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Decadent blue spring  作者: 吉戒 湖業
邂逅・覚醒
8/11

8






ジェーンは部屋に入ると、学校の教室にあるような教壇に立ち、席に座っている集合した人数を数えた。





その数は、六人。 全員揃っていた。






「今日君達に集まってもらったのは、他でもない。新しい人員の紹介をするためだ。名は淡島――――――....ん? アイツはどこ行った?」





辺りを見渡すと、一緒に部屋に入ったはずの淡の姿がなかった。





ウィーン




入り口の自動ドアが開いた。




全員の視線が扉に吸い寄せられる。




開いた扉の向こうには、後ろから照らされて、逆光に照らされた淡の仁王立ちした姿があった。





扉が開いたのにもかかわらず、中へ入る気配がまるでない。





入り口の彼を見て、一人を除く全員が呆気にとられていた。





と、その一人が淡に向かって叫んだ。







「だ、だれだっ! おまえはっ!!」






淡はその一人に対して、待っていましたとばかりに答えた。






「あててみろ、ハワイにご招待するぜ」






そのセリフに「ヒューッ!」とその少女は声をあげた。






「おい、くだらんことしてないで、さっさと中へ入ってきたまえ。それと、日隠(ひがくれ)、お前も乗らなくていい」






「はっ、はい。スミマセン....」






日隠と呼ばれたおさげの少女は、思わず立ち上がっていた自分に気づいて、はずかしそうにすると、席に座りなおした。





ジェーンは頭を抱えながら、説明を続けた。





「今ので分かったと思うが、コイツはちょっと....いや、大分おかしいやつだ。 諸君、コイツと仲良くしろとは言わない、一定の距離を保って上手く接して欲しいと思う」






「人を珍獣みたいに扱うなよ!」






「珍獣じゃない、コブラ扱いだ」






「あれっ!? 元ネタ知ってるのかよ!」





淡が意外そうな顔をする。






「シグマ45辺りからな」







「最古参!?」







ジェーンが視線に気がついて辺りを見渡すと、日隠以外の全員が退屈そうな顔をしていた。




日隠はと言うと、ジェーンの意外な趣味に驚きを隠せないでいるようで、何か話したそうにモジモジしている。





「まあとにかく、今日からコイツは我らD隊の一員だ。面倒だから、自己紹介はコイツ自身に聞け。コイツの施設(ここ)の説明と世話は、緋染(あけぞめ)、お前に任せる」





緋染と呼ばれた少女が顔をあげる。




少女は黙ったまま淡を一瞥したあと






「了解しました」





とジェーンをまっすぐ見つめて答えた。




ジェーンはその様子を見て、改めて全員に向き直った。





「では、これで解散とする。明日は平常どおり、地下での訓練だ」




ジェーンがそう言うと、場の緊張がほぐれたのが伝わってきた。




淡は、室内を見渡した。




室内には席がびっしりとあり、そこに全部で六人の少女がポツポツと座っている。





当初想定していた筋骨隆々な男たちではなく、自分と対して年の違わない女の子たちだったことに、淡は安堵した。





女の子を心の底から欲している程では無いしろ、四年も女っ気が無い生活には、耐えられそうにないと思っていたからだ。





間違えて、ホモになるかもしれないし、ホモにされるかもしれない、という不安もあった。







教室前方には教壇があり、その後ろには、さながら黒板のように、ホワイトボードが壁一面にあった。





学校と異なっている点は、窓が一切ないことだった。







「ああ、言い忘れてた」






ジェーンは部屋から出る一歩手前で、歩みを止めて淡に振り返った。





「お前にオモチャをやる。施設(ここ)の紹介が終わったら、射撃場に来い。道は緋染が知ってる。緋染、そいつの認識番号はD(ディー)1(ヒト)0(マル)2()だ」




そう言い残すとジェーンは教室を後にした。





オモチャ.....なんだそれは?





いかがわしいもの? ....まさか!





「おーい、聞こえてるー?」




淡がアダルティな妄想から帰ってくると、目の前に先ほど緋染と呼ばれた少女がいた。




髪はピンク色で、片側の髪を耳にかけたマニッシュショート。




目鼻立ちは整っていて、背は自分よりも少し高い。




服装の露出は激しめで、胸元が強調されたトップスにダメージの入ったジーンズを穿いている。




どことなく落ち着いた雰囲気から、自分より年上なのがわかった。




「聞こえません」





「聞こえなかったら返事しないでしょ!」





「じゃあ、聞いていません」






「いや、聞いてよ....」




緋染は一瞬肩を落とすと、すぐに向き直った。





「あたしは、緋染 ( あけぞめ )朱桜(あお)。このD隊の隊長よ。 えっと....君は.......淡島くんで良いのよね?」




その言葉に淡は答える。




「そっ、淡島淡。ヨロシクね、緋染さん」





普通な返事が返ってきて意外だったのか、緋染は驚いたような表情をしてから、淡に右手を差し出した。




「朱桜で良いわ。こちらこそよろしくね」




淡は右手を差し出しかけて、いま自分の右手が血まみれなことに気づき、すぐに引っ込めて、左手を差し出した。





「どうして右手に左手を出すのよ....まあいいわ」




朱桜はそう言って、淡と歪な握手を交わした。




「さてと」握手する手を放すと、朱桜は、まるで幼児に言い聞かせるように言った、




「じゃあこれからこの施設を案内するわ。わりと入り組んでるから、お姉さんからはぐれないように付いてきてね。説明は歩きながらするわ」





「わかりました!おねえちゃん!」





淡は元気よく返事をして、朱桜と共に部屋を後にした。














長くて広い廊下を、ここに来た時と同じように歩く。




そういえば、さっきみたいに人と喋るのなんていつ以来だろうか?




