そして伝説へ・・・
師匠が更衣室に入ってきた。
準備万端ヤルキマンマンマンで出迎える。
「おーっす。おっ、なんだ??かっちょいーの持ってんな。」
師匠の視線は俺の背中に向いている。そう伝説の武器にだ。
入手経路を説明する。
「それで村長に聞いたら装備して良いって言ってたんで、忍者だし背中に装備しました。これで攻撃力は師匠を越えましたね。」
「何に攻撃するんだよ。」
お互いに出勤準備をした後は『ほっほっ』と館長のものまねがツボにはまり、お互い意味もなくほっほっ、ほっほっ言いながら忍者カフェへと向かう。
厨房に着いても、
「ほっほっ、この刀は斬れないのかね?」
「ほっほっ、当然じゃ。」
と館長風に話していたら調理担当の人から面倒くさそうな冷たい視線を向けられたので、急に恥ずかしくなる。
「ほっほっ。猿君、この刀の名は?」
この人まだ続けんのかと、冷静になると何が面白かったのかわかんねーなと我に返る俺。
「ありませんよ。」
「お前マジか!自分の刀だぞ!!名前をつけてやらないなんて信じられん!いや、しかしそういう事か... その刀から力が感じられないのは...。」
「力ってなんすか?」
何か始まったな~と思いながら一応聞いてみる。
...とそこで調理担当の人のわざとであろう、大きな音で二人ともいそいそと仕事を始めた。
おまけとばかりに、師匠が言う。
「帰りまでには考えとけよ。刀が泣いてるだろ。」
そして急いでオープン準備をするのだった。
仕事中ずっと刀の名前を考えていた。冗談半分だったがいざ言われてみると気になってきた。
中二病っぽさも感じるが、そもそも装備した時点でそういうのが嫌いではないのだ。
また師匠にのせられた気はするが、仕事の合間合間に真剣に考えてみる。
『正宗』ありきたりだ。『地獄刀』設定とかなんで?とかいわれると困る。『スーパーストロングソード』長い。そもそも日本刀に英名はいかがなものか?
「...い。......おーい。聞こえてるか?」
師匠の声で現実に引き戻される。
「なぁ、刀ちょっと貸して。」
「えっあっ、はい。」
突然のことに良くわからず刀を抜いて渡す。
「おージャスト!」
レジの方で声がする。師匠が何やらお客さんと話している。
刀を持って帰って来た師匠に聞いてみる。
「何があったんですか?」
「あぁ助かったぜ。お客さんがお金を隙間に落としてな、これでこう...」
なにか引っ掻くような動作をしながら師匠が答える。
「ちょっと、人の刀で何してんですか。」
「ふっ、名前がないということは、そいつはまだお前の刀ではない。悔しければ早くその刀に認めてもらう事だな。」
意味がわからん。
取り合えず休憩時間になったため、厨房の隣にある休憩室へと向かう。
休憩していると師匠が勢い良くやって来て、
「もう一回貸してくれ!はやく!」
と、勢いに圧倒されまたすぐ渡す。
「汚さないで下さいよ!!」
言ったものの聞こえただろうか。師匠は直ぐに消えて行った。
ガシャーーーン!!ガンッッ!!!
師匠に刀を貸してからものの数秒で、凄い音が聞こえた。びっくりして自分も慌てて厨房に向かう。
厨房に着くと床に刀を突き立て満足そうな師匠がいた。
「何してたんですか...?」
その瞬間気づいてしまった。床と刀の間に黒光りしたヤツが昇天していることに。
「ちょーー!!何してんですか!!!それゴキ○リでしょ!何てものにブッ刺してくれてんですか!ししょおぉぉぉぉぉ!!」
「うむ。確かに攻撃力高いな。」
こちらの事などお構い無しな師匠。
刀をはいどーぞと渡してくるので、洗って返せと怒鳴ると渋々洗い始めた。
師匠が洗い終わった刀を渡しながら言う。
「ほれ、ゴキブリ殺し丸。」
「絶対嫌ですよ。そんな名前。」
断固抗議する。
色んな名前を師匠が提案してくるが、それを端からどんどん却下していく。その内どうでも良くなり疲れきったところで決定した。
命名『便利丸』
師匠曰く。
『色々使えて便利だから』
だそうだ。
結局師匠が名付け親となってしまった。




