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愛する本

作者: Sebastian

題:愛する本

俺には好きな本がある。

「面白日記帳」

文秋社から出ている本。

この会社が独自で集めた一般人の面白い日記を集めたもの。

俺はこの本を

「うわっ、こんな奴、本当にいるのかよ〜。」

なんていいながら読むのが寝る前の日課である。

そんな今日の夜もこの本を読む。

2005年8月1日

題:今日の不幸

今日、私は財布をなくした。

今日、私にはとの糞がふってきた。

今日、私は好きな人にふられた。

今日、私は死のうと思った。

だけれども、外に雨が降っていたから止めた。

なんだろう。

結局、私は死にたくないんだ。

だけれども、生きてもいたくなくなったんだ。

どっちなんだろう、私。

と、考えていたらゴキブリが出てきた。

スリッパで殺した。

そうだ、決めた。

ゴキブリの分も私が生きるんだ。


「なんだこれ、面白くねぇ、日記だ。

俺はなんていうか感動系はいやなんだよ。

もうちょっと面白いのねぇかな〜。」

と、次のを読み始める。

次の日記はやけに丁寧であった。

日にちも名前も細かな日時も入ってた・・・。


2006年8月28日

作:田中 武


ん?田中 武って俺だな。

しかも明日の日にちってどういうことだ。


題:最期の日

夜更かしのせいで10時に起きる。

朝飯を取らずにパソコンへ向かい、そのまま1時をむかえる。

そして親がつくってくれた昼飯を食べる。

1時半頃、眠くなり昼寝をする。

3時ごろに目が覚める。

CDがほしくなったため、自転車でCDショップへ向かう。

3時3分頃、家の近くの道路でトラックにひかれ、死亡。


・・・。

冗談じゃねえよ。

なんで明日の日にちで俺と同じ名前のやつが死ぬんだよ・・・。

ばかばかしい。

この本のせいでつまんなくなっちまった。

寝よう〜っと。


2006年8月28日が訪れた。

田中 武 起床。

その時刻、10時。

昨日のことなど忘れてしまった武は日課どおりにパソコンに向かう。

ネットサーフィンをしたり、音楽を聞いたり、ゲームをやっているうちに刻々と時間は過ぎていく。

「なんか腹減ってきたな。」

と、時刻を確認すれば13時。

母親がいつの間にか昼飯をつくっていた。

「はい、これ今日のご飯ね。」

「ふぁ〜い。」

あくび交じりの返事で受け取る武。

昼飯をネットサーフィンしながら食べる。

これも日課である。

眠くなってきてしまった。

武は昼寝をする。

その時刻、1時半。

武は昨日のことを忘れてしまいながら、昨日の日記どおりの生活をおくっている。

2時、終わりごろに目がさめる。

目覚めに音楽を聞く。

「いやあ、やっぱロックだよな。

・・・。

そういえば、ELLEGARDENのCDがほしかったんだ。

暇だから買いに行くかな。」

家を出たのは3時。

愛車のチャリにまたがる武。

そこで昨日のことが頭によみがえる。

あれ、昨日のあの本・・・。

俺はこの後どうなるんだっけ・・・。

確か死ぬんだよな・・・。

やべえ、どうしよう、俺。

やっぱこわいな。

引き返すか・・・。

・・・。

だけども、ここで引き返したら男じゃねえ。

あんな未来のことなんて書いてあるもんがあるわけないじゃん。

ばかばかしいぜ。

と、チャリを飛ばす武。

しかし、3時3分、その時を迎えた。

目の前にはトラック。

もうだめだ、俺・・・。

あの日記は本当にそのとおりになってしまった。


がばっ。

はあっ、はあっ。

布団から飛び出した武。

「あれ・・・。おれ・・・。

夢かよ・・・。

なんだよ、ちくしょうっ。」

と、机に視線を向ける武。

そこには本が一冊。

「面白日記帳」

武は恐怖のあまり、ションベンをちびらした。

結局、武は面白日記帳を捨ててしまった。

母親がいたずらで書いて武の未来日記と題したレポート用紙を共に。

夜、眠たかった武はそれを見破れずにいたのだ。



お読みいただきありがとうございます。

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