君を愛することはないと言われたので体操競技の技を口走ってみた
お見合いの席で、いきなりお相手のアラン公爵様はこう言った。
「クラウディア嬢、君を愛することはない」
「えっそうなんですか」
「そうだ」
「なんでですか」
「妻とか子供とかがわずらわしいからだ。関わりたくないし、関わってほしくない」
「じゃあ結婚しないほうがいいのでは」
「周りがうるさいのだ。君の領地には充分な援助をする。白い結婚なら、3年で離縁できるから、それまで我慢してお飾りの妻となってほしいのだ」
「なるほど」
「もし嫌なら他を探すからそう言ってくれ」
「いや、うちは一昨年の水害のせいで貧乏だし、援助が欲しいのでお受けします」
「そうか、じゃあこのまま婚姻を進めるということでいいな?」
「いいですけど…」
「なんだ、なにかあるのか」
「ちょっと残念です。結婚したら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり下りをご披露できるかなと思っていたので」
「…? 結婚したら、なんだって?」
「後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり下りです。すごい技なんですよ」
「すごい技…」
「私は実は前世の記憶がありまして。そこでの知識なんですが、他にも、伸腕伸身正面水平懸垂経過脚上挙十字懸垂とか、脚上挙十字懸垂から引き上げ脚上挙支持とか…いろいろ…」
「いろいろ…」
「あっごめんなさい。お飾りの妻なんだから関係のない話でした! 気にしないでください!」
「あっうん…じゃあそういうことで…」
アラン様はこっちを気にしながら、名残惜しそうに部屋を出て言った。
さくさくと結婚準備をしてる間も、結婚式を終えて、アラン様のおうちに引っ越したあとも、アラン様は何か聞きたそうにうろうろしてたり、「ク、クラウディア…」と声をかけたあと、「…いやすまん、なんでもない」と去って行ったりした。
面白いからほっといたけど、1か月もしないうちに、「すみませんでした!」と謝ってきた。
「君が見合いの席で言っていた謎の技のことが気になって気になって、君に詳しく聞きたいと思って、話すきっかけを探してずっと見ていたら、好きになってしまいました! どうか、本当の夫婦になってください!」
私はもともと、一目見た時から彼が好みのタイプだったので、にっこり笑って了承した。
そして、寝室で私は、前世で大好きだった男子体操競技のすごさを、熱く語ったのであった。アラン様は、ちょっと拍子抜けしたみたいだけど、謎が解けて嬉しそうだったので結果オーライである。




