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タコクが来たよ


名前が長かったせいで亡くなった上位貴族の隊員がいる。

呼び捨てにできずに危険を知らせるのが遅れたからだ。

それから名前を短縮させない者は、名前で亡くなる可能性がある事を家族に知らせる義務がある。

どんな上位貴族でも危険な状況の時に、呼び捨て、短縮されても軍の規定で許可されている。

従わない者、制裁を加えようとする者は、皇帝陛下の名の元に罰則を科される。

軍の規則違反として三ヶ月の減俸と、一般隊員からのやりなおしを命ぜられ、それも拒否した場合は犯罪者として刑に服す事となる。



「おい、ラブキュン。会議の資料は出来たか?」

ドミトルが隣にいる人物を見る。


軍から支給された灰色の服の首元が外され、白に近い水色の長い髪を後ろに流している。切れ長の紫の瞳の男は、ドミトルを真顔で見ていた。


「総隊長、ラブレスキュールと言う名前を短縮するなら、ラブレスかレスキューかキュールにして下さい。お願いします」


第三補佐官のラブレスは冗談の通じない声音でドミトルにそう返した。




「敵軍の情報はどれぐらい手に入った?」

ドミトルが聞くとラブレスは直ぐに返答する。



「遠見と映視と心眼の特殊能力者を使ったので大体の事は把握できたかと」

「そうか」


東の国境での小競り合いなら毎回の事ではあるが、他国との戦争など六百年ぶりぐらいだ。


別に国を制圧しなくても土地なら沢山あるだろうがとも思うが、他人がいる場所を奪う方が有益か調べる必要がなく楽だと思っているのかもしれない。


ドミトルは歩きながら手元の書類を見ていた。


時間をかけて貯めたものを奪う方が時間の短縮もできるし利益は大きい。

五百年以上続いた財を奪えるなら、人一人の人生を賭ける価値はありそうだ。勝てばの話だが。

そう考えてドミトルは獰猛な笑みを浮かべる。


ラブレスは三メートルほどドミトルから距離をとった。





ーーーー


「待たせたな」


ドミトルが会議室に入ると招集を受けた者達が揃っている。


部隊の隊長とその補佐官が集められ、城にいる上位貴族も数人参加しているようだ。しかも通常は帝都にいる事のない王獣討伐部隊の隊長と補佐官までいる。


人相手に何しに来たんだ?とそんな事を思いながらドミトルは王獣討伐部隊の隊長に声をかけた。


「とうとう帝都まで徘徊しに来たのか?」

「うるせぇ、こちとら来たくはなかったが呼ばれたんだから仕方ねぇだろ」

目元に皺のある厳つい顔をした男はドミトルに不機嫌そうな顔を向けた。


名前をチェルストンと言い、遠方で命級ランク任務をこなしている。


王獣討伐部隊とは王獣と呼ばれる大型の獣相手に戦うイカレタ部隊で、王獣と戦う以外は基本関与しない。


ドミトルは一週間に一度、特殊能力者の作った転移陣で長距離移動を一瞬で行い、王獣討伐の参加と確認をしていた。


ドミトルは椅子に座り、ラブレスの方を見る。


「ラブレス、中央には映像を、皆の前には資料を映せ」

「了解しました」


ラブレスが特殊能力を使うと立体映像が中央に出てくる。


空から映した光景には一万人程度の軍隊の姿があり、鉄の鎧のようなものを着てゆっくりと行軍していた。


中央には銀色の装備に金色を少し足した派手な装いの男が白い馬に乗って、腰には剣を装備している。


持っている武器などを拡大してみると、剣や槍、銃のようなものをもっており、大きいものは連射できるように作られているようだ。手動で持ち手を回転させ弾を飛ばすようにしているのか長く連なった弾が置かれている。


そして魔法砲撃装置のようなものもあり、こちらも弾が貨物車に積まれている。魔法を充填しての攻撃と弾につまった爆発物と毒物攻撃のようだ。


貨物車は地面から浮いているので山道でも止まる事なく移動できていた。


進軍してきた国はダイレカ王国。


国民の総数は百三十万人で肥沃な土地に住んでおり農業も盛んで主に麦を育てている。


補給部隊を先行して展開し十年ほどかけて今の地点までやってきた。


ギルデイザイス帝国国境まで入るのに後二ヶ月はかかるらしい。



ドミトルは険しい顔をしながら映像を睨みつけるようにして見ていた。

何故、今の今までこのような情報を知らなかったのか、それには訳がある。ギルデイザイスの国民の頭に【核】と呼ばれるモノがあるからだ。


その核は、南の国境付近にある【空間の歪み】に反応し近寄る事ができない。そのせいで南の国境の外を調べる事も興味を持つ事もなかった。


しかし今回は特殊能力者に少し無理をさせ、南の国境の外の調査をさせている。


特殊能力でさえも空間の歪みの影響を受けるのであまりやらせたくはなかったが背に腹はかえられず実行に移す事となった。


その南の国境の外からやって来るのが今回のダイレカ王国の者達という訳なので、非常に珍しく興味深かった、のだが。


眉間を揉みながらドミトルは考える。


会議室にいる全員が黙ったまま喋る事をしなかった。



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