バーテンダーが結ぶ縁
ずいぶん前の森の本屋さまの活動報告でのお題。
会話文なしで愛を表現。心の中で呟くのもNG。
そんな感じだったと思う(うろ覚え)
薄暗い店内で、女の瞳だけが光を反射して煌めく。アーモンド形のブラウンの瞳に映る、冴えない男の顔は真剣そのものだった。
ゆっくりと流れるジャズの音楽と、マスターがカクテルを作る音が程よい酔いを連れてくる。
男がぎこちなく女の手を取り、銀の指輪を苦労してはめた。何度も取り落としそうになり、関節に引っ掛かって四苦八苦する様をくすくすと眺める。
女が手伝えば指輪はするりとはまる。それを女はせずに、黙って男の不器用さに任せた。
二人の出会いはやはりこのバーカウンター。失恋した二人が偶然、隣に座り、二人でやけ酒をあおった。
あの時おごりですよと、マスターが二人に贈ったカクテルは。白ワインとカシスリキュールで作ったキール。酒言葉は『最高のめぐりあい』
コトリ。カウンターにカクテルが置かれた。なんとか指輪をはめ終えた男と、そんな男を辛抱強く見つめていた女が、顔を見合わせた。
置かれたカクテルはXYZ。
マスター曰く、ライトラムとコアントロー、レモンジュースで作られたこのカクテルの酒言葉は、『永遠に貴方のもの/後はない』なのだそうだ。
二人は小さくグラスを鳴らして、飲み干す。マスターに礼を言い、店を出た。
次にこの店を訪れるときは、カリフォルニアレモネ-ドを頼もうと、二人は決めた。そしてそれをマスターに飲ませてやるのだ。
カリフォルニアレモネードの酒言葉は『永遠の感謝』
星も霞む光に溢れた夜の街で、自然と繋がれた二人の指には、互いの薬指に銀のリングが人工の光を反射した。
お酒を飲まないし、バーにも若いとき二回ほど行っただけなのに(笑)
雰囲気で書きました。