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第2話 魚群とピエロ

「条くんならそう答えてくれると思っていました。ちなみに明日ここに来ることはできますか?」

「学校が終わったあとなら暇だし来れると思うけど...なんで?」

「それなら放課後すぐにこのバーに来てください。君にはすぐに能力の使い方を覚えてもらいますから。」


霧生は帰路につく雨宮条を見送りながら考えた。

「最近、異能事件の頻度が高すぎます。何かが水面下で動いているのでしょうか。」


翌日、条はピエロに身体を乗っ取られる悪夢で目が覚めた。


「夢か...」


そう呟き、学校の支度を済ませて家のドアを開けると、どうにも生臭い。

疑問を感じつつも学校に行くと友人である齋藤が駆け寄ってきてスマホの画面を見せつけてきた


「雨宮!これを見ろよ!」


齋藤が見せてきたスマホには、おびただしい量の魚の死骸が道端に散乱している写真だった。


「なんだよこれ!気持ち悪ぃな!」

「だろ!?これ俺の通学路の写真なんだよ!」


齋藤がそう言うと、朝に嗅いだ生臭い匂いを思いだした。いや、思い出させられたのである。

なぜなら、齋藤の服に今朝の匂いが染み付いているのだ。

このような不気味な1件により、学校はその話題で持ち切りだった。

政府の陰謀説や天変地異説など様々な憶測が飛び交っていたが、俺は嫌な予感がしていた。

異能者によるものなのではないかと。しかし、それにしては動機が不明瞭だ。

そのようなことを考えていると、あっという間に放課後となった。


放課後すぐにバーに向かうと、霧生の他に見慣れない人物が3名いた。

その中の大男の1人が俺に近寄ると、豪快に肩を叩きながら話しかけてきた。


「お前がリーダーの言ってた新入りか!俺は玉瓦たまがわら 鉄心てっしんってもんだ!よろしくな!」


鉄心は豪快に俺の頭を撫でた。

口ぶりからしてこの人もパラソルのメンバーなのだろう。

それにしてもこんな大男が何かを怖がるようには思えないが。

他の2人に目を向けると、少年はこちらを気にもせず本を読み続けていて、奥に座っている女は目が合うと舌打ちをした。


「来ましたか。雨宮くん。早速ですが、そちらの彼女、花園はなぞの林檎りんごさんと下の空きテナントで能力の訓練をしてきてください。」


そう言われると、彼女はガタッと立ち上がり、ドスドスとドアへ向かって


「来て。」


と言い、俺はそれについて行くようにドアに向かい2人はバーを後にした。


「いいのか?あいつ、新入りくん殺す気でやるぜ」

「それが一番早く力が身につきますからね。それに、あなた達に殺す気でやらせると条くんを壊してしまいますから。」


訓練所の空きテナントは隙間風で冷えており妙な緊張感が漂っていた。

彼女はおもむろに取り出したカッターで、手首を軽く撫でた。


「な、なにを...」

「私は男性恐怖症の異能力、力の名は守護者イブ


そう言うと、彼女の手首から滴り落ちた血が異形の怪物に変わった。


「死ぬ気でやらなきゃこの仔の餌食になるだけだから」

「男なんか大っ嫌い」


そういった刹那、怪物は俺に飛びかかってきた。

紙一重で怪物の攻撃を避け、距離を取った。

ピエロ化の影響だろうか、自分でも驚くような身のこなしだった。


「意外と動けんじゃ──」


そう言いかけた瞬間横から強い衝撃に襲われた。

彼女は怪物をもう1体出現させていたのだ。

幸いにも放置されたダンボールがクッションとなることで大きなダメージにはならなかったが、脳がグラつく。

フラフラと立ち上がり、前を向くと2体の怪物はいたぶるようににじり寄ってきた。

俺はもうここまでなのだろうか。

怖い。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

恐怖で目の前が真っ暗になると、遠くでピエロの笑い声が聞こえる気がした。

暴走だ。

怒り狂った獣のように伸びた手足を振り回し、トランプは手から溢れ続ける。

しかし、前回の暴走とは違う点があった。

思考が、意識が、残っているのである。


「野蛮な姿ね」


彼女はそう呟き、冷たい目をしながら怪物をさらに出現させて、距離を取った。

条は考えていた。彼女はなぜ能力を暴走させずに行使できるのか。

幸いにも暴走している道化師ジョーカーは怪物を壁に叩きつけ、トランプで切り刻むような残虐性かつド派手に暴れているものの、彼女に危害は加えていない。

考えろ、考えろ。

俺と彼女は何が違う。


「能力の制御には平常心できることが必要なんですよ。」


霧生の言葉が脳裏に過ぎる。

つまり恐怖と向き合う必要がある。

そして先程の彼女の発言を思い出した。



「私は男性恐怖症の異能力、力の名は守護者イブ


わざわざが何を恐れているか口にした理由。

力の名を口にした理由。

それは自分の力による恐怖に対して向き合う心の準備をしていたんじゃないか?

それならばやるべきことは1つ。


「俺はピエロ恐怖症の異能で力の名は道化師ジョーカー、引っ込みやがれクソピエロ!!!!」


そう叫ぶと身体にまとわりつくような恐怖の重みが軽くなった気がした。

依然としてピエロの笑い声は頭に響く。

しかし、手も、足も、トランプも、自分のモノにすることができたことを直感的に理解した。


「こっから反撃開始ってとこか?」


しかし、冷静になり鋭敏となった条の嗅覚に嗅ぎ覚えのある匂いが鼻についた。

生臭い匂いだ。

匂いがどこから漂っているかを目で探しているとその隙に怪物に殴られ、部屋のドアごと吹っ飛ばされた。

そこに匂いの元はあったのだ。

外では魚群が空を泳ぎ、鮫が人を襲う。

クラーケンが車を締め潰す外の世界はまるで、

│幻想的な地獄アクアリウムだった。


「事件発生です。2人とも、鎮圧に向かってください。」


霧生は訓練していた2人にそう言い放った。


訓練していた2人の相性は悪いように感じますが、どのように事件を鎮圧するか。是非次回も見てください

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