表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

第十一話 オガサワラシティ

一箇所古いままだったところがあるので、修正しました。

スカートをボディチェック⇒体中をボディチェック

第十一話 オガサワラシティ


side マイマイ


「皆準備はいい?」


フードを被ったマイマイが、メイドとプレートアーマーで全身を覆った騎士と、赤い鎧を着たイケメン騎士を前に言う。


「準備万端です」


早速答えたメイドは、人族に化けたカグヤ。


「姫!同じく準備万端でござる!!」


続いて、全身に青いプレートアーマーを着込んだ人物が答える。

中にどのような人物が入っているか見た目ではまったく分からないが、特徴ある喋り方が、中の人がスケサンであることをはっきりと示していた。

スケサンは、姿を隠すために『レグリアンアーマー』を着込んでいた。

このレグリアンアーマーは精霊を秘術によって鎧に変えたと言われているもので、非常に高価であるが、まるで鎧を着ていないかのごとく軽いのが特長だった。

そのため、比較的軽装の鎧を着込むことが多いスケサンに最適だったのである。


「違うよ、姫じゃなくてお嬢様だよ」


いつも通り喋ったスケサンに、マイマイは自分をお嬢様と呼んでと訂正する。

実はこれは先程全員で決めた新しい呼び名だった。

街中で姫という名で呼ばれれば、嫌でも目立ってしまうため、ちょっとしたお金持ちのお嬢様御一行ということにしようとしたのである。


辺境にある田舎町の、商人の一人娘、マイマイ。


その御付の超美人メイド、カグヤ。


家で雇っている東洋の一流騎士、スケサン。


スケサンの部下で、子供の頃にドラゴンに育てられた影響で喋ることが出来ない沈黙のイケメン騎士、ファイ一郎。


という設定である。

因みに、カクサンはいない事になっている。


「間違えたでござる…」


「キシャー」


マイマイのフードの隙間から触手だけを出したカクサンがスケサンを笑う。

微笑ましい光景だが、あえてマイマイは心を鬼にしてカクサンに指摘した。


「カクサン、めっ!!だよ!

 カクサンは喋っちゃ駄目だからね、喋れないことになっているファイ一郎を見習って我慢してね」


「……」


ファイ一郎が、無言で頷く。

ただ頷いているだけなのだが、イケメンのためか妙に絵になっていた。


「キシャー…」


それを見たカクサンが、敗北感からか、うな垂れた。

その姿を見て、ちょっと可哀想だったかなとマイマイは思うが、マイマイの指摘は必要なことだった。

カクサンがマイマイのフードから出てきてしまったら、人族の旅人のふりをして、地母神教会の目を掻い潜ろうとしている全員の努力が無駄になってしまうからである。


「それじゃ、色々と迷惑かけたね」


心理的な面でも、出発の準備が整ったことを確認したマイマイは、見送りに来てくれたフェブニアに声をかけた。


「いえ、迷惑だなんて、そんなことは…」


「細かい手続きはまた今度になるけど、とにかくうちの配下になったんだから、何か困ったことがあったら遠慮なく言ってね」


「ありがとうございます」


フェブニアの態度は、すっかりマイマイの配下になっていた。


「また来るかもしれないから、その時もよろしくね」


「ええ、今度はごゆるりと滞在されることを願っております」


「ありがとう、それじゃオガサワラシティへ出発!!!」


彼女達を自分の配下に完全に収めるにはいくつかの手続きがまだ残っていたが、情報収集という大任があるマイマイは、とりあえずそのことを置いて出発するのだった。


----------


side フェブニア


「女王様、山に降りて来たあの巨大ドラゴンは魔王ではなく、小さい女の子の家臣だって話、本当なんですか?」


フェブニアの後ろにある木陰から出てきた、小さな花を王冠のように頭に着けたアルラウネが、困惑したような表情で聞く。

それを見たフェブニアは、その疑問はもっともだと思った。

彼女は、フェブニアの子の一人。

つまり王女の一人で、この場所から峰を一つ挟んだ地域の統治を任せていたたため到着が遅れて、マイマイが巨大ドラゴンに命令したりしている所を目の当たりにしていなかったからだ。


「そうよ、家臣どころか、完全にペット扱いしていたわ」


「ペット扱い…信じられない、むしろ監禁してペットにしたくなるような可愛い女の子なのに…」


王女の趣味について、後ほど家族会議を開かなくてはいけないとフェブニアは思うが、ペット扱いしたことが信じられないという発言には同意する。


「あのドラゴン、大きさから考えると、軽く数千年は生きているはず。

 だとすれば、力もプライドも想像を絶するほど強いはずよ。

 それをペット扱いだなんて、あの時は私も正直、目を疑ったわ」


ワイバーン等の小型種を除いたドラゴンは、誇り高い種族であり、力を認めた相手にしか従わないと言われていた。

たとえ何か代償を払って頼んだとしても、ペットのように振舞うといった屈辱的な行動を取ることなどありえないのである。

つまり、マイマイのドラゴンをペット扱いする行動は『自分の力によってあのドラゴンを認めさせた』ということを暗に示していた。


「なんでも、破壊神と呼ばれ、古の魔王の血筋でありながら、サラディス魔王を倒し、千年前には三界で最も強大な勢力だったらしいわよ」


「それは聞きました。

 ですが、どうしてそんな冗談みたいな話を信じたんですか!?

