プロローグ
ーーそいつは家でずっと1人ぼっちだった。
ーー兄弟はいない、両親は父の浮気が原因で離婚し、母親に引き取られたが毎日仕事で多忙な日々。
ーー自然と家では1人でいる時間が増えた、いやその時間しかなかった。
ーーそんな日々を過ごしているうちにそいつには欲しいものができた。そう、それはーー
ーー家族。
「ふんっ、ふんっ、ふんっ、・・・」
どうも、佐々木龍太郎です。いや〜天気が超良いですねぇ。えっ?今どこで何をしているかと?
学園の屋上で筋肉トレーニング、即ち筋肉とデートしています(笑) 俺はこの世で絶対に必要なのは3つあると思うのですよ。
ーーまずはお金、英語で言うとマネー。分かると思うが金がないと生活ができない、彼女ができない。これ重要よ。
ーー次に筋肉である。男ならば全ての現象や方程式を筋肉で解くぐらいの勢いで成長しなければならない。ま、実際は誰よりも強くなり女の子の黄色い声援が欲しいだけだがねっ!
ーー最後に飯。GREATな筋肉に成長させるためには栄養が必要なのだが、お金>飯なため最低限の食事しかしてない。
ここで俺の将来の計画を教えておくとしよう。俺は美人な嫁さんと結婚して沢山の子供をバンバン作って子孫に囲まれながら生きたい。そのためには十分な貯金、守ってあげられる肉体、自慢できる程の経歴が必要不可欠だ。
現時点ではテストの成績は上の中、貯金も高校生レベルでは高すぎる方、筋肉も絞りに絞ったため計測不能である。容姿は高身長だが顔の基準はよくわからん。
いや〜それにしても俺様の筋肉は凄いぞよ。毎日鍛えているだけあって物理法則を無視す
るぞ。例えば1キロメート「ここにいるかっ、龍っ!」…誰だ?いや、誰かは分かっているが俺のありがたき説明回を台無しにしやがって。
「龍っ、また君は屋上にいるのか?ここは立ち入り禁止だぞっ!」
「いや、昼休みに屋上でお天道様の光を浴びながら筋肉トレーニングをするという日課をこなしていただけだ。」
「別に屋上でなくとも、グラウンドで行えばよいではないか?」
「・・・恥ずかしいだろ、みんなの前で公開筋トレとか。そうだ、一緒にやらないか?お前は細く綺麗だが、筋肉が全然足りてないなっ!ほら、共に腕立て伏せをやろうっ!」
「き、綺麗・・・ではなくやらない!君みたいに筋肉だけで出来ている人間になるではないか⁈」
「筋肉だらけの楓か・・・キモいな。」
そう、今話しているのは北村 楓といあ真面目な女である。スタイルも良く、全体的に細いが出るところは出ている。モデルですか?と言われてもおかしくないだろう。鋭い目が彼女の性格を表しているのか気が強そうである。髪は光沢をおびているかのような漆黒でポニーテールである。はっきり言って好みである。風紀委員のため俺みたいな校則を守らないやつをよく叱っている姿がよく見られる。特に俺は凄く怒られるが偶に気持ち良くnゲフンゲフン。とにかく校内でも最上位の容姿をもっているが、女子からはあんまり好まれていない。
「全く君というやつは・・・と、ところで今日はもう昼ご飯は食べたのか?」
「キャベツの千切り〜マヨネーズを添えて〜と牛乳1リットルを食した。」
「何故フランス料理みたいな言い方をしたか知らないが・・・作りすぎたから分けてあげよう///」
「べ、別に食べてあげてもいいんだからねっ」
「何を言っているのだ?で、食べるか食べないのか?」
「よし、頂きます。お前の料理は美味いしボリュームもあるからな最高だ。」
「そうか///ではいただきます。」
「おう、いただきマンモス。」
楓から貰う弁当はバランスがよく素朴だが素材の味がしっかりと残されていて美味い。ご飯はふっくらとしていて米の甘みがしっかりと伝わってくる。おかずはピーマンの肉詰め、甘めの卵焼き、人参とごぼうのきんぴら、豚の生姜焼きだ。俺の肉好きを知ってか肉の比率が野菜より少し多い。俺も自炊をするがやはり女が作るものとは全然異なる代物だ。特に、楓の料理はなんていうか食べていると心が暖かくなる。弁当を分けてもらうのは日常茶飯事なことだが、いつ食べてもこの味だけは堪らなく好きだ。こないだこの事を言ったら顔が真っ赤になり、照れているのかとからかったら往復ビンタされ頬が腫れた。
「ご馳走様。あいからずデリシャスな味だな。良いかばいばあちゃんになれるよ。」
「お粗末様。佐賀には行かないぞ。ほら、お茶だ、熱いから気をつけてくれ。」