高校に通っていた頃は、話しかければ話すことはできたが、誰も話しかけてくることはなかった。




話していても、どこか腫れ物を扱うような、そんな接し方だった。




教師たちも、どこかよそよそしく、学校に行かなくなってからも、最初の数週間は連絡こそあれ、半年立つころには完全に無くなっていた。





それでも学校というもの自体は嫌いではなかった。






にもかかわらず学校から足が遠退いたのは、そうしたクラスメイトや教師に対して居心地の悪さを感じたせいだと思う。





「居住区は地下四階よ、まずは淡くんが住むとこからね」




めんどくさいから、階段にしましょ



エレベーターを待っていると、朱桜は脇にある扉を開いた。







階段を上った先の扉を開くと、先程とあまり変わらない景色が広がった。






淡は最初に言われた通り、しっかり朱桜の後ろについて歩いた。







「ここが居住区。この施設に入っている人達は、ほとんどここで生活しているわ」







廊下の壁には等間隔で扉がついていて、その扉一つ一つに違ったアルファベットと数字が書かれている。






十字路に差し掛かって、朱桜は歩みを止めた。







「真っ直ぐ行くと突き当たりに食堂があるわ。ご飯はそこで食べるの。時間は決まってるから、寝過ごすとご飯ぬきよ」





こっち



立ち止まっている淡に朱桜はそう言うと、十字路を左に曲がった。








「ここの部隊は全部で三つに分かれていて、それぞれD、V、A

のアルファベットが割り振られているの」






「へーそうなんだ」







「そして、隊員にはそれぞれ認識番号が与えられるの。淡くんは、さっきジェーンさんが言ってたD―102ね。念のために教えとくけど、あたしは、D―088よ」





「ほーん」






朱桜が振り替えると、背後の淡は早くも眠けまなこになっていた。






「おーい、ねぇ聞いてる?」





と朱桜は淡に尋ねた。






「聞こえない」







「聞こえなかったら返事しないでしょ!」






「聞きたくない......」






「もうちょっとやる気を出して!」






そんな会話をしているうちに、朱桜は一つの扉の前で止まった。





扉には、D―102と書いてある。






どうやら淡の部屋らしい。





扉が開き、中へ入った。






部屋は前の家と同じくらいの広さで、暮らしていくには申し分のないように思えた。





家具がなく寒々とした前の家と違って、なんとベッドと机があり、台所と冷蔵庫までついていた。







「うおーー!!なんだこの部屋!? めっちゃ快適そうじゃん!」






淡は目を輝かせて喜び、部屋の中へ入るとあちこちの扉を開けたりしてはしゃいだ。






「トイレとシャワーはここよ」






朱桜は、淡のはしゃぎように面食らいつつも、そう言って入って右にある扉を開けた。







「いやー良いねぇ~!ここでの暮らしは最高になりそうだよ!」






淡はベットでジャンプしながら言った。






「そう?なら良かったわ」






それに朱桜は答える。






ボンッ! ボンッ! ボンッ!





ジャンプするごとに布団がめくれあがる。





と、めくれあがった掛け布団の中から何やら黒色の布が出てきた。





「なんだコレ?」





淡はジャンプするのを止め、その布切れを手に取った。






広げてみると、それは黒地にレースがついた大人っぽい女性用の下着....パンツだった。





「ああー!!それ、あたしのだ!」






朱桜が声をあげた。






「いや、どうしてお前のパンツがここに落ちてんだよ!?」






「この部屋よく使ってたんだよね~、ちょっとした趣味の時に。いやー無いなーと思ってたけど、そんなとこにあったかー、そりゃ分からないわ、うん」





朱桜はポンと手をならして納得したようだった。






「趣味!? パンツを脱がなきゃいけない趣味ってなんなんだよ!」




裸族?裸族なのか? まあ、それぐらいなら....






「うーん、例えるなら.........プロレスかな!」






「もろアウト!」






考えていた最悪の答えだった。




というか裸でやるプロレスなんて性●為以外の何物でもないじゃないか。




俺、さっきベットに顔からダイブしたよ。跳びハネもしたよ





俺、知らない男に汚されちゃったんだな。







「ねぇ、そろそろパンツ返してよ」





朱桜が物思いに耽っていた淡をたたき起こした。






我に帰った淡は返事をする。






「ああ、悪い。返すよ、ビッチ」






「誰がビッチよ!」






「......? じゃあ、ニコラヴィッチさん」








「あたしは、ゴルゴ13に登場する元ポーランド軍人でもない!」






朱桜はパンツを引ったくってポケットに突っ込んだ。







「ほら、行くよ。次は六階の射撃場に行かなきゃ」





と、朱桜が床に寝転がった淡に言った。






「え~めんどい」





淡は怠そうに答えるとゴロゴロと転がり出した。





「ほら、起きなさいって。ジェーンさんがアダルトなブツをくれるんでしょ?」





淡はその言葉を聞いて立ち上がった。




その勢いは、朱桜が今まで見たことがない立ち上がりの早さだった。







「さあ行きましょう、おねえさん!例え地の中、水の中、壁の中!」








「いやちゃんと道を通ろうよ」







二人は部屋を出ると、今度は地下六階へと歩みを進めた。







大変投稿が遅れてしまって申し訳ありません。



今どれぐらい見てくださっているかわかりませんが、人数に関わらず完結はさせたいと思っております。



今後はもっと早く更新したいと思うので、最後までお付き合い頂けたら幸いです。

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