 そりゃ、私達に後ろ盾が必要だってことは分かりますけど、そんな重い決断が出来るほど…」


アルラウネの王国は、近年何かと攻撃的になった周囲の人族達とトラブルを抱えており、早急に強力な後ろ盾が必要な状況だった。

そのため、フェブニアはマイマイの言っていることを信じるというステップを越えた、マイマイの配下に入るという決断をしていた。


「信じられない?」


「いや、あのドラゴンならそれもありえるかなーと思いますし、そのドラゴンが言うこと聞いていたって話が本当なら、それはそれでありえるかなって思うけど、魔王を倒したとか、千年前に三界の半分を支配したと言われても、感覚的にその…」


言い辛そうな表情で王女は言う。

それも仕方の無いことだとフェブニアは思った。

確かに、マイマイはシルクのような白く綺麗な肌を持った、目が冴える様な美少女であり、服装、アクセサリー、ほのかに香る香水の匂い等、身に着けているもの全てが高貴な人物であることを無言で示していた。

しかし、それらの特徴は一般的な魔王のイメージとかけ離れており、更に王女から見れば口頭での説明という状況証拠だけで、マイマイの配下に入るという重大な決断をしたように見えるからだ。

そしてフェブニア自身、マイマイのドラゴンをペット扱いした行動に度肝を抜かれ、説明の通り魔王クラスで間違いないとは思ったものの、マイマイの従者であるカグヤからあるものを見せられるまで、配下に入るという決断については迷っていたからだった。


「言葉で聞いても信じられないというのなら、これを見てみたら」


フェブニアは、フワフワと宙に浮く小さな水晶を取り出した。

これは、マイマイの従者であるカグヤよりフェブニアが譲り受けたものであり、フェブニアがマイマイの配下に入ることを最終的に決定付けたものだった。


「女王様、これは?」


「これは、あなた達と別れて、従者と二人だけになった時に渡されたものよ。

 そしてこれを渡した従者は、こう言ったわ…


『…このように、マイマイ姫様は三界で一大勢力を築いた、偉大な神なのです。

 ですが、言葉ではその偉大さの全てを伝えることはできません。

 そこで、マイマイ姫様が自らの偉大さを世に知らしめるために造られた『歴史的記録』を使ってあなたに偉大さを教えることにしましょう。

 これを見ればあなたは、自分が未だにマイマイ姫様に臣下の礼を取っていないことを後悔し、恥じるでしょう。

 そして、マイマイ姫様のような偉大なお方を崇めるのではなく『ただ恐れていただけ』という自らの愚かさに気がつくでしょう』

 

