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アラデルギル区域7


最初にした時と同じように自分の魔力で衝撃波を制御し、アラビスレイドに到達する前に瞬時に消す。

そして今度は反対の手に持ちかえると、ドミトルは同じように剣を振った。


「ちょ、ちょっと。何してるんですか!」

「迎えに来るように玄関をノックしてるんだ」

「どんな訪ね方をしてるんです。止めてください」

「大丈夫だ。もう直ぐ来るぞ」


その後、二回ほど剣を振ってからドミトルは鞘になおす。すると、ドミトルから離れた位置でまた地面が光り、幾何学な模様が浮かび上へと浮かんでいく。

緑の眩しい光が幾何学模様の下の空間を照らし、その光りの眩しさにドミトル達は目を細めた。


そして出てきたのは、青に近い緑の髪を肩より少し伸ばし瞳は黒の弓使い、レウィングの同業者の射抜く者のエリシスだった。


服装はレウィングとそっくりだが、中の服と付けてある紐が黄色で、出てきた時から土下座をしている。


「命ばかりはお助けを」


それを見たレウィングは頬をひきつらせた。


ドミトルとレウィング、そしてエリシスの間に一陣の風が通り過ぎていく。


沈黙が続く中、ドミトルは少し前に答えの出なかった疑問を解明する為にレウィングを見た。


「お前の国はいつからデルモスラウナになったんだ?アラビスレイドの流行りなのか?」


国民を【供物】として捧げる国、デルモスラウナ神王国。

アラビスレイド光王国は戦士をアイドル化して流行らせているので、デルモスラウナとは全く違う国のはずだ。それがドミトルが戦場まで来て抗議したとたん、こうして人間を送ってくる。


戦うつもりだったレウィングの方がドミトルには好感が持てたので、こうして助ける事にも躊躇しなかったが、アラビスレイドがどういうつもりでレウィングを送ってきたのか言わなくても分かった。

その決定打が土下座をしているエリシスで、二人はドミトルを鎮める為の生け贄として送られてきたようなものだ。


殺して溜飲を下げろとでも言いたいのか、それとも殺さない事が分かっているから送ってきたのか。

ドミトルは後者だと思っていた。


「実は僕も知りませんでした。色んなものが流行っていますが、まさかこんな所まで流行っているとは驚きですね。ハハハ」


全く笑っていない声でレウィングは言う。

その目は、帰ったら許さない、と言っているように見えた。


それには何も言わず、ドミトルは土下座をしているエリシスをきちんと見る。

他国に力を見せつけ、結果的にデルモスラウナ神王国の第一神子まで呼び寄せる事に成功した。

これでドミトルの一つの目的は叶った状態だ。

次にアラデルギル区域の問題に方をつける必要があるので、目の前に現れたエリシスをアラビスレイドの使者として扱う事にする。


まともな使者を送ってこないアラビスレイドの意見など今は必要ないので、いるのは形式上の同意だけ。正式なものは後でどうとでもなると思っていた。


「エリシスだったな。今回は俺の呼び掛けに答えてくれて感謝する。アラデルギル区域の問題は解決に至った。代表者のレウィングを連れて帰り、アラビスレイドの王族に報告を頼む」


ドミトルはエリシスに向かってそう言ったが、エリシスは意味が分かっていないかのように固まっている。


「え?えっ?」


そう言う意味のない言葉しか出てこない。

ドミトルに付け足すようにしてレウィングも可哀想な同僚に声を掛けた。


「もう問題は解決したんだ、エリシス。僕を連れて帰ってくれ」

「わ、分かった」


エリシスはレウィングに近寄ると肩を貸して立ち上がる。

そして王族から受け取っていた転移のできる指輪を使うと、転移陣が現れ二人の体が光る。しばらくするとその場から消えた。




その場に立っているのはドミトルだけになる。

やっと肩の荷が下りて、身軽になったように感じた。


「これで一応は決着がついたな」

「総隊長ーー!」


大声をかけてきた方向を向くと、リングレアが孟スピードで走ってきており、カミラダ達は後方で手を振っていた。


こちらにやってきたリングレアの背後に土煙がたっている。急ブレーキを踏むようにして止まると、ドミトルの姿を確認した。


「ご無事で良かった」

「当然だ。傷一つないぞ」


ドミトルが自分の体を見せるようにするとリングレアが確認する。

服も破れていなかった。


「まさか第一神子が降臨するとは思いませんでした」

「俺もだ。さすがに感じ取った時は驚いたな」

「攻撃は受けませんでしたか?」

「魔力の攻防だけだ。手は出してないぞ」


それでも信用がないのかリングレアはさらにドミトルの体を調べている。

追い付いてきたカミラダ達が呆れた顔をしていた。


「あのですね、手を出したかどうかなんて、そんな事は気にしてませんよ。総隊長が心配だっただけです」


カミラダ達の心配を他所に、ドミトルは平気そうだった。


「お前達のその言葉を聞けば、エルスドラが笑ってくれるかもしれんぞ」

「え、総隊長。第一神子の名前を呼んでいるんですか?しかも呼び捨て」

「本人から名乗られたんだ。相手も俺の正式名称を呼び捨てにしているし、俺が相手の名前を呼び捨てにしても問題はないだろ」

「あの神子様から認められるとは驚きです」

「俺個人なら不可能だろうが、俺の背にはギルデイザイス帝国がある。それなら同等の立場で話す事は当然だろ」


「我らの総隊長は頼もしいですね」

「お前達の前で無様な姿は見せられんな」


カミラダ達はホッとしたように笑顔を向けている。

ドミトルの手の平まで調べているリングレアを微笑ましく見ていた。


心配をかけたようなのですまなかったな、とドミトルは思い、心労をかけたようなので話を変える事にする。皆が楽しみにしているあの話だった。


「それはそうと行きたい温泉は決まったのか?決めないならこちらから勝手に決めるぞ。ブルトランが」

「ゲッ、それは止めて下さい。あの人、見た目よりもずっと年をとっていますし、老舗中の老舗を選んできそうで怖いですよ。私達はもっと自由な温泉がいいです」

「じゃあ、街まで戻りながら温泉を決めるか」


ドミトルに促され全員が歩きはじめる。


リングレアはもっと調べたかったようで少し不満そうだが、ドミトルはその背を押して一緒に歩いた。

大丈夫だ、と二度軽く背を叩くと、少し納得したのかリングレアはドミトルから視線を外す。

行きたい温泉の意見を色々と出し合いながらしばらく歩くと、境界門まで全員で転移した。


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