君の名前は。
ついに、ついにこの日が来た!!
この感じは久しぶりだ。麻子先輩の隣に見慣れぬ二人。
一人は小さくて細くて折れちゃいそうな女の子。顔は美人の部類に入ると思う。
もう一人は男の子で、なんと言うかふくよかで首がない。ちょっと暗そうな感じだ。
二人が何なのか俺は知っている。しかしながら、ここは敢えてクールに麻子先輩の話を聞く。
「猿君、この二人が今日から研修の新人さん。時間ないから紹介はまた今度ね。」
「了解っす。」
少し素っ気ない感じで返事を返す。こういう所が自分でダサい奴だと思う。
本当は興味津々だ。
一日中ずっと考えていた。後輩達にどう接するか、あだ名とかつけちゃおうかなぁとか、しかし理想ははっきりしている。
師匠のように自分も誰かに格好いいと思われたい。
結局、新人ズにこの日会うことはなかったが、俺のソワソワは止まらなかった。妄想も止まらなかった。
思えば、うちのシフトグループが回っているのは、自分で言うのもなんだが、いつでもガッツリスーパーフリーターの俺のおかげだ。
やりたい事はないが、これからは休みの幅も広がりそうだ。
次の日、会った瞬間から師匠がぼやき始める。
「くそー、あの太っちょ君最悪だ。」
「新人くんですか?」
なんだなんだと聞いてみる。
「めちゃくちゃトイレの回数が多いから、後つけたらメールしてんだよ。んで注意したら『いや、彼女が。』とか言うのよ。いや先に謝れよとか思うだろ?」
それはヒドイなぁと思っていると、まだ落ちがあった。
「しかもそれ、出会い系で一度も会ったこと無いって言うから、完全に騙されてるって教えてやったんだよ。そしたらキレて帰りやがった。」
ポカーンとしてしまった。
「へ?辞めちゃったんですか??」
「わからん。けど、もうシフトインの時間なのに来てないな、まだ。」
心がついていけない。そこに村長がやって来た。
「新人の女の子辞めちゃったよー。」
もー完全についていけない。
村長の話ではお母さんから連絡があったらしい。
理由は『こんなに男の人と喋らなければいけないとは思わなかった』だ。
「え?え?接客って知ってたんですよね??」
心の声が噴射する。
「それはそうなんだけど、もう一人いたでしょ?男の子。あの子が隙あらば喋りかけてたみたいでね...あっ本人には言わないでね。一人でも残ってもらわないと...」
師匠が申し訳なさそうに口を開く。
「来てないっす、そいつ。」
村長に昨日の出来事を、一通り報告する。
「そう...それは仕方ないね。」
いつの間にかいた麻子先輩が、
「しょうがないですよ、時間もないし働きましょ。」
「と、その前に。」
村長がそう言い、俺以外の二人に目配せする。三人が一斉に俺に向かってお辞儀する。
「「「これからも、お願いしまーす。」」」
「なっ、スーパーフリーター。」
と、師匠に肩を叩かれる。
フリーターって単語には若干引っ掛かるものはあるけれど、必要とされるってまんざらでもないなって思ってしまった。
必要なのか利用しているのか細かい事はこの際どうでもいい。取り合えず嬉しかったんだ。
こうして初の後輩忍者は名前もわからぬまま二人ともドロンするのだった...。
その日の夜、師匠から電話がかかってきた。飲みの誘いだ、もう飲んでいると言うが珍しく家から近いお店だったので、参加することにした。
お店に着くと、麻子先輩と順ちゃんさんもいた。
「残念だったね、初の後輩辞めちゃって。二人がさ、猿君慰めるから来いって。」
と順ちゃんさんに声を掛けられる。
ん?ばれていたのか?後輩ほしいモードなのが...。
「お前のためだけじゃねーからな!俺のための飲み会でもある。」
照れているのか酔っているのか、師匠もよくわからない事を言っている。
「最近、猿君背中に刀つけてるよね。あれ格好いいね。」
と麻子先輩に便利丸を褒めて頂いた。
「何?何それ!」
順ちゃんさんがその話題に食い付いてきたので資料館での出来事を二人に説明する。
「へーそんな事があったんだー。いいなぁ、私も刀装備しようかなぁ。」
麻子先輩も酔ってきたのか、そんな事を言い出す。
「やめとけ、あの刀きったねーから。ゴキブリとか刺してるし。」
「あんたのせーだろ!!」
突っ込む事ができるのは、すでに俺ぐらい。順ちゃんさんも麻子先輩も師匠と一緒に、きったねーコールに夢中だ。
最高な先輩達に囲まれて、夜は更けていくのだった。