 言っていることの意味が分からないと思うけど、見れば分かると思うわ」


「あの、見れば分かるって!?」


王女がフェブニアに聞くと同時に、突然周囲の景色が一変した。


「なんですかこれは!?」


まるで、突然別の場所に跳ばされたような状況に王女は驚く。


「大丈夫、これは立体映像というもので、本物のように見えるけど幻らしいわ。

 幻と言っても、これは実際に起こったこと。

 歴史的記録だそうよ」


フェブニア達の周囲はまるで世界が崩れてしまったような光景が広がっていた。

大地には幾つものすり鉢状の穴が開けられ、空は茶色く濁っていた。


「何これ、嫌!!」


王女が気味の悪い光景に悲鳴のような声を上げる。

すると、突然茶色く濁った空から、光が降りてきた。


「魔王よ、その名が分不相応だったことを悔いて死ぬがいい!!」


光の中心は先程の少女、マイマイだった。

マイマイが杖を天に突き上げながら宣言すると、百人以上の人々と巨大で整然とした軍団が光の中から現れる。


「魔王よ、死ぬ覚悟は十分か?」

「ひゃっはー最高だぜ!」

「申し訳ありませんが、落とさせて頂きます」

「さっさと死ねや」

「狩の時間だ!」


彼らの向かうところは唯一つ、すり鉢上に抉られた大地の底に佇む存在。

動物なのか木なのか石なのか男なのか女なのか、一言では表現できないほど色々な物が混ざり合った不気味な物体。

それは魔王と呼ばれるものだった。


「ギィヤウォエアアアウ!!!!」


不気味な鳴き声を上げて魔王はマイマイ達を迎撃する。

熾烈な戦いが始まった。


その戦いはまるで神話だった。


圧倒的な力と力がぶつかり合い、弾けた。


時に魔王は卑劣な手を使ってマイマイ達を倒そうとするが、その度にマイマイ達の友情の力がそれを打ち破っていく。

卑劣な手を打ち破っていくマイマイ達の姿は力強く、そして美しかった。


時が経つのも忘れ、その光景に見入る王女。

二回目であるフェブニアもそれは同じだった。




そして遂に、勝敗が決した。



魔王の体が割れ、中から年老いた老人が現れた。

老人は、既に瀕死の重傷を負っていた。


「理性を捨てても勝てないのか…

 だが、世越え人共よ、これで終わりではない…

 私を倒そうとも、第二第三の魔王が現れ…「そうか、それは楽しみだ」


最後の言葉を搾り出す魔王を、マイマイが無慈悲に蹴り飛ばし、戦いが終わった。


映像が変わって、世界中から賞賛されるマイマイ達。

その景色の中には、アルラウネの伝承に残る姿とそっくりなフェブロニア大女王の姿もあった。


そして更に映像は流れ、何も無い砂漠に切り替わった。


「ここに新しい国を作ろう、誰もが自由に平和で楽しく暮らせる私達の国を!」


マイマイが宣言すると、青空に灰色の分厚い雲が現れ、雷鳴が響いた。

そして砂漠に雨が降り、緑の大地が現れ、山、川、湖がマイマイ達の手によって作り出されていく。

更には、見たことも無い程巨大な城が現れ、その周りに同じく巨大な都市が作り出されていった。


「天地創造、神の業だ…」


王女が漏らしたように、正にそれは神の業だった。

何も無い砂漠を人の力で緑豊かな大地にすることなど出来ない。

だが、それを実現した人達が映し出されている。

なら彼らは何かというと、それは神でしかなかった。


映像は進み、繁栄を謳歌する国が映し出される。

多種多様な種族の人々が一様に幸せそうな顔をしており、その中には自分達と同じアルラウネの姿もあった。

そして映像は「我等の目標は、三界全ての支配!!我等と共に栄光を掴もうと思う者は、我等の元に集まるがよい!!」と塔の天辺で両手を広げながら叫ぶマイマイの姿を最後に終わった。


「すごい…」


王女の口から漏れた言葉はそれだけだったが、フェブニアは何故自分がマイマイの経歴を信じ、マイマイの配下に入るという決断をしたのか、王女にも伝わったと確信した。

わき目も振らず映像に見入る王女の様子は、最初にこの映像を見たときの自分とまったく同じだったからだ。

もっとも、二回目である自分も、また見入ってしまったのだが。


「ね、私が配下に入ろうと思った気持ち、そして何故信じようと思ったのか、これで何となく分かったでしょ?」


周囲が、元の見慣れた森の光景に戻ったのを確認すると、フェブニアは王女に聞いた。


「うん…分かった…」


「千年前の映像だけど、私達のような種族も分け隔てなく受け入れてくれる強力な力を持つ国。

 従者によると、破壊神国は現在再建中だけど、魔王を倒した破壊神様を筆頭に、あのドラゴンのような強力な家臣団は健在らしいわ。

 それに、希望すれば私達の入植地も用意してくれるそうよ。

 最近人族に殺されたり浚われたりする子が急増しているから、この機会を逃してはいけないと思ったの」


「そうなんだ」


フェブニアの言葉に王女は上の空といった様子で答える。

どうやら王女は、映像の余韻にまだ浸っているようだった。


(この様子じゃ、続きを説明するのはもう少し先の方がいいわね)


そのため、フェブニアは王女の近くに腰掛けた。

王女が戻ってくるまでには、まだ少し時間が掛かると思ったからだ。


手持ち無沙汰になったフェブニアは、フワフワと浮ぶ水晶、先程の映像を映し出したアイテムを手に取り、何気なく眺めた。

水晶でできたそれは、キラキラと光り美しかったからだ。


すると、その水晶の一角に、文字が書かれているのが見えた。

なんだろうと思い、フェブニアは目を近づけ文字を読み取る。


「…………………??」


しかしながら、フェブニアはそれを読み取ることができなかった。

書かれていた文字は、古代語と呼ばれる古い文字で書かれていたからだ。

これを読むためには、これの元々の持ち主である、マイマイ達にお願いするしかないだろう。


だがもしもマイマイ達がここに居たとしても、翻訳をお願いするのは、実は懸命なことでは無かった。

文字が読めるマイマイがこれを見れば「これを見せたの!?私の黒歴史がああああああ!!!ちょっとお外走ってくるううううううう!!」と顔を真っ赤にしながら周囲をパタパタと走り回ることになったからである。



『破壊神国募集CM ハリウッド映画PV風バージョン』

これが水晶に書かれている文字の意味だった。


----------


side マイマイ


「破壊神国募集CMとは、百使徒様の溢れんばかりの魅力を映像に籠めた、家臣なら誰もが持っている家臣必須アイテムです。

 因みに私は、保存用、観賞用、布教用を持っています。

 そうだと言うのに、ファイ一郎…あなたは一つも持っていないとは、それでも家臣ですか!

