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迷宮学園7不思議 冒険者たちの軌跡  作者: NOXANOXA


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3/3

アベルの冒険 3 幽霊副会長の試練

 リビングウェポンを手に入れたアベルの前に現れた謎の映は、魔剣フルンティングの制作者であり、アベルにその魔剣を返すように迫るのだった。


 はたして、アベル達に課せられる試練とは何か? そして無事生還できるのだろうか?


登場人物


主人公:アベル 迷宮学園1-D組に所属する、冒険者。剣士 LV1。剣をこよなく愛する。


ハナエ 迷宮学園1-D組に所属する、冒険者。パーティ紅一点の魔女で、重力術師 LV1。


カイル 迷宮学園1-D組に所属する、冒険者。テイマー LV1だが、まだテイムしていないが、人狼でライカンスロープ形態に変身できる。


 幽霊副会長 突然現れた謎の存在。魔剣フルンティングの制作者を名乗り、アベル達に試練を課す。


 この物語はファンタジー異世界のダンジョンを舞台にした冒険小説です。ダンジョンに挑む冒険者たちは夜の闇よりも暗い地下迷宮の底で何を得るのでしょうか?

【蟲毒迷宮:剣士フェンサー LV1 アベル】


「喜んでいるところ悪いのだけれど、それは私の剣なの。おとなしく返してもらえないかしら?」


 ダンジョンの中でリビングウェポンの剣を従えさせることに成功した俺の前へと現れた、正体不明の女生徒。全身が透き通ったゴーストは、俺にこの剣を返せといっている。


 返せ? 何を言っているんだ、この剣はもう俺のもの、俺だけのものだ。


「悪いが、これは俺がドロップしたものだ。よこせと言われても困るんだけど、君は迷宮学園の生徒の幽霊なのかな? 俺より年下に見えるけれど……」


 目の前に立っているゴーストは、金色にうっすらと輝いて、躰が透き通っているが迷宮学園の制服を着ている。金髪のショートヘアは艶があって、金色の瞳には勝気な色と引き込まれるほどの深い知性を感じるが、俺の言葉にムッとして頬を膨らませる姿は幼く感じさせ、その実年齢を測りかねた。


「失礼ね。私はこれでもこの迷宮学園の生徒会副会長で、ちゃんと生きているのよ後輩君。自分の不明を恥じて早くその脱走した私の実験作、魔剣フルンティングを返してもらおうかしら。その剣は私が作ったものなの。蟲毒迷宮なら他の剣を勝手に食べて成長することもないと油断していたのが失敗だったわ。さぁ、わかったら早くその問題児を私に返しなさい」


「問題児? とんでもない。初めは襲い掛かってきましたが、こうやって今では俺のことを主と認めて従順に従っている。こんな貞淑な剣は刀剣マニアの俺でも見たことがない。こいつも、俺のような剣を愛する者に拾われたくて逃げ出したんじゃないでしょうか」


挿絵(By みてみん)


 生徒会副会長? 確か去年の冬から空位になっていると聞いていたが、興味もないのでちゃんと聞いていなかったのが悔やまれるな。しかし、彼女がこの剣を作ったというのなら、彼女は鍛冶師には見えないので、天才的な錬金術師か付与術師ということだろう。


 ふふっ。お前の名前はフルンティングというんだね。俺は剣の柄をなでながら心の中で話しかける。お前に似合いの素敵な名前だ。作者であるなら彼女には敬意を表したいところなんだけど……。


「あなたを認めたですって? その剣が貞淑!? あきれたっ。あなた、顔に似合わず剣に魅入られた変態なのね。その魔剣を製造した天才である私に懐かなかったその剣が貞淑だというのなら、あたしがそれを御するに値しなかったということかしら?! 聞き捨てならないわねっ!」


「そうは言いませんが……この剣はもう俺のものなんですし、副会長ともあろう方が下級生をカツアゲするのは控えていただけないでしょうか? まだ試し切りも済んでいないですし……」


 この剣を作ったというのが本当であれば天才としか言いようがないが、同時に彼女は剣を奪われた悔しさから癇癪を起こしている。まるで幼子のような純粋さ。天才と馬鹿は紙一重ということだろうか。


 だが、彼女が上級生、それも生徒会を名乗るくらいなら真偽はともかく新入生でまだレベルが1の俺よりは確実に強いだろう。この剣を力ずくで取り戻そうとするかもしれないな……。


「しかし見事な魔剣だ、しかもインテリジェントソード。まだ生まれたてで幼く、他の剣を食らって成長する剣。本当に興味深い。この剣を作った先輩は、まさしく天才の中の天才といえます。副会長、どうかこの剣は俺に預けてもらえないでしょうか? 俺にその実験へ協力させてください!」


「協力? あなたがぁ? はぁ。確かに下級生君は、その剣に自分を認めさせた。でも、私はあなたを認めたわけじゃないの。正直そこまでの才能を感じないわ、ちょっと変わった正統派剣士といったところかしら。あまり興味をそそられないのだけれど……」


 幽霊副会長は何かを考えている。どうやら、問答無用で殺されて剣を奪われる、といった危険は去ったようだ。あとはどうやって彼女にお帰りいただくか、だが。


「いいわ、テストをしてあげる。本当はその剣と、今ドアのむこうにいる仲間の命と、どちらを取るのか試す所なのだけれど……。あなたは仲間の命と剣だったら、躊躇なく剣を取るタイプでしょうから。」


 幽霊副会長は何か呪文を唱えている、なんだか雲行きが怪しくなってきたな。


「……では逆に、ドアの向こうの仲間の命を助けないと、その剣をあげないといったら、あなたはどうするのかしら?」


「GUOOOOOOO!」


 扉の向こうから、無機質な雄たけびが轟いた!



