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便利丸 改


 突然の雨に忍者カフェが賑わう。

 師匠が「クッソ忙しいな!」とぼやく。


 アニメの中の忍者なら、分身の術でも使ったのだろう。頭の中で『忍法【分身の術】!』と叫ぶ。出来るはずもない。ただの現実逃避だ。しかし、よくよく考えると分身の術ってどんな感じで分身するのだろうか。内臓とかどうなってんの?......気持ち悪くなってきた。無心で働くことにする。

 

 

 雨が上がり、カフェのピークも過ぎた頃。


 「渉、今日はもう上がりだろ、お疲れ様。」

 「師匠、すいやせん。あっしが呪いにかかっていなければ、本気を出せたっつーのに。くっっ...。」

 「あーはいはい。呪われてて良かったわ。本気出されたらもっと仕事が増えてたし。」


 師匠が、はよ帰れとばかりにシッシッと俺を追いやった。




 そういえば小学生の頃、アニメのみすぎ君という友達がいた。本名はもう忘れたが、弱っちーのによくケンカする子でバトルマンガのように腰に握り拳を持っていき『はぁぁああああー!!!』とまるでオーラでも出てるかのように気合いを入れていた。しかし相手が待つはずもなく、その隙にボコボコにされていた。

 彼は元気かなぁ。


 

 外も暗くなった頃、隆史が家に来た。

 そういえばこいつは一緒にいても最近何も感じない。悪い意味ではなくいい意味で。大学生の頃とは雰囲気が変わった気がする。


 「なんかお前変わったよな。」

 「そんなん、渉もそうだろ。」


 言われてみればそうだ。最近お気に入りのラーメンキャンディーを隆史に投げる。無言で口にする隆史。

 「...うぇっ、まっずっ!」

 予想外の反応だ。この繊細な味がわからないとはやはりこいつとは噛み合わない。



 今日は朝からソワソワしている。何故なら便利丸が帰ってくるからだ!!バイトあがりにワクワクしながら急ぎ足で歴史資料館に向かった。


 「ほっほっ、では持って来ようかの。」

 俺の早く早くという無言のオーラを感じとり、挨拶もそこそこに館長は便利丸を持って来てくれた。

 「ほっほっ、これは『便利丸改』じゃ。新しい機能がついておる。」

 どこぞの博士みたいだ。

 館長の説明によると、つばの下にある小さいボタンを押すと、柄の後ろから水が飛ぶという。

 ようは水鉄砲がくっついた。うむ。嫌いじゃない。

 便利丸改を背中に装備してみる。重さに落ち着く。

 館長にお礼を言い資料館をあとにする。

 館長の顔が孫を見るような微笑ましい眼差しだったのは気のせいだ。



 更衣室に帰る途中、数人の子供達に囲まれ質問攻めに合う。大概は可愛らしいが必ず一人ぐらいこういう奴がいる。


 「本物のわけないじゃん。本物なら忍法とか使ってみてよ。」


 お決まりのセリフだ。

 俺は大きな声で叫ぶ、

 「忍法【後方大回転の術】!」

 三回バク転を繰り出しどうだ!と子供達を見る。すげーなどと聞こえてくるが、ひねくれ坊やは、手強かった。

 「それってただのバク転じゃん。忍法だよ、忍法!」

 仕方ないぶっつけ本番だがあれしかない。子供相手ではあるが、大人の本気というものを見せよう。


 にんにんにんにににんにん♪にんにんにん♪


 にんにん音頭が頭の中で鳴り、俺の声が辺りに響く。

 「忍法【流水斬り】!!」

 背中の便利丸に手を伸ばす。鞘から抜きつつボタンを押し、斜め前に発射された水を刀で斬るように叩く。子供達にしてみれば忍者が刀を振ったら水の刃が飛んで来たように見える。子供達の目にはもう本物の忍者にしか映っていないだろう。フッフッフッ。

 若干濡れながらも嬉しそうな子供たちを残してその場からドロンした。




 次の日、忍者カフェへと挨拶しながら入る。オープン準備が終わると、師匠が話しかけてきた。

 「おーゴキブリ殺し丸、復活かぁ。」

 「ちがいますよ。便利丸改です。どうしようかなぁ、教えようかなぁ。でも怒るしなぁ。」

 チラッチラッと意味深な行動をとってみる。師匠から怒らないからはよ言えという言葉を頂き、遠慮なく師匠の顔に水をかけた。

 そんな事をしてキャッキャッしていると声をかけられた。


 「何してるんですか?もうオープンしてますよ。」

 そこには、私服姿の麻子先輩がいた。

 「麻子ちゃんこそ休みにどしたの??」

 師匠の言葉に思いもしない答えがかえってきた。

 「ふふっ。今日デートなんです。」

 師匠も俺もビックリして固まった。

 

 

ここ数日体調崩している為、更新がまちまちですみません。2、3日に1話は上げれるよう頑張ります!

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