 家臣の中には毎晩あれを見ないと眠れないという者も居るのに…まったく」


「グアー…」


「あの、カグヤ、オガサワラシティについたから、そろそろファイ一郎と話すのを止めてくれないかな、ごめんね」


「申し訳ありません!」


マイマイが、カグヤとファイ一郎のおしゃべりを止める。

それは、オガサワラシティに着いた為、ファイ一郎の「グアー」という声を他の人に聞かれる可能性があったからだ。

決して、破壊神国募集CMという1000%増ぐらい美化されたマイマイ達が映った厨二病満載の黒歴史映像について、どういう理由なのか知らないが二人が語っているので止めて欲しかったわけではない。

ないったら無い。


「これがオガサワラシティか。

 思ったより大きな町だね」


マイマイの前には、高さ3メートルほどの城壁と幅が10メートル程ある水堀に周囲をぐるりと囲まれた都市が姿を現していた。


「地方都市にしては活気があるでござるな」


そして、町に入るためには堀に掛けられた可動橋には、何台もの馬車が往来していた。

マイマイの知る限り、この程度の街では時々馬車が出入りする程度のものであり、視界の中に常に何台もの馬車があるというのは珍しかった。


「そうだね、フェブニアさんの情報にあった奴隷市と関係あるのかもな。

 例えば、奴隷市がもうすぐ行われるとか?」


オガサワラシティはオガサワラ伯爵領の領都で、オガサワラ伯が直接運営する奴隷市の開催場所だった。

マイマイの知る限り奴隷市は、その恐ろしい名前とは裏腹に、好みのNPCの仲間を探す健全な場所として機能していた。

私見ではあるが、どちらかと言うと、古典的RPGの仲間を集めるための酒場のような役割である。

そのため、マイマイも初心者から中級者へと移行する辺りで何度か利用したことがあった。


「その予想は当たりかもしれません。

 先程から通っている馬車ですが、何人もの人が乗っているような音がします。

 どの御者も、奴隷商にしては碌な服装をしていないところが気になりますが、奴隷市に出品される人達が乗っているということでほぼ間違いないかと」


「だとすれば都合がいいというか、予定通りだね。

 奴隷を売り買いするために人が集まるということは情報が集まるということだし、人が集まるという事は私達が目立たなくなるということだからね」


今回、奴隷市があるオガサワラシティに向かったのは、ヘンプリオス山脈に最も近い大きな町であると同時に、上記のようなことが期待できるからだった。


「とにかく、このまま目立たないように中に入ろう」


四人はマイマイを先頭に可動橋を渡り始める。

すると、可動橋の先にある門の手前に差し掛かったところで、一人の兵士と、フードを被った二人の旅人風の女の子が言い争いをしているのが目に入った。


(何だアレ?)


「おいお前!ボディチェックだとさっきから言ってるだろ!」


「ですから、ボディチェックしなくてはいけないような怪しい者ではありません」


「そうじゃそうじゃ!

 他の者は、みんな通っておるじゃないか!!

 何故、銀子だけ止めるんじゃ!」


「何だこいつは!?

 子供の癖に、年寄りのような変な喋り方をするぞ!?」


「変とは何じゃ!!

 偉大なわらわの家系に伝わる伝統じゃぞ!大お祖母様の口真似じゃぞ!!!」


下卑た笑みを浮かべる兵士の一人が、銀髪でスタイルのいい銀子という名の女性のボディチェックをしようとし、見た目がマイマイぐらいの年なのに、何故か時代がかった言葉使いをする少女が、それに抗議しているらしい。


(あの二人大丈夫かな?

 何が原因で、もめているのか知らないけど、適当なところで割り込んで助けてあげようかな?

 でも、いきなり戦闘になったら嫌だし、危ないから穏便にお金でも兵士に握らせて助けようか?

 いや、ちょっと待てよ!

 彼女達を助けるのも大切だが、私達の対策も大切じゃないか、やばっ!!)


