アラデルギル区域8
正常に戻ったアラデルギル区域は相変わらず戦闘の音が聞こえてくる。
色々な制限があるので激しいものはないが、ぶつかり合う金属音が断続的に周囲に響いていた。
エリシスは大型の弓を引くと放つ。遠くにいた敵の肩を正確に射抜くとその場を離れた。
直後、自分のいた場所に投擲された岩が直撃する。
そんな事は気にもせずにエリシスは森の中を移動した。
近場には川と岩場もある。
アラデルギル区域内の地形は一ヶ月ごとに特殊能力者が変えているので慣れるという事がなかった。
順番に国から特殊能力者を派遣して好きに変えているので、高さの上限はあるが、景色も全く違う場所になっている。
勝ち負けが存在せず、人員が足りなくなったら補充するだけなのでデルモスラウナとギルデイザイスは自国の能力者の好きにさせており、商売がかかっているアラビスレイドだけが見栄えを気にして時間をかけて岩などの配置も変えており、時には珍しい木も植林していた。
木は生命力が強いので、時にはエリシスが踏んだ枝が反発して激しく上下する事もあったが、そこは慣れているので振り落とされずに上手く移動する。
地面を駆けたり、木に駆け上がって枝から枝へ跳んで移動したりを繰り返す。
それが項を奏しているのか途中で攻撃が当たる事がなかった。
遠くでレウィングが水色の剣で敵と斬り合いをしていて、敵の太股を斬ると、それで剣を下ろす。
決着がついたので怪我を負った敵は、自分の味方に連れられて医療班の元に連れていかれた。
国ごとに腕章の色が決まっており、アラビスレイドは白に近い明るい黄色に白金色を少し混ぜたような色をしている。
デルモスラウナは深い青色に白銀色を少し足した色で、ギルデイザイスは明るい翡翠色に同じように白銀色を足した色をしていた。
三つとも光が当たると煌めくように工夫されている。
隠密するのが難しくなるようにされていた。
服装の色は白を基調にしたものと決まっており、腕章が目立つようになっている。
腕章以外の色は好きに使用してもいいようになっているので、戦場だとしても目立つ色を使用している者もいた。
レウィングとエリシスの腕には白黄色の腕章が付けられており、敵側の腕章は深青色で、先程の敵はデルモスラウナから参加している戦士だった。
エリシスがレウィングの元にやってくる。
「そっちはどうだった?」
「ちゃんと射抜いたよ。一人脱落だね」
「じゃあ直ぐに移動しよう。この場所は囲まれるだろう」
「分かった。三キロメートルほど北に行こう。仲間もその方向に移動しているみたいだ」
「了解」
レウィングとエリシスは走り出す。風のように走り抜けるので、当たった葉っぱが千切れクルクルと回ってゆっくりと落ちた。
枝をすり抜け、岩も避ける。川から出ている岩の上を走って飛び越えると、回転しながら木の上に上る。
そして次の枝に乗って跳ねると、また回転しながら遠くの岩の上に着地し、それから跳ねて崖を横向きに走る。
止まらずに走っていると森の中に、自分達の仲間が見えた。
「よし、見つけたぞ」
「発見されやすいように待っていてくれたみたいだね。手を振ってるよ。でもちょっと危ないね」
エリシスは勢いよく止まると、足を上げて勢いよく踏み込む。
崖に足をめり込ませ体勢を整えた。
そして肩に掛けていた弓を持つと、矢を引いて放つ。猛スピードで矢は飛び、仲間から離れた場所にいる隠れていた敵の足を地面に縫い付けた。
一緒に止まっていたレウィングも、崖に足をめり込ませたままエリシスを見る。
「よく気づいたね」
「弓を使う者は目が良いんだよ」
「さっきのは確実に街で映像になるな。僕も頑張らないとね」
そう言ってレウィングは崖の上に向かって走り出す。
上から来た敵と刃を交わした。
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アラビスレイド光王国。
大通りの一番目立つ場所でエリシスとレウィングの立体映像が映し出されている。
周りには高い建物が立ち並び、お洒落な雰囲気のある町並みだった。
その建物の上を使って道路が通っている。移動する浮進送車が見えるが、その車体はギルデイザイスの丈夫で単純なものとは違い、細かな装飾もされ優美な姿をしていた。
下の大通りにも大きい浮進送車が通っている。早歩きしている者も多く、速度が出すぎないように注意していた。
地面から四角の長い棒状ものが立ち、先端からは水が流れて下に落ちる。水が周りに流れていかないように石で囲まれていた。
空中に浮かんでいる手で抱えるぐらいの大きさの岩石には、植物が生い茂り花も咲いているので、それを階段上に揃えて道行く人に見せている。
周りには木々も植わって爽やかな風景になっていた。
立体映像の近くには横長い茶色の建物もあり、その建物ではレウィング達を参考にして作られた持ち物や絵姿が売られている。
一部のお金はレウィング達に入るようになっていた。
矢を射るエリシスの姿が映し出されると、わっ、と声が上がった。
「きゃーエリシス様、カッコいい」
女性達が集まって称えてる。
「レウィングが三人やったぞ」
レウィングが黒い敵を迎撃に向かうと、その剣さばきに男女関係なく歓声を上げて喜んでいた。