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白黒(モノクロ)世界  作者:
第一章
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-第一節-

今日、僕は「旅をしている」という少女に出会った。

彼女は、どうやら僕と同じように色彩感覚を失っていないようだった。

詳しい話は聞けなかったが、少なくとも一週間は国の中心であるこの場所に滞在するそうだ。


《中略》


たぶん、僕はこの一週間のうちに決断をしなくてはいけないことだろう。

国のために自分がすべきことを             ―――――日記より抜粋




一週間ぶりの休みは特にするべきこともなく、ただだらだらと半日が過ぎようとしていた。休まずにずっと仕事をし続けるのは嫌だが、別段休みだからといってすることもない。

現状、僕は折角の休みをすでに半分以上無駄にしている。

もっとも僕に恋人がいれば、今日の休みは恋人に会いに行くために使うことが出来るのだが、残念なことに恋人はいない。

それなら家族と会うというのでもいいかもしれないが、そもそも僕は実家に帰るのでそれ自体が別段特別なことではない。それに父は僕と同じく兵士であり、一応どっかの部隊の隊長だ。休みが被っていれば、同じ家に帰ってきているはずなので、父は今日も働いているはずだ。よって、家族と会うというのも半分は出来ない。

それに母は母でどっかに出かけたようで、今は家にいない。

そういえば、出かける前に「一緒に出かける?」なんて母は言っていたが、20にもなって母と出かけようなんて思わない。

それに、あの一年前から仕事以外で僕は人と関わることを出来るだけ避けている。

兵士の仕事で話をしていたらむしろ怒られるので、最低限度の会話だけで済むが、日常生活ではそういうわけにはいかない。

人と関われば会話をすることになるだろう。しかし、それがまずいのだ。もしも何らかの拍子に、僕が“色彩”感覚を失っていないことを知られたら、どうなるかわからない。

少なくとも、信頼を失うことにはなるだろう。僕は一年もの間、皆と同じように“色彩”を失ったものとして接してきたのだ。

それが、今さら“色彩感覚”を失っていないなんて……。

僕が仮に“色彩感覚”を失った側で、知り合いが一年も経ってから自分は“色彩”を失っていなかった、と自白したら、僕は怒ると思うしそいつになんら不信感を抱く。

一度、不信感を抱かれるとなかなか信頼を取り戻すのは難しいはずだ。



――――もしかしたら、ジョークとして受け流されるかも知れないけれど…その確立は低いような気がする。



けれど、やはりこのまま家で過ごすというのも勿体無い話かもしれない。折角の休みだ、次の休みはいつになるかはわからないし、少なくとも一週間はないはずだ。


(外に出かけることにするか)


だが、町のほうは知り合いに会う確率が高い。そうなると、話す確率も上がる。

それはまずい。

ならば、町とは反対方向に行くべきか……。確か、反対は人気(ひとけ)の少ない河原だが、結構すごしやすかったはずだ。

僕は、身支度を簡単に済ませるとその人気(ひとけ)のない河原に向かって出かけた。



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