォーマンスも中止になるな。」

 順ちゃんさんの発言を聞いて、メンバーの中に動揺が走る。上のスタッフが対応に駆けつけてきたが、酔っぱらいどもはノンストップだ。

 その時、俺の心の中であのメロディーが流れ出す。


 にんにんにん♪にににんにん♪


 毎度お馴染みにんにん音頭だ。

 順ちゃんさんと犬飼の美樹ちゃんへの気持ち。メンバーみんなのパフォーマンスに対する頑張りや思い。

俺だって二週間頑張った。酔っぱらいに邪魔されて終わるなんて納得できるか!


 「なぁ、みんな!」

 みんなに声をかけ、俺なりにこの状況を打開するための作戦を相談した。あの犬飼でさえ、黙って聞いている。

 そして作戦がまとまったところで、まだ酔っ払いが暴れている中、スタートの準備を始める。

 まずサイリウム(お祭りなどで売っているパキッと折ると光るやつ。)これを左右の腰につける。実はこれが月下の蛍と言う名前の由来だ。そして位置につき、メンバー同志顔を見合せ頷く。


 「よし行くぞ!フォーメーションA!!」


 順ちゃんさんの合図で家の屋根からステージに飛び出す。ライトアップされ『ドーン!!』という効果音の中、蛍のように光る忍者が揃って飛ぶ姿は幻想的だ。


 「あ~?なんだぁ?」

 何が起こっているかわからないといった感じの酔っ払い達。

 そんな中で順ちゃんさんの掛け声が響く。

 「フォーメーションB!」

 数人の酔っ払いをぐるりと取り囲む、

 「フォーメーションC!」

 見せ場のフリースタイルだ。

 おのおの酔っ払いを鮮やかに取り押さえていく。...が、みんな速すぎて俺の捕まえる酔っ払いがいなくなってしまった。完全に乗り遅れた俺はそれっぽく光る便利丸改を振り回し、格好つけながら辺りを見渡す。


 ...あれ??誰もいない。


 そういえば酔っ払いを確保したあとは、忍者らしく素早くはけるんだった!

 光る刀を持ちライトアップされる俺。

 思考がそこそこ止まっている俺。

 背中に一筋の冷や汗が流れていくのがわかる。

 どうする、俺!!


 次の瞬間メンバーの皆が出てきた。

 犬飼がぼそりと俺の横で言う。

 「ばか猿。」

 おっしゃる通りで!!


 そこからは無理矢理本来のパフォーマンスの流れにもっていき、無事にアニバーサリーパフォーマンスは大盛況の中、幕を閉じることが出来た。

 俺の中では本番で初めてフォーメーションAが成功したことへの思いや、生の美樹ちゃんを見たことの感想なんかが色々とあったはずだが、無事にパフォーマンスが終わった今は頭が空っぽだ。

 とりあえずビール飲みたい。 



 テレビの放送で俺が目立っていたのはまた別の話だ。

 

転職したり引っ越したりで、バタバタしておりました。更新が遅くなり申し訳ないです(T▽T;)

しばらくはゆっくりペースになるかとは思いますが宜しくお願い致します!

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