開始
まあ、初めて見る事態に混乱しているのは、大体いつものパターン。
うーん。少し現実逃避ぎみだな…。
だが、時間的にも急がないと並行世界に飲み込まれるのは必然。
基本、俺って平等主義だから、どの世界の彼にもチャンスを与えてやらないと。
さて、生き残るのはこの世界の彼か、また、別の世界の彼か。
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「並行世界の君を倒さないと、君も浩二君みたいになるよ。」
天使に似た格好の変人がそう言った。
「馬鹿な。」
その瞬間、俺は嫌な予感がしたが、認めたくなかった。
ただの悪ふざけだと思った。
だが、昼下がりの町の風景が二重に見えた。
少しだけ違う、風景がいつもの風景に重なって見えた。
直感的に理解する。
これは、並行世界と俺たちの世界が重なって見えているのだと。
「来たよ、もう一人の君だ。君自身でありたければ、分かるよね。」
あぁ、そうだ。
融合する相手がいなければ、俺は融合を免れる。
排除、それか、こいつを食ってしまえばいい。
目の前にいる自分も同じことを考えているのか、不吉な笑みを浮かべて、ポケットに手を入れていた。