ようこそ Dream gameへ
真っ暗だ。何もない。
上下も左右もわからない。
自分の手さえ見ることができないくらい暗い。
真っ暗が一瞬で真っ白になる。
きっと何かが光ったのだろう、と思う。
徐々に暗くなっていく。
また真っ暗。
と、思いきや
前方に赤い扉
とても大きな真っ赤な扉
どこかで見たことある様な造りの扉…
枕もとの目覚まし時計がなる。「俺、まだ生きてるよ…」と、つぶやく。
今日もまた同じ夢を見た。最近こればっかり。
ここ1ヶ月くらい。
隣で朝から元気に鳴り続ける時計を止める、窓の外では小鳥が、ぴーちくぱーちく鳴いている。
俺の部屋は2階で1階ではバタバタ誰かが走ってる、『いってきまーす!!』妹が小学校へ登校するのだろう、まてよ中学校?
どっちでもいいと思いながら、のそのそとベットから降りる。
時計も鳥も妹も朝から元気だな。
10月1日。暑くもなく寒くもなく、いい気候で快適。
床に置いておいたジャージに着替える。
決して落ちていたんじゃないよ。
高校は制服があるが服装自由と良心的だからジャージ。自分の部屋にある鏡の前に立つ。
「俺の名前は河原千夏。ピチピチのJBよ!」
と言ってみる。なにやってんだか、俺。
JKが女子高校生なら…JBなら女子ボーイじゃないかと自虐。
千夏とどことなく女性らしい名前だが、男です。
絶賛高校をエンジョイしてるぜ!とは言えた生活を送っていません。
私立高校に通ってるものの、何かしらのスポーツが得意なわけでもなく、勉強も平均点プラス5点くらいの成績。学校に金を払うだけの存在。
容姿は普通、部活に入ってない上に、2年から今の高校に編入した俺には、友達もいない。てかいらない。
そんな俺にとっての高校は、
億劫
そんな感じ。惰性で学校へ行き、惰性で授業を受ける。
とは言っても最近は学校へ行ってない。
さぼっているんです!
少し胸を張ってみる。自慢にならないね。
今日で2週間かな…
高校には電車で通っていた。
前住んでいた場所と違い、電車は1時間に一回来るかこないかの田舎。
一度電車に乗り遅れたのがきっかけで学校には行かなくなった。
だって学校へ行くより、さぼったほうが有意義なんだもん!
でも両親には心配をかけたくないので毎朝、「いってきます。」とあたかも学校へ行ってる風を装う。
1階へ行く。
俺の弁当は机の上においてあり、その横では祖父と祖母が、日本引きこもり協会のニュースを見ながら朝食を食べている。
テレビの中で、
『遊夢病患者がとうとう全世界で1億を越えました。また認知されていない患者もいる…』とかおっさんが言ってる。
遊夢病、普通に生活しているものの、精神だけどこかに行ってしまったかのようになってしまう病気らしい。
世界各地で発症しているそうで、2年前くらいに最初の患者が出て以来増え続けてる。
基本的に食欲・性欲・睡眠欲のみになってしまうだけが主な行動原理になるのだとかなんだとか…。
まだ何もわかってない病気で研究してるもののどうしようもないみたい。
「まぁ俺には関係ないけどね。」と軽く聞き流す。
朝ごはんを食べない人な俺だから、歯磨きは朝食前?後?なんて質問は通じない。
歯を磨いて弁当をカバンにしまい。
「行ってきます」と外へ出る。
天候は快晴。雲がないね。周りは山ばっか。
前住んでたとこも山ばっか。海が恋しいぜ。
自転車にまたがり、駅方向へ向かう。
5分くらいして、駅に到着。
そのまま通り過ぎる。今日もサボりますよ学校。
また5分。大きな公園に着く。
その公園はとても広くて新しい。公衆トイレも綺麗だし、自動販売機もある。
そんな公園の屋根が付いてる休憩所が最近のマイブーム。
雨風しのげるし紫外線対策もバッチリ。机もあって快適だぜ。
強いて言うなら椅子が硬くてお尻が痛い。
まだ少し眠いからもう一眠りしますかと、座ったまま机に伏して寝る。
右側のほっぺをつねられて起床。
「おはよう!かみさま!」
またこいつか。ここで学校をサボり始めてから3日くらいのとき、こいつに出会った。
公園の隣は小学校でお昼の時間になるといつも来る。
