マイリトルエンジェル
バイトが終わり、おばちゃん1号と歩いていると大学生位の四人組のお客さんが揉めていた。
「俺ちょっと行ってきますから、おばちゃん先帰っててください。」
「大丈夫?おばちゃんも行こうか?」
「大丈夫ですよ。お疲れ様です。」
「じゃあ、先に帰るわね。お疲れサマーバケーション。」
おばちゃんを見送りお客さんの所に向かう。
「どうかされましたか?」
四人が此方を振り向く。男性二人に女性二人だ。うらやましいなぁデートかなぁとか思いながら反応を伺うとスラッと背の高い方の男性が答えてくれた。
「いえ、大丈夫です。もう帰りますんで。」
気になりつつも、そうですかと俺もその場を去る事にした。
更衣室で着替えて帰ろうとしていると、遠目にさっきの四人組の中にいた女の子が一人で何やら不振な動きをしている。なぜ遠くからわかるのかというと、その子がタイプだったからだ(キリッ)。
取り合えずここは、いち従業員として声をかけてみるか。うむ。
師匠に誓って決してやましい気持ちなどはない。
「あの、大丈夫ですか?」
かわいい女の子からの不審者を見るような視線が痛い。そこで自分が忍者姿で無いことに気づき追撃する。
「あっ、さっきの忍者です。」
わかりやすく安心したように顔が緩む。
その彼女は事の経緯を教えてくれた。ようは落とし物である。鞄に付けていた『ご当地ジューシーちゃん人形』を落としたが、友達は用事があって帰ってしまい、一人で探しているとの事だった。
説明のあと、慌てながら彼女が自己紹介をしてくれた。
「な、名前、まだでした。小倉環だす、あ...です。」
どどどどうもと、余りの噛みっぷりにつられて、俺も噛みそうになりながら自己紹介する。
「猿本渉です、ここの忍者です。まだ見つかってませんよね、取り合えず落とし物が届いてないか事務所に聞いてきますね。」
ありがとうございますという環ちゃんを残し、事務所に向かう。
大学生って言ってたけどちっちゃいな。150㎝ぐらいかなぁ...可愛いなぁ。
事務所に確認するが届けはなかった。それを伝えると悲しそうにつぶやく。回りの声に埋もれそうな小さい声だったが聞こえてしまった。
お母さんの形見だと。
「す、すいません、もう、もう結構ですから。」
と環ちゃんは言うが、聞こえてしまったからには助けるのが忍者だろ。
「もうちょい探しましょう、俺も手伝うので。」
「で、でも、迷惑じゃ...。」
「大丈夫ですよ、特に用事もないし。」
下を向きながらもういいと言う環ちゃんに少し強引だったかな?と思いつつ、通ったルートを聞いて二人で探してみる。が、なかなか見つからない。
そもそもジューシーちゃん人形とは10㎝位の赤ちゃんのようなキャラクターの人形で、よくコラボレーションをすることで収集するマニアも多い。そんな小さな人形なので、そう簡単には見つかるはずもない。
「すす、すいません。もう諦めますんで。」
もう少し探そうと励ましても、迷惑じゃないかと下を向く。
「大切な物なんでしょ、まだ探しましょう。もう一度お城見てきます。」
お城の中は迷路になっているが落ちていれば気付きそうな感じだ。見つからないまま頂上にたどり着いてしまう。設置されている望遠鏡を覗いて見ると必死に探している環ちゃんが見えた。
そういう姿を見ていると、下心なく見つけてあげたいなと思う。
「ふぅー。」
けれどなかなか進展がないことに溜め息が出た。その時、
「あったー!!!」
柵の向こう側、お城の屋根の上に落ちていた。きっと柵に引っ掛かり弾け飛んだといったところだろう。急いで便利丸を取りに行きそれを使って手繰り寄せる。
「おーーい!あったよーー!!」
走り寄って見つけた人形を渡す。
自信なさげに下ばかり見ていた環ちゃんが顔を上げ、泣きながら笑顔を見せてくれた。
環ちゃんは、何度も何度もお礼を言って、帰っていった。
電話番号聞けばよかったなぁとか思いながら、実際はヘタレなので行動には移せない俺。そのまま彼女の背中を見送った。
ノーギャラサービス残業だが、最後に見た彼女の笑顔を思い出すと手伝ってよかったと思う。
さてと、帰るか。




