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不死の受命と無神論者の神  作者: 自然対数
第一章 罪人に送る地獄の業火
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太陽と星屑

 USAT メキシクス州 イシュチェル遺跡跡 ムーンライト城 庭園内


 マイアミースから南方に向かうとメキシクス州に着く。メキシクスーー名前の由来は神に選ばれしもの。その土地由来の月の女神イシュチェルの遺跡を潰して、自分ムーンライトの城を建てるなんて皮肉が過ぎる。

 ーーまあ、女神の名を冠するものの末路はこんなものだろう。

 かげろうの“蛇式零番 千里眼”によりここに住む人間たちが女神の選抜者だと言うことがわかっている。

かげろうが来るまでは、女神の選抜者の居場所がまるでわからなかった。だが、蜏が来てからは敵の位置が簡単にわかるようになった。


 深夜、コウモリの鳴き声が響き渡る。月明かりの差すムーンライト城はまるで吸血鬼が住んでいそうだ。城の最上階の窓の影にゆらゆらとローブが揺れる。


「あぁついた、ここだよ。遺跡を潰して自分のお城を建てちゃうなんて趣味が悪いね」


 満月の下、城の中から二人の女性が近づいてくる。くちなわにはまだ暗くてよく見えない。


「ここからは、危ないね。離れていた方がいいよ。さっきの子達とは違うからね。君はまだ見てるだけにして」


 くちなわは庭園内の茂みに隠れ、目だけを火蟻に向けた。


 ○○○


「ウルフ様の庭に何の用だ、悪魔」

 オレンジがかった髪にオレンジのコートを着た女性が叫ぶ。容姿もさることだが、何より表情が苛烈だ。

もう一人の方は金髪に喪服。闇に紛れて輪郭が掴めない。まるで、金髪だけが浮いているようだ。


「それにしても会って早々に悪魔呼ばわりとはずいぶんなことだね」


 火蟻は聞こえないように呟いた。


「庭には用はないかな、だけどここの領主と君たちには話があるよ」


「悪魔の話には耳を貸さない。貸したところで私達が救われるわけではないからな」


 冷たい、突き放した声で、喪服が言う。

 ーーレント君達といい、この人達といい、僕の話を聞かない。人じゃないと思ってるのだろう。誰に言われたのか。おそらく女神か側近がそう吹き込んでいるのだろう。


「僕たちは別に戦いたいんじゃない」


「喋るな、悪魔。耳が腐るんだよ!」


 オレンジの方が手から炎を放つ。悪魔がああ、からの突然攻撃はレント君達と同じだなと火蟻は思う。彼らはまだ子どもだからいいにしても、大人の女性がそんな風なのは、品性に欠ける。