マイマイは足を止め、その様子をじっと伺い始めた。

それは、彼女達を助けようとしたこともあったが、ある問題に気がついたからでもあった。


「どうしたのでござるか」


「スケサン、あれを見てどう思う」


もめる兵士と、マイマイと同じぐらいの年に見える少女を指差す。


「喋り方がどことなく、ロリーナ殿を思い出す子でござるな」


「いえ、私は雰囲気がマイマイお嬢様に似ている気がします。

 髪の色もマイマイお嬢様と同じですし」


「いや、二人ともそうじゃなくて、これは不味いだろ」


再度、しっかりとマイマイが指を指す。

指を指した先では「おまえ達、抵抗するなんてやっぱり怪しいぞ、あっちの小屋で全身をチェックだー」「やめろ、この痴れ者が!!銀子から離れろ!!」と、兵士と女の子の言い争いが更にエスカレートしていた。


「どういうことでござる。

 何が不味いでござるか?」


「凄く不味いだろ。

 まがり間違ってスケサンのボディチェックされたら、大騒ぎになっちゃうだろ」


つまりマイマイが言いたいのは…


スケサンがボディチックされる

兵士が兜を取ったら「ハローでござる」といった感じの笑顔の髑髏が現れる

地母神教会の信者、もしくは信者の兵士がいた場合、いきなり攻撃される

情報収集失敗


という展開になりかねないということだった。


「それは、マイマイお嬢様自身にも言えることです」


「確かに、私もフードを取られたらアウトか。

 うーんまずいな、どうしたらいいと思う?」


言い争う兵士と女の子達の様子を伺いながらマイマイ達はヒソヒソと話し合い、対策を考える。

しかし、中々良い案は出てこなかった。

どういった基準でボディチェックが行われるか分かれば対策が取れるのだが、現状ではその基準がまったく分からないからだ。


「対策が取れないなら、門から入るのを諦めて、壁を越えて進入しますか?

 万が一見つかっても、町人に見つかった程度なら騒ぐ前に消せますが」


「いや、それは最後の手段にしておきたい、まずは正攻法で行こう」


カグヤが提案したように、ボディチェックそのものを回避するという方法もあるが、マイマイはやんわりとそれを拒否した。

マイマイ達の力なら、町人だろうが兵士だろうが、倒せるはずなのだが、何もかも謎になっている今では、そうとも限らないからである。

そして忘れてはいけないもう一つの理由として、マイマイとしては人型の敵を直接殺す行為が好きではなかったため、穏便に済ませたかったからである。


「お嬢様、どういうことですか?」


「大丈夫大丈夫、私に任せなさい」


安心させるように笑顔をカグヤに向けたマイマイは、言い争う三人を少し離れた場所で眺めていた壮年の兵士に近付き声をかけた。


「ねえ兵士さん。

 あれは、どういった基準でボディチェックされているの?」


マイマイの『いい考え』とは、基準が分からなくて対策が立てられないのなら、基準を聞いてみようという単純明快な案だった。


「ん、何だおま…!!

 あ、い、いや、怪しい奴がいたので、ボディチェックしているだけでございます」


(何だ?途中から急に態度が変わったぞ?)


マイマイに声を掛けられた壮年の兵士は、不躾な態度で振り向いたが、マイマイの姿を確認した瞬間、突然言葉使いを改める。

マイマイはそれを不思議に思いつつも、話し易くなったという事実を優先し質問を続けた。


「怪しい奴ならボディチェックをするということか。

 それで、彼女達は怪しいということだけど、具体的にどこが怪しかったの?」


「いや、それは…」


マイマイの質問に声を濁す壮年の兵士。

どうやら、何か言い難い理由があるらしい。


(何故言葉を濁すんだ?

 何か言い難い理由でもあるのか?

 でも、だからと言って、こちらも引くわけには行かないんだよな)


自分達の安全が掛かっているマイマイとしては、言い難そうだからと引き下がるわけにはいかなかった。

そのため、マイマイは再度質問することにした。


「何がどう怪しかったら、どのようなボディチェックをするのか、その点について理由も含めて教えてください!

 特に、彼女達を選び、全身をボディチェックさせろと言っている点について、分かりやすくかつ、具体的に教えてください!!」


「………怪しい奴がいたので、ボディチェックしているだけでございます…お貴族様」


何故か顔から汗を噴出し、落ち着きが無くなった様子になる壮年の兵士。

彼の様子は明らかにおかしかったが、それよりも言動の方がおかしかった。

再度マイマイがより具体的な質問をしたのにも関わらず「怪しい奴がいたので、ボディチェックしているだけでございます」と先程とまったく同じ内容の言葉を喋り、しかもマイマイを貴族と呼んだのである。

望んだ答えとはまったく違う、おかしな返答が返ってくるという上手く行かない状況に、マイマイは首を傾げた。


(…どういう意味だこれは。

 何故同じ言葉を繰り返す。

言い難い理由とやらが関係しているのか?

 いや、それならこんな答え方をせずに「五月蠅い!」とか言って、適当に私を追い払えばいいだけだしな。

 相手から見たら、私はただの旅人な訳だからな。

 それに、私を貴族と呼ぶのはいったいどういう意味だろうか、ここはどう答えるとか以前に、明らかにおかしいぞ。

 何かのバグか?

 

 バグ!?


 あ、そうか!!)


