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環の事情

今回は環ちゃん視点です。


わたしの名前は小倉環。


幼なじみの沙織さおりがどうしてもというので、忍者村に付き合う事になった。しかし、男の人が居るなんて聞いてないっっ。

忍者村は全く興味のない所だったが、いざ来てみるとけっこう面白い。考えてみれば遊園地のようなテーマパークに来るのは何年ぶりだろう?

ただ悔やまれるのは、この状況。人見知りの私は沙織の彼氏とその友達に対し、時おりいたたまれない空気を作ってしまう。けれど頼みの綱の沙織は残念ながらこの空気を読めていない。

沙織は性格も明るく、わたしには勿体ない位の友達だが、唯一男が絡むと周りが見えなくなるのだ。彼女がたまにこっちをみてウインクし、顎でクイックイッとしてくる。・・・やめてほしい切実に。


喋るのが恐い。人と目を合わせることができない。どうしても緊張してしまい、口を開けば噛んでしまう。

忍者村を一通り見終わった頃には、私以外の三人で会話が成り立っていた。男の人が嫌いな訳ではない。しかしいつも私が心を開く頃には、すでに相手には面倒臭がられ、こちらへの興味は失せてしまっている。例外は幼なじみの沙織とあと数人くらいだ。


少し憂鬱になりながら3人の後を歩いている時、何気なく鞄に手をやると...ない。...ない。...嘘ちょっとまって、お母さんの形見(ジューシーちゃん人形)がない!

鞄についていたはずのキーホルダーがなくなっている。ただのご当地キーホルダーだが私にとってはとても大切な物だ。


私の異常に沙織が気づく。

「環?どうかした?」

「キーホルダー、無くしちゃったみたい。」


「おーい!はやく帰ろうぜ!」

男の人たちが言う。

「あっ!ちょっ、いや、な、何でもないです。」

出来れば助けてほしいが、何と言えばいいかわからず、結局下を向いてしまった。

そんな時、

「どうかされましたか?」

通りがかった忍者さんが声を掛けてくれた。

この人に相談してみようかと思ったが、ここでまさかの人見知り発動。口をもごもごしているうちに沙織の彼氏さんが、

「あ、大丈夫です。すいませんもう帰りますんで。」

と答えてしまった。


忍者村を出てすぐ三人とは別れ、もう一度一人で忍者村に戻って探し始めた。...が、なかなか見つからない。


「あの、大丈夫ですか?」

知らない人に声をかけられビクッとする。

「あっ、さっきの忍者です。」

自分でもホッとしたのがわかった。そして、今度こそはと噛みながらも何とか現状を説明し、自己紹介する。忍者さんは猿本渉さんと言うらしい。

私の話し方にも嫌な顔をせず、最後まで聞いてくれた。


事務所に落とし物がないか、聞きに行ってくれるという猿本さんの背中を見送りながら、祈るように待ったがやはり無かったみたいだ。時間は既に夕方、周りもだいぶ暗くなってきた。...もう見つけるのは無理かも。

「無くしちゃったな、お母さんの形見...。」


もう諦めますと伝えると猿本さんはまだ諦めずに探してみようと励ましてくれるような言葉を掛けてくれた。今日会ったばかりの他人の為に一生懸命になってくれる姿に申し訳なく感じながらも泣きそうになる。

結局猿本さんのその言葉に甘え、もう少しだけ探すことになった。

頑張って記憶をたどり、女子トイレやベンチの下、果てはゴミ箱まで見て回る。


別れて探し出して三十分ほどたった時、猿本さんがこちらへ向かって走ってくる。


「おーーい!あったよーー!!」


その言葉と猿本さんの笑顔で、ホッとしたのと嬉しかったのと何だか色んな感情がごちゃ混ぜになって、思わず泣いてしまった。

上手く喋れないながらも、必死に猿本さんへありがとうを伝える。人前でこんなに感情をむき出しにしたのはいつぶりだろうか。

急に恥ずかしくなって、お別れをしたあとは全力で走り去った。


優しかったなぁ猿本さん。

出来ることならまた会いたいと思いつつ、見つかったキーホルダーを握りしめ、帰路についた。


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