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第4話 演者は踊る

霧生は仲間の方を一瞬向き、直ぐにドアに顔を向けるともう既に男はいなかった。

油断はなかった。

男が去ったことで条達の症状は治まったが、この状況はパラソルを簡単に潰すことができることを暗示していた。


「進化...それに警告ですか。」

「それより皆さん、大丈夫ですか?」


症状が治まったとはいえ、嘔吐や昏倒したことの影響で条達は憔悴していた。

バードの目的や先程の男の発言から察するに、最近多発している異能者の暴走の原因はそこにあるのだろう。

幸いにも、パラソルにはここ数日の間に暴走して能力に目覚めた者がいた。


「条くん。君がピエロを恐れていたのはいつからですか?」

「俺がピエロが怖くなったのはたしか...あれ?」

「おや?どうしましたか?」

「昔に見たピエロの映画がトラウマだったとは思うんだけど、たしかに小さい頃は怖かったけど今思えばトラウマってより印象に残ったって程度でピエロは人並みくらいには怖いってくらいだったな」

「つまり急にピエロがトラウマとなり恐れるようになったわけですね。おそらくそこに何か隠されているのでしょう。」


バードについて考察をしていると、

RiRiRiRiRi

霧生の携帯が鳴った。


「はい、もしもし。」

「霧生さんですか?私です。卯月です」

「おや、卯月さん。こんな夜更けにどうしましたか?」

「高所恐怖症の患者が落下事故を起こしましてね。そのお話をと」

「落下事故ですか。高所でパニックになってしまったんですかね。」

「いえ、彼は最近うちの患者で唯一能力の制御に成功し始めていた者で、そう言った訳ではなさそうなんですよ」

「そこで、霧生さん。1度彼に会って話を聞いてみてくれませんか?」

「わかりました。明日朝一番に伺いますね。」


霧生が電話を終えると、


「話は聞いていましたね?条くん、明日一緒に行きますよ。」

「いや、俺は明日バイトが...」

「ああ、コンビニですか。そちらの方は、君がうちのバーの従業員となるから辞めると連絡しましたよ。」

「え!?何を勝手に!?てかシフト的に店に迷惑かかっちゃうだろ!!」

「いえ、向こうの店長さんはちょうど息子さんを雇うために誰かのシフトを削りたかったようなのでwin-winでした。」

「えぇ...」


このような軽いノリで俺は明日、明星の会の元に行くことに決まった。


─次の日、朝にバーに入るとそこにはスーツ姿の霧生がいた。

曰く、表上の姿が精神疾患患者援助団体である以上、会長に訪問するため、一応正装をしておくとのこと。

俺は、収容者の親族という設定にするため、私服で大丈夫なようだ。

表に出ると、黒い車が停まっており、中から卯月がでてきた。


「ではおふたりとも、向かいましょうか」


車に乗り向かった先は、明星の会と書いてある表札がある病院のような建物だった。

その一室にいるギプスをつけた男、彼に俺らは会いに来たのだ。


「おはようございます。あなたの話は伺ってますよ。なんでも、高所恐怖症だとか。」

「そうなんですよ。まぁ、正確には高所恐怖症だったという方が正しいかもしれないですけどね」

「だったというのは、もう今は怖くないのですか?」

「えぇ、高所恐怖症で飛ぶことができてたんですが繰り返すうちに克服しましたね」

「なるほど、恐怖症由来の能力を行使することで克服できたわけですか。」

「そうですそうです。でも克服したと思ったら急に飛べなくなって落下しちゃったんですよ。それで落ちたので高所恐怖症が再発しそうですけどね」


ギプスの男はタハハと笑った。

霧生と俺は顔を見合せた。

彼の話が本当なのであれば、恐怖症を克服することが能力の消失に繋がるのではないか。

病室から出ると、卯月が口を開いた。


「異能のことを公表しようと考えているんですよ。恐怖症を克服することで元の生活に戻れるのなら、戻れる方がいいですから」

「公表してどうするんです?」

「異能者を見ていてわかったことがあります。それは、能力を制御しても恐怖に苛まれるということです。そちらの彼も、覚えがあるのでは?」

「たしかに俺もピエロの笑い声で頭ん中がガンガンするなぁ」

「でしょう?それならば、異能を公表して、恐怖症を克服するための支援を募るべきだと思うんですよ」


そう語る卯月の顔は真剣であった。

たしかに、施設内で恐怖症のリハビリを行うのも限界があるだろう。

それに、俺だって忌々しいピエロの笑い声から解放されたいので良い方針だと思う。

その時、カツカツと足音を立てて骨ばった男がこちらに向かってきた。


「彼を紹介します。副会長の鷲尾です。」

「会長、こちらの人は?」

「私たちは、阿良宿を守っている異能自警団の者です。」


そう霧生が握手を求めた。

パンッ

その手を鷲尾は振り払うと、


「異能自警団?うちに入所するわけでもなく社会で異能を振り回してる野蛮人のことか」

「鷲尾!そこまでだ」

「すみません。彼は異能なんてない方が考えている者で時々過激な発言をしてしまうんです。でも、公表で援助を求めるのは彼のアイディアなんですよ」

「なるほど。たしかに異能から開放されれば市民の安全を守れますしね。」


そう言葉を交わして帰ろうとすると、


「あんたらは異常だってことを忘れるな。これ以上暴れるんなら俺にも考えがあるからな」


鷲尾の声は低く響き、何やら妙な雰囲気があった。

様々な思いが交錯する4話。皆さんどうでしたか?

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