執事とベタ夫と謎の男と
『ようこそ。Dream-game(ドリームゲーム)へ』
紳士的な男性が言った。ジェントルさんと名づけよう。
『私はトルメンです。お見知りおきを。』
ありゃ。後ろのほうか。
『これより貴方様には、Dream-gameに参加していただきます。
Dream-gameは夢の世界で行われる、夢を叶えるための夢のようなゲームでございます。
それではDream-gameの内容を説明させていただきますね。
始めに、プレイ…』
トルメンは突然話始めました。俺の了承もなく。このやろー。
「ちょっとまて。説明を突然始めたけど、ゲームへの参加は強制なの?」
『はい。ここに来た時点で、貴方様の参加は決定事項です。』
「はい」
少し強い口調で言われたから、シュン。
『説明を続けさせていただきます。
まず、プレイヤーには全員【賞金首】となっていただきます。
そしてプレイヤーは自分の賞金を賭けて、プレイヤー同士、お互いに殺し合いをしていただきます。
相手を殺したあかつきには、相手の賞金額が自分のものとなります。
もちろん、プレイヤーの賞金額は個々に違い、プレイ方法によって随時変動します。
得とくした賞金はDream-game内で使用できますし、現実世界に持ち出し使用することも可能です。
【相手を殺してお金を稼ぐゲーム】それがDream-gameです。
世の中お金があれば何でもできます。そう、夢を叶えることだって容易なのです。
そして、このゲーム内ではプレイヤー全員に【超能力】が授けられます。
ただの殺し合いではなく、超能力を駆使して相手を殺す。それがこのゲームの醍醐味です。
超能力を使えるなんて夢のようではありませんか。
さらになんと、プレイヤーが授かることのできる【超能力】は、9999種類ございます。
残念ながら、これだけの種類があっても、プレイヤーが授かることのできる能力は【一人一つ】です。
それでは能力の選択に移行します。
1~9999の中から好きな数字をお選びください。』
俺の夢すごいな。自分の頭が心配。殺すとか病んでるのかな、俺。
でも、起床するまでは付き合ってやろう。自分の夢だし。
とりあえず、ここまでの説明を聞く限り、プレイヤーは一人ではないと思う。
プレイヤーが複数いる。
といったニュアンスの言葉をはっしていたからだ。
さて、能力選択か。かっこいいのが良いな。
まてよ、数字を選ぶって。数字ごとにどんな能力が貰えるか、わからないじゃないか。
なんかリスト的なものあるのかも。聞いてみよう。
「数字を選ぶって、どんな能力が貰えるかわからないじゃないですか。
なにかリストみたいなのは、見せていただけないのでしょうか?」
『ございません。
もらえる能力がわかってしまったら、プレイヤーが持っている能力に偏りができてしまうので、そういったものはございません。』
数字を選ぶのだって、偏りが出るんじゃないかとおもうのだけど…まぁいっか。
『それでは、1~9999の中から好きな数字をお選びください。』
「1072」
『1072ですか…ほほう。これは珍しい。
現在のDream-gameのプレイヤーは1億人を超えていますが、現在この能力をお持ちの方は非常に少ないですね。
なにか1072を選ばれた理由はあるのですか?私、個人として少し気になります。悩むことなく即答でしたし。』プレイヤー1億人超えって。多いですね、俺の夢さん。
そこで少ない能力を当てるのは自分の夢ってことだよね。それより質問には答えよう。
俺は聞かれたら答える性分なんです。
「名前が千夏だからです。千の夏。1000の夏。1000の72。1072。」
『あなたは素晴らしいお名前とともに、素晴らしい能力を得たわけですね。
しかしながら少し扱いづらい能力ではありますがね。』
「それで俺の素晴らしい能力は、いったいなんなんですか?」
素晴らしいと言われたから、さぞすごい能力なんだろうと期待。
『残念ながら、能力を教えることはできません。
【自分の能力は自分で知り、扱えるようにする】
これはゲームの中での一つのルールです。』
