旅路前の一時
皆さんおはようございます。唐突ですが私、アリシア・エルトレーアは森で朝を迎える事が大好きです。森から出た事がないため外の事はよく分かりませんが兎に角朝にお日様の光を目一杯身体に浴び、1日を開始する事が小さい頃からの習慣でした。
しかし、昨日まで様々な出来事があったため肉体的にも精神的にもとても疲れていました。そのため、今朝は太陽の光に気づかず少し寝過ごしてしまいました。小鳥の鳴き声、風に揺れ擦れる木の葉の音など気持ち良い音色がする一方で全てを塗りつぶす豪快な音が近くからしました。
私は眼を開けると超至近距離にリュウの寝顔がありました。私は数秒思考停止し硬直しましたがすぐに恥ずかしくなり離れようとしますが身体が動きませんでした。理由は簡単でリュウに見事に抱き枕状態にされていたからです。凄く恥ずかしく嬉しくドキドキする反面、耳を貫き脳に直接響くいびきに大変困っていた。昨日の頼りになる大きく見えた背中、ドキドキさせる言動、カッコよすぎる容姿、共に過ごした幻想的な時間などを全て吹き飛ばすほどの轟音がリュウから発せられる。緩んでいて涎が垂れている顔もまた愛おしいと思ってしまう自分がいるが現状を何とか脱しようと思い、起こす事にした。まず右手で鼻をつまみます。そして、左手で口をガッチリ押さえます。そして、数十秒待つことリュウに変化が見えた。幸せな寝顔が真っ青な顔となり苦しそうに見えた。そしたら何か助けを求めるように私を抱きとめていた腕が空を彷徨い始めた。私はこの隙に抜けようとしましたがリュウの次の行動で完全に止められました。
---なんと私のお尻をガッチリと鷲掴みしていました。
私は恥ずかし過ぎて悲鳴をあげようと思いましたがリュウの表情を見て次の行動を変えました。その表情は、満足げにだらしなく緩んだ厭らしい表情をしていました。私は後ろに頭を引き、一気にリュウにヘッドバットを極めました。苛烈にッ!
「アゥッチッ!ファッツ ハープゥンドゥ⁈ 俺の美しき脳の細胞が何百億個か死んだぞッ!誰だ?こんなご褒美を朝からプレゼントするのはッ!!」
俺は犯人が誰かは分かっているが一応聞いてみた。アリシアは頬を赤くし身体を自分で抱き締め軽く睨んでいた。俺は何故と聞いてみたがプイッと無視された。
「いや〜それにしても良い朝だなッ。そして腹が減った。朝飯を食べに行こうぜッ!」
「……は〜。分かりました。で、どこで何を食べるのですか?」
「そうだな、適当に進みながら森で狩りを……レッッッツツ パアアアァァァリリイイィィィーー!」
「ええー!」
ということで俺はエルフの街を離れ、アリシアを連れ森を歩いていた。途中川があったため水浴びをする事にした。アリシアが恥ずかしいから別々との事で渋々了承したが軽く覗こうとしたら風の刃が飛んできたため大人しくした。その間アリシアの替えの服を創った。今回はライトなゴスロリ風の白と蒼のフィッシュテールドレスを用意してみた。それを脱衣のところに置いておくとアリシアが手に持ち、キラキラした目で見つめ着ていた。クルクルと回り、凄く気に入ってくれたようだ!何処かのお姫様のようだな。
二人の水浴びが終わり森を歩きながら俺はアリシアのステータスを見るため鑑定した。
【名前】アリシア・エルトレーア
【年齢】 18歳
【種族】白金の聖龍姫 (セントエルフ)
【性別】 女
【レベル 】 86
【体力】 9400/9400
【魔力】 S
【筋力】 C
【敏捷】 B
【精神】 S
【スキル】 隠蔽 槍技Lv10 弓術Lv10 光魔法Lv10 風魔法Lv8 水魔法Lv8 料理Lv6 魔力吸収 無詠唱 限界突破 舞闘 騎乗 裁縫 礼儀作法 固有能力(精霊魔法Lv10 結界魔法Lv9 浄化魔法Lv6 精霊王の眼 龍心 龍姫軽装 光の精霊王の加護 )
「アリシア、前に自分のステータスを見たことはあるか?」
「はい。お母様に1週間前に鑑定結果を紙に写して貰い確認しました。それがどうしたのですか?」
