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ダイレカ王国軍側。



一万の兵が勇ましく行軍している。我が国の兵を見るだけで誇らしく、アラドルはこの国の王子として生まれた事に感謝した。


今回この軍に加わる事で自分の功績になるのは間違いない。


我が軍は他国からも認められる強さを持っている。最新式の魔法と弾を発射できる魔弾砲撃台は敵を一掃するほどの威力を持っていた。


兵が持っている銃も最新式の魔力装填式銃で一発当たれば人間など吹き飛び、大きいものは威力が格段に増した連続式魔力装填銃で大人数を攻撃できる。


それに自分が持っている剣には魔法効果を付与しているので、振えば火炎攻撃で敵をなぎ払えた。


魔導士もかなりの数を揃えてきたので、遠距離からの攻撃も結界での守りもできる攻守共に隙のない部隊になっている。


「目的地まであと少しか」

「アラドル様。お疲れではありませんか?」

「グレヴィスか」


グレヴィスは魔法と剣の使い手でもあるこの軍屈指の強さを誇る男だ。


「大丈夫だ。問題ない」

「しかし今回の行軍も大義のない味気ないものですな」


軍を動かしているのは王で、その理由はまだ見ぬ他国の領土を奪い国を富ませる、という事だった。


王は昔、遠征途中で偶然見つけたアリゼルという国を攻め落とし、金も人も手に入ったので、それからもずっと獲物になる国を探して同じ事を繰り返している。


名前も知らない、何のやり取りもしていない富を持った国がいい。美女も金も大地も我が国のものだ。それが王のご意志だった。


今回の国は十年前に旅商人から入った情報らしく、王はずっと他国から得た富を使って行軍をし続けている。


アラドルがまだ幼い頃に始まり、今では軍に入る歳になっているので、それだけ長い間遠征が行われているという事だ。


「弱ければ食われる。それはどこも変わらない。貴様だってそうだろ?」

「確かに。弱ければ生きてはおりませんな」


とうの昔に墓の下か、野ざらしか。なにかの腹の中かと、グレヴィスは考えていた。


「勝たねば」

グレヴィスの口から自然と出てくる。その言葉にアラドルは力強く頷いた。


「そうだ。負けは認めない。俺達は勝利して帰るんだ」






ーーーー



発言するにも抵抗があって誰も何も言わずにいるので無言が続いている。


息をする音が聞こえる。


沈黙しているが全員緊張感に身を包んでいた。

映像は停止し、敵軍を拡大して見せている。ダイレカ王国の旗がやけに大きく見えた。



ドミトルは腕を組んで睥睨しながら考える。


これは何と言っていいのか分からない。


じっくり見ても、どんな角度から見ても、薄目で確認しても、強気に想像しても。



アゾマンゾルドの狼二匹ぐらいの戦力しかないように見えた。



縦横無尽に走り回る狼を捕捉できなければ最悪一匹分の戦力にもならないかもしれない。

この軍人どもは弾が当たったら貫通しそうだ。


しかもあの魔弾砲撃装置も小さくすれば子供の玩具によく似ている。

魔力壁を突破しないので衝撃も損傷もなく、ただの光が出て弾が飛び出す玩具なので人気があった。


そして毒物攻撃だが、実際はドミトル達にとっては腹の良くなる健康物質で、一日に三十キロ食べると死に至るらしい。


誰が食うかそんなにも。


しかし他国の軍人にそんな事を言ってもいいか迷う。死にそうな相手にさらに蹴りを入れる趣味はドミトルにはない。


誰か何とか言え。


ドミトルはそう思い、エリオストに視線をやるが逸らされる。

ヤツも死体蹴りをする趣味はなさそうだ。他の隊長格など宙を見ている。ふざけるな。


おい、じじい。せっかく来たんだから発言しろ。


「トイレ行ってくる」


戻って来ない気だろ。その財布は孫娘に何か買って持って行く気なんじゃないだろうな。

自由すぎるだろ。


「よ、鎧は、骨董品みたいで・・・カッコイイデスネ!」


誰が敵軍を褒めろと言った。じじいの補佐官。そして出て行くな。帰ってこい。

そんなふうにドミトルは思うが誰も止める事はなかった。


「サスガですね。シンジられません 」

「確かに、古風な感じがステキです」

「銃とかも、センスがいいな」

「ソンケイします。いいですよね」


だから軍の会議で褒めようとするんじゃない。ここは飲み屋じゃないんだぞ。


ドミトルは頭の中で罵りながら発言をする事もなく、ひたすら黙っている。


皇女であり総隊長である自分が、安易に他国相手に言うのはリスクがあると感じたからだ。


「続きの映像を流してもよろしいでしょうか?」

「・・ああ、そうしてくれ」


ラブレスが確認するのにドミトルは頷く。


「では再開します。これからが我々特殊能力者が総力をもって手に入れた情報です」


聞いてないぞそんな事、とドミトルが驚いた顔をしてラブレスを見る。

自信ありげに優雅に腰を曲げたラブレスは手を映像の方向へ差し向けた。


「じっくりとご覧下さい」


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