あぁもう昼か、と同時に思う。この小学生。たぶん2年生くらい。
髪の毛は短く切ってあるけど、たぶん女の子。
名前は…何だっけ?覚えてない。
どうも人の名前は覚えられない。もしかしたら、名前聞いてないかも。
「ねぇねぇ、かみさま!」と小学生が言う。
「なにかな?小学生。」
「きょうのきゅうしょくは、まぜごはんだったんだよ」
「美味しかった?」まぜごはんってなに?聞かないけど。
「かたいしあじがなくてまずかった」わがままな小学生だな。
「ねぇねぇかみさま?」「なんだい」と脈絡のない話を続ける。
この小学生が俺のことを神様と呼ぶには理由がある。
始めてあった日冗談で、『私は神様なんだよ』といってから、信じ続けているのです。
お子様は純粋なんですね。
それ以来、毎日ここに来てはたわいのない話をして小学生は帰っていく。
ちなみにこの小学生は友達がいないそうだ。
それはさておきお腹が減ったので、
「神様もお腹が減るんだ、ご飯を食べていい?」
「いいよー」神様はおなか減らないんだよ。
なんて言われなくて良かった。
弁当をあけて昼食開始。
「かみさまのべんとうはおいしいね!」小学生は爛々と言う。
「どういたしまして」俺のお腹はペッチャンコだよ。
『これもらっていい、かみさま?』『いいよ』なんて言ってるうちにほとんど食べられてしまった。
すると学校のチャイムが聞こえてくる。
「もどらなきゃ!じゃあねかみさま!またあした!」と走っていく。
食うだけ食って、食い逃げか!キーーー!なんて言わない。神様だもの。
まぁ近くのコンビにまで弁当買いに行けばいいか。と思う。
それに妹と違って可愛げがある。
すばらしいことだ。ロリコンじゃなくってよ。
こんな生産性のない昼時だけど。
学校に行くよりこっちのほうが有意義だし、密かにこの小学生との会話は生きがいである。
弁当を買うためにお財布を確認。
お金がありません。
貧乏高校生には昼食を買うお金もありませんでした。
我慢するにも育ち盛りだから無理。でもお金がない。
空腹を耐えるためにはどうするべきか…
寝ることにした。動かなくてすむから、良い案だと思う。
お腹が減ってるのに寝れるかしらとか思っていたけど案外寝れる。
起きる。
あの夢見なかったなと思う。
周りは赤く染まり、トンボも飛んでいる。
家に帰るかなと思うと、机の反対側のイスに人が座っていた。
「こんにちは。千夏君。」
突然下の名前で挨拶された。
「こんちくわ」知らない人は適当に流そう、というかなんで俺の名前を…
「君はちくわが好きなのかい?それともお腹が減りすぎて言動がおかしくなった?」
「ちくわは嫌いです。後かまぼこも。お腹はペッシャンコですけどね、惰眠を貪ったので気分は良いですよ」
この人は何なんだ?男性?まだ若いな、たぶん。フードかぶっててわかりにくい。
なんで俺が腹減ってるのを知っている。全部見てた?
この人は危険。
関わってはいけない気がする。
逃げよう。
本能的に思った。
「練り物が嫌いなのかな?君は、はんぺんも嫌いだろう?」
「よくわかりましたね。だからおでんは嫌いなんです。練り物のオンパレード。」
年齢はたぶん20代、所持してるものは特にない。
自転車もない。
靴は走りにくそうなブーツ。
服装はスーツにパーカー,謎。
身長は175くらいかな。痩せ型。
「君はなかなか面白いね。どうだい…」
俺は走りだした。
こちらはスニーカーでジャージ。
短距離走には自信がある。
自転車には鍵をかけてないからすぐ動く。
逃げれる。
自転車に向かって全速力。
まだそいつは、椅子に座ってた。
余裕。
前を向く。
そいつがいた。
「人の話は最後まで聞こうね。君は面白い。ふざけたことを言いながら人をちゃんと見てる。」
なんなんだこいつ。
突然前に現れたぞ。
座ってたのに。
突然前に、前に。
「たぶん一般人とかただの変質者なら逃げれたね。うん。」
「あなたは一般人とか変質者じゃないんですね?」
どうする。
これはまずい。
こいつは普通じゃない。
自覚してる変人が一番たちが悪いと父が言っていた気がする。
こいつはどうやって移動した。
瞬間的に移動。
瞬間移動?
