自由詩『夢想』
「世界には果てはある
しかし、我々の夢に果てはない」
かつて、名を馳せた冒険家が
大衆の前でそう言った
大勢の男で賑わう酒場
その中央で卓上に立ち
酒が満ちた盃を片手に
酒豪の様に酒を飲む
そして、腰にかけた剣を掲げ
大声で叫ぶ様に言う
「私ら冒険者が生きる限り
その胸に抱える夢想は永遠であり
幾多の災厄が降り掛かろうとも
滅することなく在り続ける」
酒に酔いしれているのか
冒険者は盃を掲げながら
獅子のように堂々と言った
馬鹿らしい、と
どこからか放たれた言葉が
賑やかな酒場の空気を
瞬時に冷ました
その言葉を発したのは
冒険者とは険悪の縁を持つ男であった
彼は嘲笑交えに言葉を繋げる
人間の夢如きが不限ならば
この世の全ては不限だろう
そうでなければ
おかしな話だ、と
その男は薄気味悪い笑みを浮かばせ
心底から嘲笑った
人々は唖然とし
思い思いに批判し始めた
罵詈雑言が飛び交い
たった一人を責め始めたこの空気の中
嘲笑された冒険家は
笑った
男の言葉を肯定する言葉を
何度も何度も繰り返した
その様子に人々は驚嘆し
嘲笑した男は呆気に取られた
そして
冒険家は男にこう言った
夢とは無いものがなにかを
頭の中で表そうとする人の働き
それが夢という動きだ
それと比類するものは
この世界には一切ない
そして
その夢が無ければ
お前さんの父母は今日まで
愛を注いで育てなかった、と