「君たちはいつもいつもそうやって我々の話を聞いてくれないね、女神の信徒」


 火蟻に迫った炎を地面から生えた壁が遮る。土でできた壁はレオナのような打撃には心許ないが、炎弾は簡単に弾くことができる。


「炎なんて危ないじゃないか。紋章を火傷すればそこで終わりだし何より再生が追い付かないってうわっ」


 喪服の日本刀による一閃を火蟻は壁で防ぐ。喪服の方はどうやら日輪にちりん人のようだ。とするとあの髪は染めているのだろう。

 ーー同郷……といえるのだろうか。

「あっちは手か。まぁ、教えてくれないと思うけど、君のはどこかな、わからないと反撃できないよ」


 火蟻は喪服の方に問いかけるが、


「貴方は馬鹿なのですか。弱点を教えるわけ無いでしょう」


 火蟻は間違えて紋章を傷つけ無いように言ってるのだが、彼らはそれに気づかない。


「いつも通りやるか」


 二人の周りを壁で囲い、箱のように塞ぐ。オレンジの方は捕まえたが、喪服の方には軽く避けられてしまった。


「ふざけているのか」


 爆発とともに、オレンジが現れる。オレンジの方は避ける必要がなかったのだろう。ならば喪服の方は避ける必要があったと見るべきだ。


「そう簡単にはいかないよね」


 まずは火蟻は喪服を捕まえることにした。だがいくら喪服を壁で囲もうとしても、いくら壁を出しても避けられる。そして


「遅すぎですね」

「んんあァ!」


 火蟻はとっさに手で日本刀を受けてしまったので、中指と薬指の間から縦に割けてしまった。

「右腕ではないようですね。サン、頭を燃やしてください」


「もちろんだ。ステラ」


「まずいね、炎は」


 火蟻の頭めがけて炎弾が飛んでくる。火蟻は壁で炎弾を防ぐが、自分で作ったその壁で二人の姿が見えなくなる。そして、


「しまっ」


 振り返った火蟻の首が飛ぶ。

 その瞬間火蟻の体が黒い炎に包まれる。頭はそのまま砂になって消えた。

 くちなわが一瞬見た宙を舞う火蟻の顔は怒りで歪み、


 片目が充血していた。


 ○○○


「何だこれ」


 サンにはわからない。黒い炎が何なのかを。だからとりあえず。


「燃やしてやる」


 炎弾を飛ばすが、黒い炎の中に吸い込まれる。


「何なんだこれは。そもそもこれは炎なのか? 」


 今度は炎弾を何発も何発も撃ってみるが本当に何も起こらない。というか近づいても熱さもない。

サンは紋章のない方の手でおそるおそる触ってみようとする。すると、


「やめた方がいい!」


 柄にもなくステラが叫ぶ。彼女が言うならやめよう。彼女の能力は直近未来視。直前の未来だけが見える。その目には何が写ったのか。


「この黒い炎、どうすれば……」


 ○○○


「なんてことをするんだ」


 黒い炎が晴れ、首が元に戻った火蟻が何事もなかったように二人の前に立つ。


「酷いじゃないか。首を落とすなんて。気分が悪いよ。でも、ステラさんの紋章は瞳だよね。さっきので見えた」


 火蟻はにっこり笑う。蛇の見た先程の形相は幻だったのか。


「私も火蟻さんの首を斧でやっちゃったんだけど、あれはいいの?」


 茂みのなかで蛇は呟いた。

 

「さぁ、反撃の時間だ」


「サン!」


 喪服のステラは叫ぶが、人の心配をしている場合じゃない。火蟻は心のなかで呟く。

 ーー周りをみてくださいよ、周りを。


「ステラさん、私の首を跳ねましたねーー叫喚・剣林処」


 地面から、大量の日本刀に模した陶器の刃が生まれ、ステラの首を狙う。ステラは必死の形相で刃を弾くが処理しきれない。


「あっ」


 ステラの首が宙を舞い、体は砂になって消える。火蟻の時とは逆だ。


「ステラああ!」


 地面に落ちたステラの頭を火蟻の壁で囲む。これで再生はできない。封印である。


「この悪魔がああ!」


 サンは右腕を掲げ、太陽のごとき巨大な火の玉を作り出す。

 ーーなってない。なってないよ。火というのは、


「こうやって使うんだよ」


 サンの体が突然燃え上がる。今度の炎は普通のものだ。壁を出せるんだから造作もない。だが、いつもはこんなことしない。捕まえるだけなら危なすぎる攻撃だし、殺すつもりなら……。


「衆合・火盆処」

「ぬあああ!」


 火蟻はサンの右腕のみを壁で囲うようにして切断する。

 そして、サンの体が灰になった。


 ○○○


「城の中は不利なんだけどな。出てきてはくれないか。あ、くちなわはまだ出てきちゃダメだよ」


 火蟻は茂みに呼び掛ける。


「もちろんです、あの聞きたいことがあるんですけど」


 茂みから可憐な声のみが聞こえる。姿が見えないのが……なんだろう。火蟻はまだ気づかない。


「なに? 」


「火蟻さん途中の黒い炎何ですか? 」


「あれは炎じゃない、と思うんだけど正直何なのかわからないから一応黒い炎って呼んでいる。よくわからないエネルギーを操ると空間に小さな穴が開いてあれが溢れてくるんだ。どこと繋がってるのかな。異界と繋がっていたら、ストーリーシリーズがなんか言ってくると思うけど」


「ストーリーシリーズ? 」


 蛇はそれも覚えていない。


「言ってなかったっけ」

「言ってなかったです」


「ストーリーシリーズっていうのは戦争の管理をする人達。新しい代表者候補をつくるときだけ出てくるの。彼らが戦争の管理をして喜んでるぞって教えてくれたのは元ストーリーシリーズの人。あの人は悪趣味だよ。自分の好きな噺にならないと癇癪を起こすから他のストーリーシリーズから首にされた……らしい」


「あともう二ついいですか」


「どうぞ」


「金髪の人って結局なんの能力ですか? 」

 喪服のことだろうと火蟻は考える。

 ーー何だったのだろう。目だから……動体視力とか? そんなわけないか。正義子は目の中にアイアンメイデン入ってるし、何がどうなっているのかは火蟻にも分からない。


「わかんない」


「わかんなくていいんですか? 」


 ーーあっ……そっちは別にわからなくてもいいけど……。


 サンとステラに関しては持ち帰っていなごに質問させればいいだけなのだからと火蟻はそれに関しては安心していた。でも、


「じゃあ私の能力は? 」


 まずい。火蟻の脳裏によぎるのは雷蜘蛛の電撃椅子の刑。けれども何だかんだで雷蜘蛛は火蟻に優しいからそんなことにはならないだろう。

逆に火蟻に優しいと言うよりも、黒蛾とはりねずみに厳しい。黒蛾と蝟に気をかけているーーというのが正しいだろう。


「ごめん、今度一緒に見つけよう」


 今回はもう遅い。前庭でこれだと、城内は蛇にとって危険だ。城の上に見えたローブからは禍々しい何かを感じた。


「はい! 」

「じゃあ行ってくるね」


「いってらっしゃい」


 蛇は手を振り、火蟻は城の扉を開く。






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