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伝説の鍛冶職人


「ふうっふぅー。」

尻を鷲掴みしようとしてくる師匠をかわしながら手裏剣小屋に向かう。

 今日は日曜日、子供が多いなぁ。なんといっても来るだけならタダだし無料の遊具も多少ある。視界の端からチケットが飛び込んでくる。


 「はい、ありがとうございます。ではこちら手裏剣でござ・・・る!?」

 そこには知っている顔があった。

 「小倉さん...だよね?久しぶり。」

 一緒に落とし物を探した大学生、あの環ちゃんだ。

 「あ、あの、あのときはありがとうございました。」

 どういたしましてと手裏剣を渡す。

 ペコペコと頭を下げながら手裏剣を受け取った彼女は空いてる場所はそこそこあるのに、一番端まで行く。誰かと来ている様子はない。女の子一人で珍しいなぁー、ちっちゃくて可愛いなぁー、と見ていると目が合う。ビックリして思わず目をそらす。もう一度そちらをチラリと見ると環ちゃんがこっちへ歩いて来た。


 (え!?え!?俺、変態オーラとか漏れ出てた!?まだ、やらしい目とかで見てないよ!?)

 内心アワアワとする俺の目の前まで来る環ちゃん。

 「あ、あああの、こ、これ!お願いします...。」

 とチケットを5回分出してきた。

 (???)

 罵られる訳じゃなかったことに安堵しつつ、まさかなと思いながら聞く。

 「5回分、一気にやるの?」

 頷く環ちゃん。大丈夫かなと思いつつ手裏剣を渡す。

 そこに麻子先輩がやってきて、

 「猿君、お疲れ様。代わるわ。」

 と言われ、環ちゃんに一言掛けて休憩に行く。

 「頑張ってね。」


 後から考えると何を頑張るのかわからないが、あの手裏剣の量は投げるだけでも大変だろう。両手に手裏剣を抱える彼女は、まるでエサを詰め込んだハムスターのようだった。




 次の日、更衣室を出ると麻子先輩に声をかけられる。


 「可愛いよね~、環ちゃん。」

 「あはは、そうですよ...えっ!?」


 声にならない『なんで知ってんの!?』を感じとり、麻子先輩がニヨニヨと笑いながら続ける。

 「なんか手裏剣いっぱいで凄いことになってたから話しかけたの。そしたら忍法【ナンパの術】に引っ掛かったって.....。」

 「ナっ!?ち、ちがいますよ!!」

 「あっはは、うそうそ。落とし物探してあげたんでしょ。でも慌てかたが怪しいなぁ~。」

 そう言ってうりゃうりゃと俺の腹を突っつく麻子先輩。



 前略 師匠、この間の誕生日パーティーは楽しんでいただけたでしょうか。最近、俺と師匠の影響か麻子先輩もノリがバカっぽくなってきた気がします。俺はどうすればいいのでしょうか。 草々。



※※※


 忍者カフェのレジの前で

 「よっ、ほっ。」

 便利丸を使い小銭を取る。

 「その隙間、よく小銭落ちるよねー。」

 などと麻子先輩と話していると次のお客さんも小銭を落とす。

 はいはい俺の出番ですねと便利丸を抜いた瞬間つまづいて転んだ。

 「いっってぇぇ...」

 「大丈夫??」

 「っつ~...はい。大丈夫です。」

 「いやいや。猿君じゃなくて、便利丸の方。」

 ちょっ、俺やないんかーい!と突っ込む手をみて固まる。



 握っていた便利丸が折れていた。





 バイト終わり、悲しみにくれながら便利丸の残骸をだき抱え、向かっている先は歴史史料館だ。


 「ほっほっ、久しぶりだね猿本くん。」


 危うく館長のほっほっを真似しそうになるが、ぐっとこらえ、謝りながら便利丸の説明をする。


 「ほっほっ、では少し預かるとするかな。」


 直るんですか!?という問いにやってみるよと返してくれた館長。一筋の希望の光が見えた気がした。



 背中が軽いと調子がでないな。なんて、肩を回しながら歩いていると、見覚えのある忍者がいた。

 「おーい!順ちゃんさーん!」

 叫びながら近寄っていく。

 「ん?猿君?珍しいね、仕事中に会うのは。」

 

 忍者マスクをしているので少し不安だったが、間違ってなくて良かった。ほっとしたところで、順ちゃんさんの後ろにもう一人忍者がいる事に気付いた。


 「猿君、こいつに会うのは初めてだよね?犬飼いぬかいっていうんだ。」

 俺も慌てて自己紹介をする。

 「どうも猿本です。」

 ...が、完全に無視されてしまった。直ぐ様、順ちゃんさんがフォローする。

 「ごめん、悪いやつじゃないんだけど、めんどくさい奴なんだ。じゃ、またね。」

 めんどくさい奴なら許してやるかと上から目線で苛立ちをおさえる。俺は大人。俺は大人。



 今度は通路で談笑しているおばちゃん達に出会う。いつものお礼にと最近お気に入りのラーメンキャンディーを配った。けれどそのお返しにとまた飴をもらう。ただの飴交換会になった。


 飴入れの中にいろんな味が混ざるのが思いの外、楽しい。

 

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