異世界
初投稿になります。宜しくお願いします。
深夜のコンビニは好きだ。
何故か心が動かされる。
嬉しいのか楽しいのか哀しいのか解らないけど、現実の中に非現実を感じることができる。この明るさのせいか?そんな事を考えながらコーラと雑誌の入った袋を受け取り店を出た。
その瞬間、眩しい光と共にトラックが突っ込んできて、俺こと猿本渉はその生涯をとじ、神様から個性のあるスキルをもらい、モンスターがはびこる異世界で生きていく...等ということはなく、無事に一人暮らしの安アパートへとたどり着いた。
何故自分はこんな妄想をするのか...
簡単に想像はつく。現状に満足していないからだろう。
...何故『だろう』なのか。それは認めたくないからだ。
自分には昔から、自身さえも騙して安定を求める癖がある。嫌なことや辛いことがあっても途中で考えることをやめて楽な方へ逃げてしまう。けれど、逃げていることを認めるのは無理で、カッコ悪い自分を人には見せたくない。何かあっても何でもない振りをする。
心の中で文句ばかりの自分は好きになれない。
今の自分の現状。大学卒業、就職の失敗。
面倒臭がりで腰が重い俺は、ギリギリの時期までまともな就職活動をしていなかった。いや、正直なところ何社かは面接を受けたのだが、全て一次、もしくは二次で落とされてしまった。
たった数社に落とされただけだと他人からは思われるかもしれないが、自分の存在が全否定された気がして、次の会社へとチャレンジする勇気が出なかったのだ。
そんな時、友人の山田隆史から
『就職決まってないならウチの工場くればいいじゃん。人足りてないから余裕だぜ?』と誘われた。
隆史が一回生の時からバイトをしていた就職先の工場はそれなりに大きく、単純な作業の繰り返しだが俗に言うホワイトだった。
俺はその言葉にこれ幸いと乗ったが... 結果今にいたる。
人生でなかなか忘れる事のできない言葉。
『わりぃ!なんかそんな簡単に入れないって!』
卒業間近に食らった重い一撃だ。
けれど俺が絞り出した言葉は、『んぁー、いいよいいよ。』だ。
悲しくなる。
全ての気持ちに蓋をして、隆史も悪くなければ、自分も平気を装う。おまけに、『だろーそうだと思った。』とか思ってないけど追撃してみた。隆史に言ったセリフだが、その言葉は自分に刺さる。いや刺している。
この出来事はたびたび脳裏によぎるが、必死でかきけす。
経験になった。
そもそも当たり前だ。と言葉を重ねていく。
そうして、何でもないと自分はダメージを受けていないと騙していく。
親にまで嘘をついて問題を先送りにし、こんな面倒臭い俺は自分の中の平和を今も守っている。
主人公のめんどくささ全開の1話目です。
次話からはもう少し読みやすくなっていきます。チャンネルはそのままで(切実)!