「しまった、ここはリアルじゃないし、おまけに相手は普通のNPCじゃん!!」


実際に今気が付いたのだが、正に今気が付いたといった表情で、マイマイが大声を出す。

マイマイが気が付いたのは、ここはリアルではなく、しかも相手がただのNPCだということだった。


(あまりにもリアルになっているから、完全にゲームだと忘れて、普通の人間を相手にしているつもりで喋っちゃったよ。

 でも相手はNPCだから、質問に答えられなかったり、変な回答をするのは当たり前じゃないか。

 最近はスケサンやカグヤのように、ペラペラと流暢に喋れるNPCばかりが周りに居たから忘れていたけど、この壮年の兵士のように流暢に喋れないNPCが以前のエバー物語では多かったからな)


そもそものエバー物語では、町の一兵士が今のカグヤやスケサンのように流暢に話すなんてことは滅多に無かった。

最も酷いものでは、町の入り口の兵士に何を話しかけても『ここはアルラハンの街です!!』等とほとんど同じ答えを繰り返すばかりだったのである。

つまり、目の前の壮年の兵士には性能の低いAIが搭載されており、マイマイの質問はそのAIが対応できる限界を超えてしまっているのだと、マイマイは考えたのだった。


(ということは、このNPCとこのまま話していても埒が開かないな。

 そうと決まれば、話が通じる相手に変えるだけだ)


「質問に答えられないなら、答えられる上司の人を呼んで来てくれないかな?

 その人に直接聞くから。

 私の言っていること、理解できる?」


(上位の兵士ならそれなりのAI積んでるから、もう少しまともに答えられる可能性があるからな。

 といっても、目の前の兵士は、この質問すら理解できない可能性があるけど)


相手のAIの性能が低いと想定したマイマイは、これ以上目の前の壮年の兵士と話をしても時間の無駄だと考え、より高度なAIを積んでいる可能性が高い上司を出すよう要望した。

その要望のしかたは、性能の低いAIでも意味が理解しやすいよう、まるで子供に言い聞かせるように一言一言、ゆっくりと、そして大きな声ではっきりと喋った。

しかしその効果は、またもやマイマイの望んだ答えとは違うものだった。


「テッド!その二人を直ぐに通すんだ早く!!」


「大丈夫です、おやっさん!!

 手配書に似ていると思ったのは勘違いでした!!何もしてません!!!」


壮年の兵士が、二人組みの女の子の体中をボディチェックしようとしていた兵士に対し、悲鳴を上げるような声で命令する。

すると、既にボディチェックを中断していた兵士は、大声で勘違いだったと回答すると、二人組みの女の子から後ずさるように離れた。

そして、テッドと呼ばれた兵士が完全に離れたことを確認すると、壮年の兵士は土下座するような勢いでマイマイに向けて頭を下げた。


「申し訳ありませんでした!!

 テッドのしたことは、私が責任を持って上に報告いたします。

 お貴族様どうかこれでご勘弁を…。

 お見苦しい所をお見せして本当に申し訳ありませんでした!

 お通り下さい」


(急転直下の展開でついていけないが、全身のボディチェックされそうになっていたのは、手配書の見間違いが原因ということだったのか。

 大事に至る前に間違いが見つかって、よかったよかった。

 

 あれ?

 でもそれなら、何故私は謝られているんだ?

 この人が小刻みに震えている件も気になるし、どういうことだ?)


何を意味しているのか分からないが、頭を下げた壮年の兵士は小刻みに震えていた。

そして話の流れから考え、どうしてマイマイが謝られているのかも意味が分からなかった。

しかし、結果だけ見た限り、全ての問題は解決されたようだった。


(考えても仕方ないか、ここを通るという目的は達したわけだし。

 震えているのは物理演算のバグという可能性も無いことは無いし…

 おまけに、質問が終わったら兵士にお金を握らして助けてあげようと思っていた二人組みの女の子の方も、よく分からないうちに解決したみたいだし、全て結果オーライか)


オガサワラシティに正体を明かさずに入るという当初の目的をクリアし、更には質問後に助けようと思っていた二人組みの女の子の問題も、マイマイが手助けする前に勝手に解決していた。

アルラウネが配下に入った時と同じく、細かい事情が分からない所が若干不満だったが、戦闘等の目立つ行為をせずに、穏便かつ目立たずに問題が解決したことを持ってマイマイは良しとする事にした。


「穏便に済んで良かったよ。

 仕事を邪魔して悪かったね!!」


マイマイは、壮年の兵士に仕事の邪魔をしたことを詫び、その場を離れスケサン達と合流する。

そして、三人を引き連れそのままオガサワラシティの中へと入っていった。

壮年の兵士は、無言で頭を下げ、マイマイを見送っていた。

その姿は、何故か安堵しているように見えた。


「さあ皆、ついに最初の町に着いたよ!!

