宿舎6
暗く狂暴な表情をしている。
それは獣に対応する時よりも、殺意にまみれていた。
「まず初めにそいつの家を特定しましょう。全ての家族関係を調べ上げて、帝国に弓引く逆賊だと知らしめてやりましょう」
「ご家族の方は知らないのかもしれないですしね。線引きは必要でしょう」
アタランテの言葉にアルフォンドが答える。
ゲルモンテは二人の話を聞きながら先を続けた。
「ルドバンに言えば直ぐに特定するだろ。実働部隊は俺も参加するし、リランヌが嬉々としてやるから問題ない。あいつは根っからの皇帝一家至上主義だ。総隊長を殺そうとしたヤツは許さないだろ」
「死んでわびろ、ぐらいは言いそう。死んでも許さないけど」
「アタランテもそう思うか?俺もそう思う。たかだか一犯罪者ごときが帝国に喧嘩を売るとはいい度胸だ。そんなヤツはもう国民でも何でもない。始末してやる」
三人の魔力が体からもれ出て、炎のように揺れている。
それをドミトルは止めた。
「こら、止めなさい。犯罪者の取り締まりを何だと思ってるんだ。事情がない限り命を奪うのは禁止だ。それに俺を殺そうと攻撃してきた者は全員、王獣討伐に送られる事になっている。お前達が報復する必要はない」
「そうですけど・・」
「・・・・」
ドミトルの言葉を聞いても三人は不服そうにしている。生きている事に不満があるようだ。
「これは決まりなんだ。分かったな?」
念を押すようにドミトルが言うと、アタランテが唇をつきだしてムスっとする。
「ルナミリス様が攻撃されたら違うのに・・」
「それは殺す」
ドミトルの言葉を受けて三人は冷たい目で見る。
「どーーして総隊長なら駄目なんですかっ!!」
「そうですよっおかしいでしょ!?」
「そうだ、そうだ!」
三人から抗議を受けるがドミトルは引かない。
「姉上は厳重に守られているから襲う相手もいないんだ。俺は外でうろついてるだろうが。一々殺していたら俺のイメージが最悪になるだろうが」
本来はドミトルに攻撃した者は、その場で殺害を許可されていたが、それを変更したのは本人だった。
皆殺しにしていたらドミトルの周りは血だらけになる。さすがに帝国のイメージも悪すぎた。
エルスドラのような神のごとき美貌を持っているならまだいい。ドミトルがやると殺戮の化け物と呼ばれそうだ。
だから隊長格や高位貴族もそれを許している。
それにドミトル自身が強いので無駄な殺しを嫌っているのも理由の一つだった。
時間が経過すると三人がやっと大人しくなる。
自分に張り付いているアルフォンドをドミトルは見下ろした。
「もういいだろ。いい加減離せ、アルフォンド。少しは落ち着いただろ?」
「落ち着いてません・・」
あんなに強気になっていたアルフォンドがまた意気消沈している。二重人格か、と思いながらドミトルはアタランテを見た。アタランテも落ちつきを取り戻している。
これはもう怪我をしても誰にも報告しないぞ、とドミトルは決めた。
再生能力があるのだから問題はないと思う。
しかもその能力も他の者達よりもずば抜けて高く、軽い怪我なら三十秒もあれば回復する。
深く斬られたとしても、魔力操作で傷を押さえる事もできるので、それで再生すれば、軽い傷と変わりない時間ですんだ。
最終的にはどうせ無傷になるので、表面上、超人になる事もできる。発見されなければ問題はないのだから、それぐらいならドミトルにも出来た。自分でも満足できる解決方法があったので安堵する。
自分の事がすんだので、アルフォンドの元気のなさに考えを巡らせた。
「アタランテ、アルフォンドを恋人候補の一人にどうだ?」
「来世でどうぞ」
アタランテは辛辣な事を言う。
「少しは優しくしてやりなさい。なら、ファイディなら可愛いだろ。ファイディになら話をしておいてやるぞ」
「そ、それは総隊長。可愛いが旅だってます」
青ざめた顔でゲルモンテが言ってくる。
アルフォンドも首を振っていた。
いつもの二人に戻っている。ファイディの可愛さは最強だな、とドミトルは感動していた。
「そうか?俺の中じゃ可愛いんだが。後は知り合いは沢山いるが女性問題を抱えているアルフォンドを紹介するのもな。後、紹介できるのは殲滅部隊のヤツだが、あいつらなら女性問題なんぞ裸足で逃げて行くぐらい強烈だぞ」
「強烈でいいんです。紹介して下さい」
「ファイディで青ざめているぐらいのお前達じゃあな・・」
「ちょっと総隊長。紹介するのしれっと俺も混ざってませんか?」
ゲルモンテが言っているがドミトルは聞かなかった。
「当たって砕けろでいいですから紹介して下さい」
「そこまで言うのなら分かった。二人に紹介してやろうじゃないか。俺も殲滅部隊と交代で仕事をしに行くから一緒に連れて行ってやるよ」
「ありがとうございます!総隊長!」
「ゲルモンテ、アルフォンド一人じゃあ心細いだろうからお前もついて来い。殲滅部隊の見学はいい経験になるぞ」
「・・総隊長が言うならそうしますよ。若手の時に経験できる事じゃないですからね」
「え、殲滅部隊のおねぇ様方にお会いする事ができるなら私も行きたいですよ」
「アタランテもか。三人か・・まぁ三人なら・・」
「誰かいるのか?ただいまーー・・あ」
ドミトル達の話し合いが終わろうとしている時、丁度モイスが帰ってくる。
そしてドミトルに抱きついているアルフォンドの姿を発見した途端、踵を返した。
「さてと、今から遊びに出掛けるか」
「モイス」
ドミトルの呼び止められてモイスは立ち止まる。
「こっちに来い」
「・・・・くっ。間が悪すぎだろ、俺」
モイスは三人の所まで歩いて行く。
「参加者は四人に決まった。殲滅部隊には四人で行くぞ」
「何で突然殲滅部隊に行く事が決まってるんですかー!」
モイスも加わったのでアルフォンドはドミトルから手を放す。
そんなアルフォンドの頭を撫でた。
「モイスも一緒で安心したか?良かったな」
心労が溜まっていたアルフォンドを労るようにドミトルは言う。
それに答えるように笑顔を見せた。
「はい、ありがとうございます。モイス、一緒に行こう」
爽やかな笑顔を向けられたモイスだったが、そんな事はおかまいなしだった。