そんなルールいらないよ。焦らさないで。
『それでは、ゲームのルールを説明させていただきます。
とは言いましても、基本ルールは1つ。【塔には近づいてはならない】この1つだけでございます。
補足としまして、ゲーム内には【執行人】というのが存在しております。
【塔には近づいてはならない】というルールを破る、またはゲームに不適切なプレイをした場合、【執行人】が現れますので気をつけてプレイして下さい。
【執行人】の行うことは、お名前から察してください。
なお細かなルールなどは、プレイしながら覚えて言ってくださいね。
【Dream-game】の説明は以上です。
最後に貴方の賞金をお教えいたします。
1,000セスです。それではごゆっくり楽しみください。
言い忘れましたが、セスはこのゲーム内での通貨となっております。
それでは、貴方様の後ろにある扉をくぐったら、ゲームスタートです。』
という感じに流されるままにスタート直前まで来てしまったわけですが…。
なんか不思議なところはいくつもある。
例えば1,000セスって日本円でいくらとか。
まぁどうでもいいや。
きっとこの扉をくぐれば、目が覚めて変わらない朝が待っているだろうし。
そんな希望を持ちながら、僕は扉をくぐった…
扉をくぐったらそこは、酒場だった。
雪国ではない。酒場かよ。
全体的に木でできており、カウンターが並んでいる。
西部劇とかに出てきそうな酒場だった。
というか俺、未成年。こういうとこいていいのかな。
近頃そういうのうるさいし。まだ夢が終わらないのかと後ろを振り向くと自分がくぐったはずの扉はなかった。どこから来たの、俺。
夢だし扉位消えちゃうか。
そして酒場のほう、所謂正面を見ようと振り向いた瞬間。
たくさんの人が押し寄せてきた。どどどー。
『君、初めてだよね?お姉さんと一緒に来ない?』
『俺と一緒に冒険しようぜ!』
『新メンバー募集してます!』
などと激しい勧誘の嵐。
というか、なにこれ?部活勧誘?
どちらにしろ、面倒だし人ごみが嫌い。
逃げる
を選択した。
それに酒場でアルコール臭い。
人嫌い、お酒嫌い。
どこに逃げようかと左を見ると、酒場の出入り口っぽいものを発見。
とりあえずあそこに行こうか。と、人ごみをかいくぐりながら出入り口に到達。
さて出よう。出てみると全体的に砂っぽい場所で木造建築な建物がずらり。
町か?
あんまり栄えてなさそう。日は出ていて、なんと言うか西部劇に…きっと俺は西部劇の世界に来たんだね。
そんなことを思っていると、目の前の建物から身長2m位ありそうなそれなりに巨漢な男が、見るからに下っ端ぽい男を数人連れて出てきた。
あぁ絡まれる。本能が察した、ドラちゃんの、のびナンチャラ君が良くある展開だよ、きっと。
逃げなきゃなー。
目があった。
どうしようかなー。
………………。
絡まれた!
「お前、新規のプレイヤーか?俺が誰だかわかってんだろうな?」
知らないよ。
というか、ほぼ決まり文句にジャイアント先生もどきの声で絡んできたよ。
べたー。
周りのスネちゃまもどきもなんか言ってるし、めんどうだな。
逃げたら逃げたでなにかけちつけられるだろうしな。どうしたものか。
「おい!聞いてんのか?コラッ!この村は俺が仕切ってんだよ!
初見は10万セス払えって言ってんだよ!」
言ってないし…。
へぇここ村なんだ。
というか、ここまでベタだとつまらないよね。
こいつはきっとベタ夫って名前。
「さっきから黙っていやがって、こいつ殺す!」
はぁ殺すって…おい!
なんかベタ夫の手から炎が出てきたぞ?
これ超能力?
しかも炎ってさらにベタ…
と思っていると目の前を遮るように人が立った。
「ちょい、ちょい、ちょい。ちょいとまってねホニーさん。
こいつさ俺の連れなんよ。
うー、まだこっちにきて日が浅いからさ、ホニーさんの事知らんのよね。
俺がさ。
しっかりっ!
みっちりっ!
教育してやるから今日は俺の10万で勘弁な、な!?」
なにこいつ?変な男出てきたし。知り合いだと思われたくないなー。
「はぁ…でもただ、むぐ」
「お前は黙ってろ!