 でも、疲れたし、もう夕方だし、今晩の宿でも探そうか?」


「賛成でござる!」


町に入ったマイマイは、早速宿を探そうとする。

しかし、そうは行かなかった。


----------


「危ない所、本当にありがとうございます」


「フン!貴様のような人族の貴族の力など借りずとも、偉大なるわらわの交渉術によって解決できたのじゃがのお…

 一応、礼を言って「マリーナ!」はひぃ!」


「申し訳ありません、マリーナも感謝しているのですが、素直じゃなくて」


銀子がもう一人の時代がかった言葉使いの女の子、マリーナの頭をぐいぐいと押さえつけ、強引に頭を下げさせる。


「は、はあ」


それを、マイマイはボヘッとした顔で応じた。


(何故感謝されたし。

 確かに助けようとはしたが、結局この子達は私が助ける前に、手配書の見間違いだと原因が分かって勝手に助かった訳だからな。

 うん、やっぱりどう考えても、私はこの二人を助けていないな)


何故感謝されているのかマイマイには心当たりが無かったからだ。

マイマイが分かったことは、マイマイ達一行が門を潜り、宿屋を探して大通りを歩き始めたところ、先程の二人組みの女の子が追いかけて来た。

そして、冒頭のように銀子がいきなり礼を言って頭を下げたという、今まさに目の前で起こっている状況だけだった。


「私はあの兵士とただ会話してただけだよ、私は感謝されるようなことしてないよ」


「そんな謙遜なされないでください。

 あの変態兵士達を追及しながら脅す姿は、同じ女性でありながら惚れ惚れしました。

 王国には力の使い方が間違っている貴族が多いと聞いていましたが、あなたのような方もいるのですね」


「は!?」


銀子が、興奮した表情でマイマイを褒め称える。


「最後の恫喝は中々痛快だったぞ、兵士の不正を貴族が訴えたとなったら、あの変態兵士達が上司からどんな切り捨てられ方をするか、想像するだけで気分が晴れたぞ!」


銀子の言葉に続き、マリーナまでマイマイを褒める。

因みにマリーナは、何故か偉そうだった。


(だから私は王国の貴族では無いし、ただ所謂フラグとかを確認してただけで、この子達は結局私とは関係の無い所で助かった訳だし。

 そもそも、私は追及とか、恫喝とか、そんな怖いことは一切してないよ!?)


「本当に私は誰かを助けようとした訳では「マイマイお嬢様」なに、カグヤ?」


マイマイの言葉を遮り、カグヤが耳元で囁いた。


「あまり謙遜が過ぎますと失礼ですよ。

 ここは素直に礼を受け入れて、宿を探しにいきましょう」


(カグヤお前もか)

どういう理由なのか分からないが、何故かカグヤもマイマイが二人を助けたと思っているようだった。


「別に謙遜じゃないって」


「つまり『恥ずかしい』ということでござるな!」


(えー、スケサンまで…

 何なんだこれは…

 まさか、先程の件は良く分からないうちに解決したけど、実は私自身が気が付かないうちに、私が二人を助けていたとか!?





 いや、そんなこと無いだろ、常識的に考えて)

そしてそれは、スケサンも同じ様だった。


「とにかく、話を切り上げてこの場を離れましょう。

 周りの視線が集まり始めています」


マイマイは二人の誤解を解こうとするが、それは後回しにした方が良さそうだった。

カグヤに指摘されて周りを見渡すと、長話をしたわけでもないのに、周囲の人々が珍しいものを見るような目でマイマイ達を見ていたのである。

この状況は、目立つことを良しとしないマイマイにとっては、あまり望ましい事態ではなかった。


「うん分かった。

 喜んでくれたのなら、私も良かったです。

 ということで、今晩の宿を探したいから、私達はこれで」


「そ、そうなのか残念じゃの」


そのためマイマイは、ここで二人と別れることにした。

二人の誤解を解かないままという点では残念だったが、このままここで話している方がデメリットが多いと考え諦めたのだった。


「あのっ」


「ん?まだ何かあるの?」


「私達は、この先にある『妖精の止まり木』という宿に当分泊まる予定になっています。

 何かありましたら、そちらを訪ねてください」


銀子が、マイマイに自分達の宿の場所を知らせて来た。

どうやら、本日の礼をしたいということらしい。


「うん、何かあったらよろしくね!」


流石にこれをここで断るほどマイマイは空気が読めないわけでは無かったため、マイマイは笑顔で承諾した。


「さあ、拙者達も今晩の宿を探すでござるよ!

 そして晩御飯にするでござる!!