「いやなに、多分だがアリシアのステータスが前と比べて格段に上がっていると思うのだが?」
俺はそう言うと鑑定結果を噓偽り無く告げた。アリシアは自分の過去からかけ離れた強さになっている事に仰天する。
「わ、私凄い事になっていますね……。昨夜の出来事で私自身が遥かに強くなっている事は大体予想していたのですが、まさかこれ程までとは思いませんでした。」
アリシアはすぐに現状のステータスを受け入れた。強くなった事、リュウに近づけた事に純粋に喜んでいる。俺は興味本位で何処が前のステータスと変わったか聞いてみた。
「そうですね、まず最初から言いますと前は種族がハイエルフでした。セントエルフとは聞いた事がありませんね。次にレベルですが86ではなく36でしたので50上がってますね。それに伴い能力値も魔力以外格段に上がっていますッ!お母様を超えています!スキルも元から所持していたものは底上げされています。新たなスキルは『無詠唱』、『限界突破』、『舞闘』で固有能力では『龍心』、『龍姫軽装』、『光の精霊王の加護』ですね!私可笑しい存在になってますね!」
アリシアが若干壊れ掛かっているが大丈夫だろう……たぶん。俺は種族と最後にあった3つのスキルを鑑定する事にした。
【白金の聖龍姫】 聖なるハイエルフ、光の精霊王の因子、龍王の伴侶の3つが合わさってなり得た種族。
【龍心】 龍と心が通わせる事ができるが対象が答えないと心中は分からない。
【龍姫軽装】 龍に選ばれた者が纏える装備。
俺とアリシアは早速戦闘装備を整えることにした。俺はロングコートを脱ぎジーンズとタンクトップだけの服装だ。そして宝物庫から出した龍神刀を腰に据えた。
アリシアはドレスの上からスキルの龍姫軽装を纏った。白金色の額当て、胸部と腰部の甲冑、ガントレット、グリーヴがアリシアの身体を覆う。素材は俺の龍の鱗だが色が異なる。基本的に魔法が主体の戦法だが槍も使用するらしい。子どもの頃から修練していたらしく、姉のシンシアは魔法と剣らしい。アリシアは後方支援型と思っていたがどうやら違ったらしい。俺は宝物庫から槍数本とオークの魔石数個を取り出し錬金で掛け合わせ一本の槍を作成する。例えるなら魔力を通り易くした鉄槍だ。これをアリシアに渡しておく。
「よし、張り切って行くかッ!」
「はい!私も頑張ります!」
俺たちは行方も決めず出発した。とりあえず飯食って魔物狩ってレベル上げながら何処か街に入るという方針だ。俺たちは動物や魔物が出るまで話しをしながら進んだ。
「アリシアはどんな料理を作れる?」
「私はハイエルフだったので料理をする必要はありませんでしたが、将来の旦那様に手作りの料理を食べて頂きたく料理をし始めました。それからは趣味にもなり海産物を使った料理以外は大方作れると思います。まだ修行が必要ですが料理は私に任せて下さいッ!!」
「ああ、俺は食べる専門だからなッ!残さず全部食べるから安心しろ。俺が残した時は死ぬ程ヤバい状態だと思ってくれ。……そういえば『未来の旦那様』って言っていたけど俺のことで良いんだよな?」
俺がそう言うとアリシアは湯気が出る程顔を赤くして俯いてしまった。しかし、すぐに顔を上げ涙目で睨んできた。
「……わざと確認しました?絶対にわざと聞きましたよねッ?」
「HAHAHAなんのことやら。ただアリシアが言うその『未来の旦那様』に俺がなっているのなら極上の幸せだなと思っただけのことよ。」
俺がそう言い頭を撫でてやると又もや俯いてしまった。初心というか箱入りというか凄く純粋だな。そこが愛しいのだがな。
そんな緊張感の欠片もない会話をしていると遠くから重い足音が聞こえてきた。てか近づいてきている。俺は五感が強化されているため中々の大物と予測していた。大体熊か猪、或いはオーク並みの魔物とみた。アリシアも気づき槍を中段に構える。俺は身体から力を抜いて獲物を探る。
そして姿を現したのは……ウサギちゃん達だった。あら可愛いと言いたいところだが絶対に言わない。理由は至極簡単。デカイ。ただデカイ。
