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くの一

自分の部屋にたいした物はなにもない。

布団とテレビにゲーム、そして残りの隙間を埋め尽くすゴミ。

その中で今少しずつ自分が学生という隠れみのをはがされ、世界にとって価値のない物へと変わっていくんだというあせりを隠すかのように魔法を唱える。


『どうにかなるさ』


その言葉を待っていたかのように携帯電話の着信音が鳴り出した。

画面を覗き少し固まる。


【山田隆史(たかし)


すぅ、はぁぁ。

ため息のような深呼吸をして電話に出た。

「もしもし」

『おつかれー、就職決まったー?』

...どストレートすぎる。


「ん?あぁ、まあそれなりに色々みてるとこ。」

どうでもいいような嘘をつく。

『今、人探しててさーバイトする気ない?』


「うぇっ!」


驚いて変な声が出た。

残金もきびしくバイトもしていない今、とても助かる話だ。

もともと運動神経はあるものの、精神的にはノーアクティブな俺はバイト探しなど最も苦手なことに分類される。

「困ってるなら話、聞くけど?」

がっついていると思われてはいけない。隆史にも自分にも。

あくまでしぶしぶだ。


隆史の話によると学生の頃、工場のバイト以外に接客業のバイトを掛け持ちしていたらしい。

工場の方に就職が決まったので接客のバイトは大学卒業と共に辞めたのだが、やめる際代わりの人を見つけるはずが、まだ見つかっていないとのことだ。

まあ、そこまではいいのだが、なぜか隆史がかたくなに仕事内容は接客業としか説明しないことが引っ掛かる。


しかし、疑問に思いつつも今の自分の状況から逃げるように、また『どうにかなるさ』とバイトの話を受けることにした。



あの電話から数日。

隆史との約束の日。安定の遅刻をするあいつ。

だが、今日は面接に付いてきてくれるうえ車も出してくれているので、感謝こそすれ怒るなんてもっての他だ。


無事出発した車の中で隆史が不思議なことを言う。

「今日から研修らしいから、早速ちょっと働くみたい。」

「えっ!面接じゃないの!?」

「渉は、俺の紹介だから面接パスみたい。めっちゃやる気あるやつって言っといたから!ちなみに帰りは自力で帰ってこいなー。」

 

心が【帰りたい】で満たされていく。


そうして車に乗ること20分。

「ついたぞ。」

隆史の声と同時に顔をあげる。

知っている。いや来たことはないが聞いたことはある。

3~4年前にわりと山の方にできたアミューズメントパーク【忍者村】だ。


「なんだ隆史。別にここならここと言ってくれればいいのに。」

「まーなんだ。サプライズだよサプライズ!とりあえず、裏からだからこっち来て。」


隆史のあとをついて歩いていく。

この忍者村は歩いても一周30分ぐらいで回れるほどの、遊園地と公園の間ぐらいの設備や遊具のある場所だ。

名前の通り忍者のアミューズメントパークである。

ちなみにマスコットキャラクターは忍者の格好をした猫【ニャンジャくん】だ。

隆史の背中を見ながらいろいろ思い出していると、目的の場所に着いたようだ。


「こんにちは。」


隆史の挨拶に男の人が顔をあげる。

50歳位だろうか。その男性は、立ち上がり頬を緩ませてこちらへ寄ってきた。

「おー隆史君、お疲れ様。」

「お疲れ様です。」

「その子が言ってたヤルキマンマンマンかな?」


ヤルキマンマンマン?なんだそれ。


「そうっす!ほれこの人が村長さんだ。挨拶。」

「あっ、はじめまして。猿本(わたる)です。よろしくお願いします。」

「村長の藤木ふじきです。よろしくね。隆史君から話は聞いてるかな?」

「はい、面接なしで今日研修だって聞いています。」

「急いじゃってごめんね。ちょっと今、人少なくて。」


などと自己紹介をしていると、隆史が手をヒラヒラさせながら間に入ってきた。

「村長、俺はこれで帰りますね。」

「おっ!ありがとうね隆史君。また遊びにきてよ、仕事頑張ってね。」

じゃあなと隆史が帰っていく。


隆史が帰ると、少ししてから誰かが部屋に入ってきた。

少しばかり心細かった俺の脳みそに電撃が走る。


くの一だ。


部屋にくの一が入ってきた。

そしてある一点に目を奪われる。



このくの一、巨乳だ。


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