 おっ、屋台がいっぱい出ているでござるよ!」


「マイマイお嬢様、宿を見つけて、まともなレストランで食事にしましょう。

 五つ星以上のホテルなら、味、安全性共に間違いありません。

 屋台なんて、不衛生です」


「全否定だなんて酷いでござるよ~」


「とにかく美味しいご飯が食べられるなら、私は屋台でもレストランでもどっちでもいいよ」


そして改めて、夜の喧騒に満ち溢れ始めた通りを歩き始めたのだった。


----------


side 銀子&マリーナ


「どこの大貴族かわかった?」


マイマイ達の姿見えなくなると、藪から棒に、マリーナが切り出した。


「知らない顔でした。

 列強の大貴族と、その子女の顔は大体覚えているつもりだったのですが…」


銀子は、それに難しそうな顔で答えた。


「そうか、マイマイという子は見るからに高貴って感じで、着ていた服は皇居でもそうそうお目にかかれない程高価そうなものじゃったからのぉ…

 相当名のある大貴族だとわらわは読んだのじゃが、銀子が知らないと言うのならお手上げじゃな」


銀子の回答を聞いてマリーナは残念そうな顔をする。

『草』として各国の要人とその子女の顔を知る銀子が知らないとなれば、彼女達の正体を知る手段が現状としては無いからだ。


「この時期にここに来たという事は、奴隷市と何らかの関係があるでしょうから…」


「正体を知る機会もあるかもしれないということか。

 何だか憂鬱じゃの、まがり間違って恩人と戦うことになるのは勘弁じゃ」


マイマイ達はマリーナにとって恩人だった。

銀子のスタイルが変態兵士の目に留まってしまったのだろう、町に入ろうとしたマリーナ達は、変態兵士に手配書に似ているという言い掛かりをつけられ、ボディーチェックという名目の『いやらしい行為』をされそうになっていた。


『お前達は全身を調べるという『いやらしい行為』を、怪しいから調べるという、正当な行為だと主張しているが、それが正当な行為だというのなら、具体的にどのような理由で、そしてどういった目的で全身のボディーチェックになったのか、ちゃんと説明してもらおうか!!』


『答えられないなら別にいいよ、お前の上司に聞くから。こんなことをしているって貴族である私が上司に伝えたら、お前達にとって不味い状況になるのは理解できるよな?』


そこに颯爽と現れたマイマイは、ニュアンスを入れて要約すると、上記のような内容で兵士達を脅すと同時に追及し、マリーナを助けてくれた。

そんなマイマイをマリーナは一目で気に入ってしまっていた。

しかし、自分がここに来た目的を思い出し、マリーナは憂鬱になった。

マイマイの目的次第では、戦うことになるかもしれないからだ。


「今回は戦うことが目的じゃありませんでしたよね?

 あくまで視察ですよね?」


マリーナの言葉に対し、銀子が怖い顔をして言う。

その顔を見て、マリーナはしまったと思った。


「そうじゃ、視察、これは大使館員としての視察じゃ」


「分かっているのならそれでいいです。

 いざとなれば大使館特権がありますが、それにも限度はありますし、お国にも迷惑が掛かることをお忘れなく『マルエネ様』」


今回マリーナは『あくまで視察だから』『許してくれないのなら勝手に行くぞ!そうしたらお主達も困るじゃろ』と、駄々を捏ねて視察旅行を銀子に認めさせた。

もちろん、マリーナの本心が『視察以上のことを目的にしている』ことは、とっくに銀子にばれていたが、銀子は黙ってマリーナについてきてくれた。

といってもそれは、マリーナの行動を黙認するのではなく、約束以上の行動を取れば有無を言わさずに止めるという意思表示であることは、付き合いの長いマリーナには良く分かっていた。


「それは分かっておる。

 あくまで仮定の話じゃ仮定の」


「まあ、確かに戦いたくありませんね、彼女達とは…」


明らかな言い訳だったが、以外にも銀子が同意した。


「お!銀子もあ奴等を気に入ったか!

 恩人でもあるし、何となく他人じゃないような気もして気に入ったのじゃ!」


「いえ、違います」


銀子もマリーナと同じ理由で戦いたくないのかと思い、嬉しそうな声でマリーナは聞くが、冷たい声でバッサリと否定される。

銀子の目つきが鋭くなっていた。


「じゃあ、何じゃと言うんじゃ?」


「青い鎧の人物とメイドの二人、隙がまったくありませんでした」


「…銀子がそこまで言う程の護衛をつけているとは、あの子、やはり只者じゃなさそうじゃの」


優秀な『草』である銀子の実力も目利きも、マリーナは信用していた。

その銀子が護衛の隙を見つけられなかったということは、護衛の実力が最低でも銀子クラスであることを示していた。

そして、優秀な護衛を手に入れるためには金も人脈も必要である。

そう考えれば、護衛対象である彼女もまた、只者ではないと考えるべきだった。


「大お祖母様、あの者達とどうか不幸な再開を果たすことにならないよう、見守っていてください」


マイマイの正体を色々と想像したマリーナは、彼女達と不幸な再会を果たすことにないように、国にいる『大お祖母様』に祈ったのだった。


絶対に間違いが許されない仕事のため、手順を一つひとつ確認していたら「そこまで追及しますか!勘弁してください!許してください!」と謝られた…

こちらはただ単に仕事内容を確認していただけなのに…





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