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盟友の宴

 「交易の道を開くためには、まず魔獣の巣を掃討せねばなりません」

 アリアの命により、ノーザン兵とベリシア戦士の混成討伐隊が編成された。

 双方が信頼を築く初めての共同戦線――その緊張と期待を胸に、彼らは森へと向かう。


 湿った土の匂いと、獣の気配。緊張の中で剣を握る兵の背を、ロベルトが静かに押した。


 「怯むな。こちらには仲間がいる」


 やがて、茂みを割って魔獣が姿を現した。牙を剥き、巨体を揺らす狼型の魔獣。ノーザン兵が防御を固める間、ベリシアの戦士が素早く間合いに入り、槍で牽制する。

 戦いは短く、鋭かった。互いの呼吸を合わせ、討伐は見事に成功を収めた。


 「これほど早く仕留められるとは……」

 「お前たちの壁があってこそだ。我らだけではこうは行かぬ」


 兵たちの間に自然と笑みがこぼれ、敵意ではなく信頼が芽生えていくのを、アリアは確かに見た。


 その日の夜、領主館の広間には灯がともされ、討伐の成功と交易開始を祝う宴が開かれた。

 長机にはノーザン領の料理に加え、ベリシアから持ち込まれた香草や香辛料を使った魔獣肉の料理が並ぶ。

 香ばしい香りが広がり、兵士たちが興味深そうに皿を覗き込んだ。


 「魔獣の肉か……こちらでももう馴染みになったが、香りがずいぶん違うな」

 「はい、我らベリシアでは香草や香辛料を用いて調理いたします。毒を抜くだけでなく、こうして旨味を引き立てるのです」


 一口食べた兵が、目を見開いた。

 「……うまい! 慣れていたはずなのに、こんな味わい方があるとは!」

 周囲の兵も次々と口に運び、驚きと歓声が広がっていく。


 酒も進み、やがて歌声が上がった。ノーザンの兵が歌い出し、ベリシアの戦士たちが異国の調べを返す。言葉は違えど、リズムは重なり、場はひとつになっていく。


 その光景を見渡しながら、アリアは胸の奥で静かに息を吐いた。

 「交易だけではない。ここに、新たな絆が生まれた……」


 ちょうどその時――。

 「アリア様ぁ……おかわりを……!」

 隣で杯を掲げたエリーの頬は真っ赤に染まり、目はとろんと潤んでいる。

 「エリー、もう十分よ」

 「いえ……わたしは、まだまだ……んふふ……♪」

 酔いつぶれそうになりながらも、満面の笑みで杯を揺らすエリー。その様子に兵たちは大笑いし、宴はさらに温かな笑い声に包まれた。


 アリアもつい口元を緩め、杯を掲げ直した。

 ――これこそ、盟友の証。


 夜は更けても、灯は絶えることなく燃え続けていた。

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