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自宅にて
家にたどり着いた自分が、最初に行ったのは家族の確認だった。
父、母、ともに無事だった。
だが、安心するのは、まだ早い。
もしかしたら、並行世界の自分だけでなく、並行世界の母や父が攻撃を加えてくる可能性も否定できない。家の場所が同じなら、家でエンカウントする可能性は十分にある。
怯えながら、自室に戻りありったけの文房具を集め、服のいたるところに仕込んだ。
自分が消えてなくなることへの恐怖。
自分が知っている人物が、全くの別人へと変わっていく例えようの無い恐れ。
「もし、自分の知っている人間がすべて融合をしてしまい、全くの別人に代わってしまったら?」
そう考えるだけで、足がすくんだ。
友人も、学校で顔を合わせるクラスメートも、兄弟も、親も、親戚の人も、知り合いの人たちも、全部中身が変わってしまう。
見た目は同じでも、中身が別人の世界で暮らすなど、人間不信になり気が狂いそうだ。
だから、決意した。
誰も入れ替わらせない。
”融合”させない。
震える手で、カッターナイフを握りベッドの上で眠れぬ夜を過ごした。