勝手に一人でうろつくからこんなことになるんだよ。めっ!」
めっ!って。
黙ってよう、怒られたし。
ベタ夫さん、本名ホニーなんだ。
「つうわけでさ、ホニーさん勘弁な!」
するとホニーさんは手の炎を消した。
変な男の必死な説得におおじて10万セスだかをもらって立ち去って言った。
「別の店に行って、飲もうぜ!」
金さえあれば何でも良いんだな、この人。
変な男は俺の横にいる。
髪の毛はボサボサの寝癖のままみたいな感じ、黒髪、黒縁のメガネをかけている。
黒色のしわくちゃになったロングコートを着ており黒色のマフラーで口元が見え隠れしている。身長は180位かなと観察していると、話しかけてきた。
「危なかったねキミ!危うくプレイ初日で死ぬとこだったよ。
何もわからないまま死ぬのは嫌だろう?
あいつはさ、一週間位前にこの村に来て…。
なんと、大暴れ!
賞金が100万だかなんだか知らないけど、迷惑なもんだな。」
「あなた誰?」
俺の切実な疑問だから。話の途中で聞いてみた。
悪かったかな。
「ごめん、ごめん。名乗らなきゃね。俺は…」
『ふざけんじゃねーぞ!!そこをどけっていてるんだ!このクソ餓鬼!!』
遠くのほうからベタ夫さんの声が響いてきた。テンカイハヤー。
「騒がしいやつだなー少し黙れないのかな、あの人…」
謎の男も何か言っている。それにしてもさっきより、ベタ夫さんの声大きい気がする。
ボルテージがさっきよりUPしてる感じかな…。
と、目を凝らすと野次馬だらけだった。ヤジウマイッパイダー。
「気になるのかい?行ってみる?」
「いや、行かなくて良いですよ。」
「謙遜なんかせずに行こう。欲望には忠実にね。」
あんたが行きたいだけだろ。
こうしてまた誰かを余計なおせっかいで助けるのかな。別に俺も助けて欲しかったわけじゃないし。
そんなことを考えていると手を引かれた。着いて来いってことかな。
面倒だな。人だかりに混ざって中を見てみると中央には、ベタ夫さんと俺より少し年下位の少年が対峙していた。
「この餓鬼!舐めてると痛い目みるぞ!」
「僕はお腹が減ってるだけだよ。ご飯が食べたいの。だから通して。」
ベタ夫さん大人になれよ。
少年の方は青色のポロシャツに、縦ラインが入った少し大きめのジャージを着ていて、身長は150cmほど色白で華奢な体つき。栄養取ってるかい?
「10万セス払えば通すって言ってんだよ!」
「そんな大金は持ってないよ。
あってもそれは食費だし。
あげないよ。」
「いいかんげんにしろぉぉ!」
ベタ夫さんが少年の胸倉を掴んだ。
「ねぇあんたいくら?100万か…ちょうどいい食費だね。」
少年はいつまでたっても食事のことしか口にしないな。
そんなにお腹減ってるのかな。
痩せてるし、きっと過酷な人生を送ってるんだよ、うんうん。そんなことを考えていると、突然隣にいた謎の男が言った。
「これから起きることは怖いかもしれないけど、この世界で生きてくには必要なことだから、よく見ておくんだよ。」
よくわからなかったけど、今までとは少し違いまじめな口調で言われたからちゃんと見ておくことにした。
いまだに大声を張っているベタ夫さん。元気だな。
「早く払えって言ってんだよ!じゃないと殺…」
「面倒だな。死んじゃえ。」
少年が今までにない様な冷徹な声で、そう言った次の瞬間…
激しく真っ赤な血しぶきがあがる。胸倉を掴んでいたベタ夫さんの背中から…そして全身の力が抜け倒れていく。
ベタ夫さんが倒れた。
「なんだつまんない。」「あぁもっと粘れよ。」「素直に従ってたの馬鹿みたい…」
野次馬たちが一斉にはけていく。
というか、ベタ夫さん死んでない?あんなに血が出てるのに騒がないし…。
「ねぇそこのお兄さん、換金所ってどこにあるか知ってる?」
えっ?俺に聞いた?
