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繋がる密書

 王都の空気は、日に日に重く淀んでいた。

 国王を頂点とする貴族派は、もはや「賊徒の掃討」という大義を掲げ、街に潜むレジスタンスの一掃に動き始めていたのである。


 城門の周囲には増員された兵士が目を光らせ、通りを歩く人々の顔を逐一確認していた。少しでも怪しい素振りを見せれば即座に拘束され、どこかへと連れ去られる。

 市街の裏路地に構えられた拠点のいくつかは既に焼かれ、仲間の何人かが捕縛されたという報せがレジスタンスに届いた。


 「……もう潜伏だけでは持たない」

 カインは低く唸るように言った。

 苛烈さを増す包囲網を前に、彼らは必死に立て直そうと策を巡らせていたが、日々被害は広がっていく。若い仲間が泣きながら、捕らえられた友を助けたいと訴える姿は、胸に痛烈な現実を刻みつけた。




 一方、ノーザン領にいるアリアのもとにも、不穏な報告が絶え間なく届いていた。

 「……やはり、王都は……」

 胸の奥で焦燥が募る。だが今の立場で直接兵を動かすことはできない。軽率に介入すれば、ノーザン領そのものを危険に晒してしまう。


 それでも、ただ手をこまねいていることなどできなかった。

 アリアは机に向かい、慎重に筆を取る。

 書き記すのは――魔獣の肉を安全に処理し、食用に変える方法であった。


 「せめて……食料の不安だけでも、和らげられれば」

 その想いを文に託し、両親のいるレイナルト公爵領へ密使を送ることを決断する。


 幸いにも、王都は混乱の渦中にあり、監視の目も一様ではなかった。今なら隙を突いて密使を送り出せる。アリアは兵の一人に命じ、厳重に守られた封書を託した。




 ――その頃、公爵領グランディア。

 王都に比べれば状況ははるかに落ち着いていた。農地は無事であり、備蓄も保たれている。民たちは不安を抱きながらも日々を営み、領軍の守りによって大きな混乱は避けられていた。


 そこへ密使が到着し、アリアの手紙が夫妻のもとに届けられる。

 文を開いた母は、娘の筆跡を指でなぞりながら、静かに目を潤ませた。

 「……あの子が、ここまで気を回して……」

 父もまた無言で書を読み、深く頷いた。

 「この知識があれば、領民をさらに飢えから守れる。必ず活かそう」


 文の最後には、短い一文が添えられていた。


 ――どうかご無事でいてください。わたくしも、必ず無事でおります。


 その言葉は、公爵夫妻の胸に強く響き、しばし言葉を失わせた。

 王都がいかに荒れていようとも、娘が希望を抱いている限り、自分たちもまた歩みを止めるわけにはいかない。


 こうしてアリアの想いは、遠き故郷へと確かに届いた。

 一方で、王都の影はますます濃く広がり、レジスタンスにとって試練の刻が迫りつつあった。


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