 

【迷宮:重力術師(ニュートン) LV1 ハナエ】


「海嘯となりて源流を望め 昇竜となって滝が躍る 流れを手繰り 水よ我が手綱に従え……」


 だめっ。呪文スペルをつづけることができないっ。集中力もそうだけど、やっぱりMPが持たない、もう底を突きそうだわ。どうしても魔女だけでは限界があるのかしら。重力呪文の詠唱を停止するしかないわね、悔しいっ。


「カイル、ありがとう。残念だけどここまでみたい。ハナエにもう少しMPがあれば……」


「ご苦労さん。まあ、俺もそろそろ限界だったよ。アベルなら無事だろうさ、あとは仕方がない、気ままに待つ……ん?」


 カイルが何かに気づいたみたい。部屋の隅に何かが積みあがっている? 輝く透明な結晶の塊。さっきまで、あんなものはなかったはず……?


「虫じゃないようだけど、あれは何かしら。キラキラと光って……何か人型に結晶が育っているわ……まずいかも」


「あれはクリスタルゴーレム? いや、テイマーの俺のが告げているぜ、あれはダイヤゴーレム。こんなところに湧くなんてありえねーだろ!」


「GUOOOOOOO!」


 あれはっ! 見上げるほどに積みあがった無機質な結晶でできた巨大なゴーレムが、雄たけびをあげた。 ダイヤゴーレムって推定レベルは優に30以上(迷宮学園の卒業課題のひとつがレベル40を超える事。それを考えればここにいる事が異常なのよ)でしょ!? そもそも普通の武器の攻撃では傷1つかないでしょうっ。


「あんなのどうするのよ、逃げ場はないし……」


「チッ。まずいな、俺もやれるところまではやって時間を稼いでみるが……お前はMP回復薬を飲んでサポートしてくれ」


 帰りの崖を降りるためのMPだったんだけど、仕方ないわね。長期戦になるとまずいけど、やるしかないわ!


「『重力場』!」


 デバフ呪文スペルを食らいなさいっ。ハナエが重力呪文グラビティスペルでダイヤゴーレムへの重力を増加させて動きを遅くする!


「ウォォォォォォン!」


 カイルは人狼ライカンスロープの姿に変身した。でも人狼の身体能力でも、かすり傷1つ与えられないはず。本当、一体どうしたら……。


「よし、背中に乗れ! 俺の機動力で逃げまくってやる!」


「えっ!? いいわ、こうなったら死なばもろともよ! 『重力制御』!」


 私はカイルの背中に乗って首に手を回しておぶさった。もともと大柄なカイルは1.5倍くらいに体が膨らみ、仕組みかわからないけど全身毛むくじゃらの毛皮になって(変身が解けると衣服は元に戻るのだ)いる。固めの毛並みだけど、ちょっとモフモフしている手触り。


「重力制御しているかもしれないが、しっかりつかまっていろよ。荒っぽくいくぜ!」


「でもこれなら安心ね。ゴーレムは動きが遅いから、このまま逃げ回っていれば何とかなるでしょ」


「どうかな? だといいんだが……」


「えっ!?」


 ギュイィィィィンッ! ドゴォォォンッ!!

「うおぉぉぉ!」

「きゃぁぁぁ!」


 私たちは爆音と共に同時に悲鳴を上げた。ダイヤゴーレムは自分の攻撃がカイルの動きを捉えられないことを早い段階で学習して、攻撃パターンを切り替えてきた。両腕を伸ばし、上半身を高速回転させながら、ローラーダッシュしてきたんだっ。


挿絵(By みてみん)


 カイルは危うく回避したけれど、移動速度も攻撃速度も、直線的ではあるけれどかなり早いよっ!


 ハナエひとりだったら、確実に避けきれないし、カイルでも持久戦に持ち込まれたら明らかに不利な高速移動モードだよ、これ。こんなの逃げ切れるかどうかわからないよう!


 それでもカイルは部屋中を駆け回り、時には壁を走りながらダイヤゴーレムの攻撃を避けていく。ハナエの重力制御の補助があるとはいえ、さすがの機動力。でも……もし私がいなかったら、もっと危なげなく避けているんだろう。そう思うと申し訳ない気持ちもあった。


「カイル、あの、アリガトウね。ハナエ、警戒してあんたのことを結構避けてたのに、こんなにしてまで助けてくれて」


「ああっ? 細けぇこたぁいいんだよ。入学したての魔女なんてそのくらい用心深くて当然だろうが。まぁ、俺は最初のパートナーはすでに決めているから、お前なんかハナから眼中になかったがなっ」


 ガシィィィン!