「えっ…あぁ~とその…」
「あぁ、それはですね。この大通りを真っ直ぐ、そう真っ直ぐ行った突き当りがそうですねぇ。」
となりに居た謎の男が代わり答えてくれた。意外と役に立つなこの人。
というかなんで俺に聞いたんだろう。と周りを見ると野次馬はあっという間にいなくなっていた。
ふーん、俺ぐらいしかいなかったのか。
少年が独り言をぶつぶつとなにかつぶやいていた。
「この人でかいな。重そう。
お腹すいちゃうよ。お腹減ったな。
頭だけなら軽いかな。どうしよう…。
うん。そうしよう。」
そんなことを言いながら、少年はベタ夫さんの首を切った。
というか取った?切った瞬間がわからない。首が切れてる。生首…
「おうぇっ」俺は吐いた。
「ついでなんだけど、この村で一番おいしいご飯くれるとこどこ?」
「そうですねぇ。一番かはわかりませんが、換金所の隣の飲み屋なんかどうでしょうか?あそこは安くて量が多い、その割には美味しいですよ。」
「そうかーそうだね、そこにするよ!質より量だよ。」
少年と謎の男は軽い談笑をしてから、少年はベタ夫さん生首片手にルンルンと歩いていった。
その後謎の男は俺に話しかけてきた。
「君、大丈夫?うわぁ、吐いてるし。生首初めて?
しょうがないね…大丈夫?ホント。」
「大丈夫です。ちょっと気持ち悪かっただけです。水あります?」
「水?あるよ。ちょっと待っててね…はい、水。」
と、謎の男は黒いロングコートの中から、水の入ったペットボトルを取り出し、俺に手渡した。
大丈夫か、これ。
「大丈夫、菌は入ってないから。」
「ありがとう、ございます。」
菌以外は入っているのか…。
ペットボトルの蓋を開け、口の中を濯いで路肩に吐き出す。
「スッキリしたかい?」
「はい。多少は…というか、あれらはなんなんですか?」
「生首のこと?」
「それだけではないんですけど…聞きたいことが沢山ありまして。なんというか…」
「まぁとりあえず落ち着ける場所に移動しようか。
近くに僕たちのキャンプがあるからそこに行くかい?」
「イスがあればどこでもいいです。」
「じゃあ決定だね。」
この人は胡散臭いけど、悪い人ではなさそう。
謎の男に連れられて、西部劇っぽい村を出たら周りは砂漠だった。
レキ砂漠だね、これは。
それから1分もしないうちに、家族でキャンプには少し大きめ位のテントが立っていた。
全体的に薄汚れていて、開いた穴を塞いだ跡も沢山あった。
「ささっ。ここが僕たちのキャンプ。ゆっくりしていってね」
と中に通されて中に入ると、外見からは想像できないほどに中は広くて、綺麗。
声も出なかった、外見でモノを判断するのはやめよう。
驚きながらも周りを見渡してみると、不思議なことに気づく。
テントは布でできていたのに、壁は全部岩。
それにちゃんと見ていなかったけれどもテントのサイズからしたらありえない広さだった。
そこからリビング?少し広めの部屋に通された。
「誰だい?その子供は。」
突然後ろから、声がした。少しドスの聞いた声。
振り向くとグラマーな女性が立っていた。
「いやはや、少し興味深い少年だったから連れてきたわけよ。
ヤマネはお茶を用意してあげて、君はとりあえずそこに座って。」
ヤマネと呼ばれたグラマーな女性はめんどくさそうに奥のほうへ歩いて行った。
目の前に大きなソファがあったのでそこに座った。
うん。快適だ。謎の男も正面のソファに座った。
「ふぅ、落ち着いたかい?」
「少し…」
「落ち着けっていうほうが無理あるかな。大丈夫?」
「ご心配なさらずに大丈夫です。それよりも色々と聞きたいことが…えっと、その、この…あれは。」
質問がありすぎて、頭の中でこんがらがって言葉にならなかった。
それを察したのか謎の男は優しく話しかけてくれた。
「君はせかっちだね。心配しないでも逃げないしちゃんと答えるよ。落ち着いて。」
「すいません。まだ頭の中が混乱していて…」
我ながら恥ずかしい。個人的には比較的冷静なほうだと思っていたが、いろいろありすぎるとそうもいかなくなると教訓。
質問には答えてくれるようだから、少し間をあけ一息ついて質問した。
「とりあず、ここはどこですか?」
夢だと思いつつもここまでリアルだと、夢だとも思えなくなってきた。
きっと夢なら夢と答えてくれるだろう。
すると、さっきのグラマーな女性がお茶を持ってきた。
コーヒーを持ってきた。茶じゃない。あれ?茶かな?
「お茶って言ったのにコーヒー?」
「コーヒーがそこにあったから、コーヒー。文句を言うな。」
やれやれと謎の男がコーヒーを飲んで、一息ついて言った。
「ここは夢の中にあるドリームランド。Dream-game(ドリームゲーム)の世界だよ。」