「あれは……メガビックラビットですね。それも3匹います。しかし、牙と蹴りを気をつければ簡単に倒せますよ。」
「いやいやウサちゃんデカイよね!可愛いけどさ、可愛いけどさッ!何?ビッグ○イト浴びたの?それとも巨○化?アウトだよッ!」
俺は目の前のメガビックラビットというウサちゃんズを鑑定した。
【名前】ー
【年齢】 14歳
【種族】メガビックラビット(魔物)
【性別】 オス
【レベル 】 5
【体力】 35/35
【魔力】 G
【筋力】 F
【敏捷】 E
【精神】 G
【スキル】 筋力強化Lv1 聴覚強化 逃げ足
「弱ッ!オークより弱いなこりゃ。ま、いいや。とりあえず狩るか。」
俺がそう言うとアリシアが槍を中段に構えながら突っ込む。筋力が俺に比べ遥かに劣るが巧さで補うであろう。アリシアは槍をその勢いを殺さずにラビット君の土手っ腹に突き刺した。的確に魔石がある場所を穿ち一度の突きで終わらせた。槍を引き抜き、器用に回転させながら地に突き立てた。少しドヤ顔気味である。しかし、それだけの技だった。
俺も残りの二匹をやろうと前に進みでる。ラビット君達は無防備な状態の俺に躊躇なく襲いかかって来た。俺は頭の中にある知識で刀の扱い方を知っている。いや、正しく言うと知っているものも知らないものも知っている。だから、間合いに入らせるため進む。ラビット君達が間合いに踏み込んだ瞬間、事は全て終わっていた。ラビット君達はまだ普通に立っているが数秒後身体が二つに裂け崩れ落ちた。
俺がやったのは居合。一瞬の内に膝から力を抜き、この脱力から生まれる神速の抜刀。後は骨を断つよう滑らせながら横一文字に一閃。俺が思うに刀術において最速で最強の技、居合。これをこれからも鍛えていこう。俺は刀身を見る。綺麗な輝きを放つ白銀の刃に血が一滴も付いていない。初めてにしては上々な出来かな。
「よし、これなら抜○斎にも劣らないだろうッ!逆刃刀ではないがな!」
俺は笑いながらアリシアを見ると瞳をパチクリしていてぼーっと俺を見ていた。
「どうした?そんなに見つめられると恥ずかしくて一物が勃っ「バコンッ!」……照れるじゃないか。」
俺は頭からたん瘤を生やしながらアリシアに聞いた。
「今のリュウの攻撃が速すぎて視認出来ませんでした。凄いですッ!」
アリシアはそう言い俺を褒めた。なんか照れ臭いな。
「よし、早速ウサギの肉を食べるとするかッ!俺腹減りすぎてここの森の生き物全滅させちゃうかもしれない。だから早く美味いの作ってくれ、アリシア!」
「任せて下さいッ!しかし、肉だけでは寂しいですね。少し待っていて下さい。薬草など生えてるかもしれないので見てきますね。」
「おう、5分以内で宜しくッ!」
アリシアは薬草や香草を取りに行ったため、俺はウサちゃんの肉を剥ぎ取ることにした。刀を鞘に収め、剥ぎ取り用のナイフを創り肉を切り取っていく。初めてのため少し雑になってしまったがなんとかなるだろう。そうしているとアリシアが色々な葉っぱを抱え戻ってきた。
「おお〜おかえりッ!ザ・ミドリだなその草ッ!」
「中々良いものがありましたッ。早速作りますね。出来たら呼びますから待っていて下さいッ!」
俺はそう言われ一応必要な物を聞き、ナイフ、ボウル、すり鉢一式と塩胡椒を要求された。俺は魔法で創り渡す。龍姫軽装は解いておりドレス姿のためエプロンも渡しておいた。いや〜似合いすぎてニヤけてくるねぇ。アリシアは俺の視線に気づいたのか照れ臭そうにしていた。これ以上は料理の邪魔になってしまうため離れた所で刀を振るうことにした。
俺は一本の木の前にやって来た。間合いよりかなり離れ、左足を引き重心を落とし構えた。刀に右手を添え、対象の木を見据える。全身から力を抜き重心をほんの少しずつ前へと移す。そして、前に倒れそうになった時前へと駆け抜け、木に向け一閃。まさしく爆発的な疾走からの抜刀、そして居合切り。木を見ると極細の線の跡をつけただけで変化は見られない。
