終わりは始まり
自然法則…それは、この世界に存在する、あらゆる事象に存在する世界そのものを定義する『法』。
「…くそっ、もう弾が無い!」
「あきらめるな!もう少し耐えれば本体からの援軍が来る…それまで持ちこたえろ!」
「むちゃ言うなよ…こっちがどんだけ戦ってるんだと……う、うわああああぁぁぁぁ!!!」
「お、おい!どうしたんだ!!」
火をつければ物が燃える、寿命を迎えれば生き物は死ぬ、水は百度になれば沸騰する…これら様々な事象は、全て自然法則によって定められていることである。
「こいつら…銃弾が通らない…!」
「ぎゃああああ!火が!こいつら、火を吹いて……」
「ぐ…この息苦しさ…毒ガス…か!?」
――――――――だが、もしも。もしもこの自然法則を無視することができたら、そうしたら生物はどんなことができるのであろうか。
「なんなんだよ、コレ…常識が、通用しねぇ…」
生物は、自然法則…即ち、"常識"を無視した行動をとることができるようになるだろう……。
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西暦2043年。自然法則を無視した、銃弾でも死なず、普通の生き物にはできない行動(火を吹く、電波を妨害する、翼無しで空を飛ぶ…など)をする生き物「アンノウン」が地球上の各地に出現しだした。
人類にとっての常識「自然法則」が通用しない相手に対して既存の攻撃手段は役に立たず、人類は窮地に立たされた。だが、そこで人類に一条の希望の光が現れた。
アンノウンと同じく、自然法則の一部を無視することができる異能の能力を持った人間達が現れたのだ。彼らの操る能力…自然法則を無視することで成り立つ「超能力」は、アンノウンに対して有効な攻撃であり、彼らは一躍地球を救ったヒーローになった。
だが、その後彼らに向けられた人々の視線はとても冷たかった。
それは、ある意味当然だったかもしれない。なぜなら、彼らが持つ能力…自然法則を無視できるという能力は、敵であるアンノウンのそれと同じものであったからだ………
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西暦2052年8月、日本。
アンノウン初出現から丸9年と3ヶ月が経過していた。数年前までは連日アンノウンが出現していたが、今やその勢いは影を潜め、一ヶ月間アンノウンの目撃例無しなんていうことも増えた。
そのため、日本政府はあるプロジェクトを実行した。
『違法能力者隔離政策』
違法能力者…自然法則を守らないということからこう呼ばれる、いわゆる超能力者達を、ある地区に閉じ込めてしまおうという計画。それが、違法能力者隔離政策だ。当初政府は、世論をうけてこの政策をとったとしていたが、この政策には、この世界そのものの存亡に関わる"裏"が存在していた……。