ありえない。
落ち着け。
考えろ。
思考をやめるな。
「うん。そうだよ。名乗るとしたら【導く者】といったところかな。」
「導く者ですか、なにを指導してくれるんですか?武術はやめてもらいたいんですけど」
ふざけてる。
こいつはヤバイ。
導くとか言うヤツはろくな事教えない。
教師も含めて。
「僕はゲームへ参加資格のある人をゲームへ導くんだ。指導の導きじゃない」
「ゲーム?どんなゲームへ導いてくれるんですかね?新手の押し売り?残念ですがスーファミしかもってません。すいません。ハードもゲームもタダでいただけるなら、大歓迎ですけどね。なにせ昼食も買えない、ビンボー学生ですから」
「じゃあ君にはいいこと尽くめのゲームだね。ソフトもハードも君が持ってるし上手にプレイすればお金を稼げる。ただ僕は君へゲームの参加方法を教えるだけ」
「すばらしいゲームですね。ぜひとも教えていただきたい」
大丈夫だと思った。
これさえ聞けば帰れる。
案外こいつは馬鹿だった。と思った
「簡単だよ。赤い大きな扉の前で『開け、異界の扉。我は夢を旅するものなり』っていうだけ」
「とっても簡単ですね。赤い大きな扉を見かけたらやってみようとおもいます」
「そっかじゃーね。君の参加を楽しみにしているよ。またどっかで会いたいな」
「貴方には二度と会いたくあり…」
いなかった、言葉をすべて言い切る前に消えた。
目の前から消えた。
ゲームもハードも持ってる?わけわかんね。
『開け、異界の扉。我は夢を旅するものなり』アホか。
赤い大きな扉?あの夢の?見ても言わないようにしよう。
ってかなに考えてんだろう。
寝すぎで、頭が狂ったのかもと思った。
きっと疲れていると決め付け。
家へと帰っていく。
家に着くのに15分かかった。
足がおもかったのよ。
昼食も思うように食べていないので俺は晩御飯を待ち望んでいた。
疲れたし、今日は晩御飯食べて、早く寝て、明日は学校に行こう。
あそこにいると、またあいつに会ってしまう気がしたからだ。
小学生に会えないのは残念だけど。
あいつに会うよりはマシ。
そして待望の晩御飯は、おでんだった。
本当におでんは嫌い。
それでも大根とかタマゴなど食べれるものは食べて、風呂に入りベットに入った。
あいつとの遭遇は想像以上に疲れたようで。
すぐ眠りについた。
そしてまた、同じ夢を見た。
真っ暗だ。何もない。
上下も左右もわからない。
自分の手さえ見ることができないくらい暗い。
真っ暗が一瞬で真っ白になる。
きっと何かが光ったのだろう、と思う。
徐々に暗くなっていく。
また真っ暗。
と、思いきや
前方に赤い扉
とても大きな真っ赤な扉
どこかで見たことある様な造りの扉…
俺は言ってしまった、言うつもりはなかったのに。
『開け、異界の扉。我は夢を旅するものなり』
扉が開いた。俺は吸い込まれていく。
また真っ暗になった。
気がつくと部屋にいた。
床に寝そべっていた。
真っ赤な部屋に扉が1つ。
今度は白色。
扉の隣には見た目がとても紳士的な人が立っていた。
年齢は60前後ではないだろうか。
白髪混じりの髪の毛をオールバックにしてあり、金縁のメガネをかけている。
燕尾服を着ており、まるで執事のようだった。
俺は起き上がる。
するとその紳士的な人は言った。
『ようこそ。Dream gameへ』