「ちょっとっ! 話してないでちゃんと避けてよっ。今髪にかすったわよ! 今髪にかすったわよぉっ! でもあのダイヤの塊を砕いて持って帰れば結構な額になりそうねっ!」


「お前こそくだらないこと言ってると舌を噛むぞ! だいたい、あの勢いで壁を殴っても欠けもしないんだから、砕くのがそもそも無理ゲーだろうが!」


 ダイヤゴーレムはその巨体から想像できないほどの高速でこちらを追ってくる。こちらも軽口を叩ける間はまだいいけれど、いつまでも続かないわよこれ。死が迫っているのを感じるっ!


「ぐわァッ」


 ダイヤゴーレムから逃げていたカイルに、ボーリングバグの砲弾が突然壁から撃ち出されてカイルの腹を痛撃した。弾き飛ばされはしなかったけれど、これはまずいかもね。カイルはカギヅメのついた大きな手でそれをつかんでダイヤゴーレムに投げつけるけれど、回転する腕に弾き飛ばされて、硬い殻が砕けて壁にめり込んだ。


 カイルは苦しそうに息をあげている。これ本当にそろそろやばいかも! いよいよハナエも観念しかけた時。


 ギィィィィッ。


「よっしゃ、ようやく扉が開いたぜ、飛び込むぞ! あのデカブツは扉を通れねぇ! ウオオオ!」


「何とか耐えきったわね……!」




【蟲毒迷宮:剣士フェンサー LV1 アベル】


「ふふっ。仲間は俺たちのクラス、1-Eを強くするために絶対に必要ですから、もちろん助けますとも。この剣を使って仲間を助けるなら、答えは簡単ですよ……」


 ジャキィィィン!


 俺は壁に向かって剣を突き立てる。ドアの横だ!


「このフルンティングに物理攻撃無効属性の無効化があるなら、それを使って冒険者には破壊不能な壁を貫いて扉の開閉機構を操作してやれば、ドアは開くということですよ……」


 ギィ……。


 魔剣フルンティングによって、閉ざされていた扉は開いた!


「……ウオオオ!」


「何とか耐えきったわね……!」


 開いたドアから満身創痍のふたりが倒れこむように入ってきたのだった。


「お帰り、ふたりとも。無事でよかった」


 開いた扉からなだれ込むようにして転がり込んだ、人狼ライカンスロープ状態のカイルと、それと抱き合うように倒れているハナエ。後ろからは、あの幽霊副会長が差し向けたと思われる、半透明のゴーレムの巨体が扉めがけて迫っている。


「せいや!」


 俺はもう一度壁に剣を突き立てて扉を閉める。


「ふたりとも無事助かった。これでテストは合格でしょう?」


 ふり向いたけど、もう幽霊副会長の姿はすでに無い。初めから誰もいなかったかのように消えていたのだった。かすかに悔しそうな舌打ちが聞こえた気がした。


「いったい誰と話しているんだアベル?」


「うわ~ん、アベルが無事でよかったぁ~っ」


 カイルはいぶかり、ハナエは泣きながら抱きついてきた。ふたりもだいぶボロボロだ。むこうも大変だったんだろう。だが無事に目的は達した。俺は握りしめた剣の柄から伝わってくる喜びのようなものも感じる。そうか、俺もうれしいよ、フルンティング。


「目的は果たしたよ。これがそのリビングウェポンさ!」


 俺はふたりにこの素晴らしい剣を見せた、高々と掲げて。だが……。


「今まで使っていた剣じゃないか、それ?」


「ハナエには違いが判らないですぅ~っ」


 ふたりにはなぜか不評だった。形は元々の俺の剣を食って模しているが、この全体から発する本物の魔剣だけが持つ艶とオーラが分からないなんて……。


挿絵(By みてみん)


 俺は、やれやれとため息をついて、俺の体験した不思議な冒険譚をふたりに披露して、このフルンティングがいかに素晴らしいかをとくとく説明したのだった。


 END


次回予告


 かくしてアベル達の冒険譚は大団円で幕を閉じた。次に始まるのは、別のクラスの生徒たちの冒険。


 次回から始まる新シリーズ、マオの冒険 にご期待ください!




 ここまでお読みくださりありがとうございました。良ければ、ポジティブな感想やご意見を頂けると、励みになりますのでよろしくお願いします。 


 この物語は、ノクターンノベルにて連載している迷宮学園七不思議 の外伝で、本編でも活躍するキャラクターの別の活躍が語られるお話となっています。


 また、ノクターンノベルで連載している迷宮学園七不思議も(年齢制限ありの作品ですが)よかったらお読みいただき、楽しんでいただけたら幸いです。


迷宮学園七不思議


https://novel18.syosetu.com/n0865lo/

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