友情の証
今日は午後から短い時間だが最もつらい現場だ。
暑い重い臭いの三重苦、そうニャンジャ君の中の人だ。
まだ三度目だが取り合えずきつい。とにかくきつい。
着ぐるみを着てパークにでると師匠に会った。
「中身、猿君だろ?」
その言葉に返事をせず、いきなり両手を上げ片足で立ち、吹き出しをつけるなら『アチョー』となるようなポーズを意味もなくとってみる。
「ニャンジャ君、最近イタズラされる時あるから気を付けろよー。」
それだけ言って師匠は去って行った。
名付けるならば鶴のポーズのまま取り残される俺。
すべったのは自分ではなくてニャンジャ君だと責任をなすりつけその場をあとにした。
今日のバイトも終わりに近づいたころ、ガッ!とすねの辺りに衝撃が走る。
自由のきかない体で視線をおとすとボーズ頭の男の子がニャンジャ君の足を蹴っているではないか。上手く捕まえることも出来ず、かといって声を出すわけにもいかない。
とりあえず痛くもないので無視をした。
師匠がイタズラがあるとか言ってたなぁなどと思っていると次は激痛!!が走った。
無視していた子供がニャンジャ君の首の隙間からプラスチックの刀を突き刺したのだ。勢い良く俺の顎から右耳の方へ、かすりながらヒットする。
思わずびっくりして倒れこんでしまった。着ぐるみが邪魔をして一人で起き上がれずしばらくジタジタとしていると、おばちゃんズがきて立たせてくれた。
辺りを見回すがあの男の子はもういなかった。
「あんのクソガキ...」
着替えを終えて、更衣室から出ると向こう側から村長が走って来た。
「あー間に合った、猿本君悪いんだけど今日もうちょっと働けない?」
「別にいいですよ。すぐ着替えます。」
特に用事もないので了承する。
「あ、大丈夫、大丈夫。そのままで。」
「私服でいいんですか?」
俺の不思議そうな顔に答えるように説明される。
夕方から資料館の掃除があるのだが人手が足りないらしい。重い物を動かしたりするので男手がほしいとのことだ。
納得しそのまま資料館にむかう。
歴史資料館は、忍者の時代背景の資料や本物からレプリカまでの忍者道具などが展示されている。
「ほっほっ、村長から聞いてるよ。館長の三木じゃ。今日は宜しく頼むよ。」
白い髭のいかにも館長らしい三木さんと挨拶をかわす。
資料館は特にやることもなく、いつも館長一人なのだが掃除の時だけ人手を集めるらしい。
知らない人ばかりだったが展示物を動かしたり、床を掃いたり、特に困ることはなかった。
道具を片して終わろうとしていると
「こら!!やめろ!誰か押さえるの手伝ってくれ!」
声の方を見ると、何人かの大人が展示物の上で暴れているボーズ頭の男の子に苦戦していた。
ボーズ頭...あいつか!あの【ニャンジャ君刺殺事件】の犯人だ。
取り合えず自分も現場へと向かう。
「俺は忍者になるんだ!ニャンジャだってやっつけた!お前達もやっつけてやる!」
意気揚々と楽しそうに叫んでいるが、なんだと!?と大人達が乗っかる訳もなく、ただただ迷惑なだけだ。
「くらえー!」
折り紙で作られた手裏剣をばらまきはじめ、更にプラスチックの刀を振り回す。
俺は足元に落ちた折り紙の手裏剣を拾い、ボーズ頭めがけて投げてみる。
特技、手裏剣。なだけあって見事に後頭部にヒットした。
暴れているガキが此方に気づき、また手裏剣をばらまく。
「だめだ、そんなんじゃ!手裏剣はもともと一撃必殺だぞ。まずそんなに沢山の手裏剣を忍者は持ってない。手の裏に隠し持っている剣だから手裏剣なんだぞ。修行が足りないな。」
ガキの動きが止まる。
師匠に教えてもらったことや、手裏剣に興味を持ってから調べたウンチクを披露しながらガキに近づく。手の届く距離まで行った時には完全に俺の話しに食い付いていた。
館長を交え俺とガキ、三人で話しをした。最終的にはイタズラを謝り、もうしないと誓った後は年齢を超え、忍者話に花をさかせていた。
子供を帰したあと館長にお礼を言われた。
「ほっほっ、猿本君ありがとうね。展示物も無事で、ついでに小さい友達もできたよ。」
どういたしまして、と言おうとすると館長はちょっと待てとばかりに手を出し、奧の部屋に消えていく。
戻って来た館長の手には日本刀が握られていた。
「ほっほっ。こんな物しかないが貰ってくれんかね?」
「いやいやいや、こんな大層なもの貰えませんよ。」
忘れていた少年心を大いに擽られる申し出だが、こんな物騒なものをどう扱えばいいのか分からない。
「ほっほっ。これは私が趣味で作ってるレプリカだよ。何の価値もないが友情の証じゃ。見た目は格好いいと思わんかね?」
と館長が笑う。
そういう事ならとありがたく貰うことにした。
こうして俺は伝説の武器を手に入れた。