俺は線の跡よりも上にある木を押すと動きその間押した方へ倒れていった。切り口を見ると綺麗な面だったため安心した。居合を極めてどんな相手も一撃で倒せるようにしておかないと。まだまだ技を見つけ出さなければな。
そうしていると食欲を掻立てるような香りがしてきた。俺は刀を収め、ダッシュでアリシアの元へ行く。そこには、大量の緑色の肉の山があった。一瞬見た目が微妙で止まりそうになったがこの肉と香草が共に焼かれ素敵なコラボをしているのがわかる。
俺は大きなテーブルと椅子2脚を創り、料理を座って待つ。アリシアが俺の姿を捉えニコッと笑った。そして料理を運んでくる。
「出来ましたよ〜。香草や薬草のすり潰した奴と胡椒を混ぜ肉へ揉み込み、焼いたものです。あと、こちらは胃がスッキリするような薬草を色々ブレンドして作った飲み物ですッ!」
「旨そうだな、アリシアッ!多くは語らないぞッ!では……頂きますッッ!」
俺は早速肉へと手を出した。食べやすいよう骨が出ており、そこを持ち齧り付く。
「う、うめぇ〜ッ!あのウサギちゃんこんな上等な肉だったのか!脂がしっかりとのり、噛めば噛むほど迸る肉汁。肉の旨みもしっかりと伝わってくる!」
俺は極太の肉の塊を一つを平上げ、更に食べる。アリシアもしっかりと噛んで味わっている。中々の食べっぷりだがその中でもちゃんと品がある食べ方をしている。流石元エルフのお姫様だ。俺は薬草の飲み物を飲みながら肉を貪るように食べていた。
「それに、肉の旨みをさらに引き出しているのがこの香草や薬草!爽やかな下味が食欲を増させる!その中に胡椒の味もあり、料理のアクセント役を興じている。味にインパクトをつけ、決して飽きさせない料理にしている。薬草の飲み物も胃を優しく包み込む感じで安心して食べられるようにしてくれている!」
俺は2つ、3つと胃に納めていき肉の塊を減らしていく。アリシアもスピードを緩めず食べている。俺よりも全然食べていないが……いや、俺が食べ過ぎたか?
そんな事を思いながらも手は休めない俺。そして、十数個食べた俺は残りが一つになった時動きを止めた。アリシアも残りの肉を見ていた。
「……リュウ、食べて下さい。残さずしっかりと完食する姿を見せて下さいね。」
アリシアが俺にそう伝えたが答えは違う。俺は肉を持ちながらアリシアの元へ行き、肉を半分に切る。片一個は俺が食べてもう一個はアリシアに渡す。
「こういう時は分かち合うものだ。美味しかったぞ、アリシア。ご馳走様、次も楽しみにしている。」
アリシアは俺の一言に顔を赤くしたが真っ直ぐと俺の眼を見て笑顔で答えた。アリシアは肉を食べようと骨の部分を掴もうと手を伸ばしたが俺が引っ込めため掴めなかった。アリシアは怪訝そうな顔をしたが俺は肉を一口サイズに千切り、アリシアの口へ運ぶ。
「アリシア、あ〜ん。」
俺は肉を食べさせようとするとアリシアは増す増す顔を赤らめる。しかし、覚悟したのか口を開けていく。緊張しているのか少し震えている。俺も気恥ずかしくなってきたから口に肉を入れた。アリシアはしっかりと味わい、笑顔になる。俺は次も食べさせようとするとアリシアは全部掻っさらい口に含んだ。頬は限界まで伸び、ハムスター状態になっていた。俺は面白くて腹を抱えて笑ってしまった。
「はははははっ!やるじゃないかぁ、アリシア!お前って本当に最高の女だ!何時だって俺を惚れ直させるッ!」
「もう!もう!恥ずかしくて死にそうですッ!」
俺は更に愛おしくなり、抱き締めて強引に唇を合わせた。アリシアは沸騰したかのように赤面になったが受け入れてくれた。そして少し離れ見つめあった。
「お前の全てが見たいだけだ、唯それで心が満たされる。さ、片付けて旅路に出るとしようッ!」
「は、はいッ!」
俺はテーブルなどを宝物庫に入れ、アリシアは水魔法で辺りを洗浄する。そして、片付いたアリシアは龍姫軽装を纏い槍を持つ。俺は元から準備ができているから大丈夫だ。
さて、行きますかッ!