「てんきゅー。いや〜屋上で飯を食うのは最高だな。こうなんていうんだ、ピクニックみたいな感じだな。」
「そうだな。外で食べるのも悪くないな。心も体もポカポカしてくるから気持ちがいいな・・・・・ってだから屋上は立ち入り禁止なんだっ!何をのんびり昼食を食べているんだっ」
「細かいことは気にするなよ。ざっくばらんといこうぜっ!」
「早く出るぞ。誰かに見られたら何て言われるか分かったもんじゃないからな。」
「お昼寝してジャンピングスクワットしてから行くから先行っていてくれ。」
「そんな事していたら授業に遅れるだろう。いいから、行くぞっ。」
「へいへいほう〜」
教室に2人して入ると途端に静かになっていく。男子からの目は嫉妬の眼差しだ。慣れてきたもんだが正直面倒くさい。原因は楓と2人きりになっていることである。しかし、手を出してくる奴は1人もいない。上級生の不良達がが絡んできたので1人残らず黙らせて額に肉と書いてあげた。その翌日から校門前でずらりと並んで挨拶してくる不良達がいたので毎朝牛乳1リットル買っとくように言いつけておいた。
そんな訳で男子は手を出したいが出せない状況下にあり、俺の周りに1人を除いて誰も寄り付かない。女子は楓を睨めつけているが、どんまい。
「授業中は寝ないでしっかりと集中して受けるのだぞ。」
「任せろ。俺を誰だと思っている。ちゃんと空気椅子で望むぞっ!」
「普通に受けろっ!」
・・・・・とのことで暇な時を過ごしいざ放課後。号令が終わり掃除の時間なのだが早く抜けてバイトへ向かいたい。が、楓や周りの目があるため素直に掃除をする。所謂、急がば回れというやつだろう。
掃除が終わり、鞄を持ちダッシュでバイト先へ向かう。意外と体も大きく全力で走るためかなり目立つ。楓から「廊下を走るなー」と聞こえたが気にしない俺。超クール。
週に6日入っているバイトだが、時給がそんなに悪くないため今まで皆勤賞だ。どやっ。
バイトへ向かっている途中パトカーに追われていた車から1人の男が歩道にいた小学生の子どもを捕まえた。片手にはナイフを持っていた。
「動くなっ!このガキの命がどうなってもいいのかぁっ!」
「ひっく。ママ〜〜ッ」
男は子どもを持ち抱え車に戻ろうとする。周りは完全にパニック状態である。
しかし、俺は違った。気づけば鞄を投げ捨て走り出していた。風を切る音はどれだけの速度を出しているかを証明している。車に乗り、扉を閉めようとするが閉まる寸前に龍太郎の手が滑り込み扉を力づくで開けた。中の男は驚愕していたが、構わず中から子どもごと引き摺り出す。
「てめぇ、殺s」
男が喋っている途中構わず地面に叩きつける。それだけで男は気を失ったが俺は二撃目を顔面に放つ。鼻が潰れ、血塗れになりダウンしたと思い子どもの元へ向かう。
「大丈夫か?怪我はないか?」
そう言うと子どもは涙と鼻水で顔を汚しながら抱きついてきた。
「こばがっだよ〜〜。」
慰めるためにも背中を摩ってやる。
周りの人も状況を受け入れ始めたか此方に寄ってきた。
ーーその瞬間、俺の背中に鋭利な物が刺さっ
た。周りの人達から悲鳴がでる。
車にはもう1人乗っていたことを見落としていた。俺は子どもを人集りの方へ突き飛ばし、ナイフを刺したやつと向き合う。相手は焼きを起こし手に持っていたナイフを投げてきた。それを手で払いのけ男の方へ向かう。相手は俺の顔を見て歯がガチガチいっている。
「子どもに手を出すととんだ豚野郎だな。手を出すなら新宿二丁目のお姉さんにしとけや。」
俺はそう言い腕を全力でぶん回し顔面に叩き込んだ。歯が全部逝ってしまったが気にしない。ガチガチ煩くなくなったから良しとしよう。
周りの人達から拍手が送られるがよく聞こえなくなってきた。ありゃ、牛乳飲みすぎたかな。それとも楓の弁当に睡眠薬が入っていたのか?あいつ俺に何をする気だったのか。でも、あいつならウェルカムだかな。
ーー認めたくなかった。正直分かっていた。自分が死に近づいていることが。
ーー嫌だ。まだ死にたくない。夢の大家族を得るまで死に切れない。これまでやってきたことが全て無駄になってしまう。これまで貯めてきた金は?鍛え上げてきた筋肉は?培ってきた知識は?全てが無駄になる。
ーー悔しい。どれだけ貯めたと思っている。それにまだチェリーなボーイだぜ。畜生。こんなことなら楓に告ってムフフなことしたかった。てか、何死ぬ前にくだらないこと考えているんだ。いや、結構重要な事かも。
ーーーー生きたいなぁ