第五話:夢本社
そこはホワイトハウスを思わせるような豪華な建物がそびえ立っていた。
「エージェント天上昇入ります」
一馬と昇はその建物の一際広い部屋へと入っていった。
「よく来たな。まっておったぞ」
恰幅のよさそうな男が二人を迎える。
「このおっさん誰?」
「おっさんではありません。社長の円ゼルオ(えんぜるお)様です」
「ぷっ……変な名前」
一馬は思わずふきだしてしまった。
「円社長、日野一馬を連れてまいりました」
「うむ。ご苦労だった昇。一馬よ、これからお主はわがドリームカンパニーの日本担当エージェントとして働いてもらう」
「それはいいけど俺は昇みたいに瞬間移動みたいな事はできないぞ?」
「それなら大丈夫だ。あれは天使道具をつかっておる」
「天使道具?」
不思議がる一馬に昇が説明する。
「あれはこの天使界のお金で買える道具なのでそのうち一馬も使えると思います」
「俺そんな金持ってないけど?」
「ミッションをクリアしていけば報酬としてもらえますよ」
「ふうん……」
「昇よ、これから一馬に入社の説明をするからもう休んでいいぞ」
「はい。分かりました」
昇は一礼をしてその場を去る。
「まずはお主に渡しておくものがある」
円ゼルオはタウンページ二冊分くらいの箱を出す。
「円社長、それはなに?」
箱を開けると、一馬の目の前にスーツと腕時計が現れる。
「その名も! 天使道具スーツと腕時計だ!」
「そのまんまやん」
間髪いれずに一馬は突っ込んだ。
「う……うぬ。まぁスーツは普通のスーツだが時計はその辺の時計とは違うぞ」
「どのあたりが?」
「この時計があれば天使界お地上を簡単に行き来することが出来る」
「他には?」
「まぁいろいろあるが通信機能くらいだな」
さっそくスーツに袖を通し腕時計を左手につけた。
「サングラスと帽子はいらないのか?」
「あれは昇の趣味だ。気にするな」
「悪趣味だな」
悪態をつく一馬はふとあることに気がつく。
「でも何も道具もってない俺が誰かのところに願い叶えに行っても何も出来ないんじゃ?」
「その辺はこちらで願いを選んで一馬に回すから心配するな」
「要はただの手助けか」
一馬は口を尖らせながら言う。
「そう腐るな。さっそく一つ仕事をしてもらうんだからな」
円ゼルオは懐から一通の封筒を取り出す。
「その任務とは……これだ!」
まるで某熱血野球漫画かのような大げさに一馬に封筒を投げつけた。封筒を受け取るとその場で開けた。
「こ……これは!」
あえて一馬もダイナミックに驚いて見せた。この瞬間だけ劇画チックだった。