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アラデルギル区域2


しばらく仁王立ちしながら待っていると、ドミトルは何かを感じとる。


来たな、と思っていると目の前の地面に光り輝く文字が浮かび上がってきた。


数個だった文字が、百、二百と数を増やしていく。

収束と拡散を繰り返しながら、文字が転移陣を形成していき、規則正しい動きに変わった。

光の文字が完成すると中心部分の光が弾ける。その弾けた光の部分からゆっくりと何かが出てきて、少しづつその姿を現していった。


デルモスラウナの特徴のある転移陣なので、ドミトルは自分が知っている神王国を思い出す。

晶映石に入っていた映像には、神殿のような巨大な城が映っていた。

天にも届くような巨大な城は、まるで神々が住んでいる場所のように見える。


その城に住んでいるのは神王・グレイドラ、神妃・ラーミドラ。第一神子・エルスドラ、第二神女・シャラドラ。第三神子・イクセドラ。第四神子・アルシェドラ。


全ての王族はまるで神の化身のように美しい姿をしていると言われていた。

その中でも、話に出てくるのは第一神子・エルスドラと第二神女・シャラドラで、第一神子・エルスドラは夜の神と呼ばれ黒く美しい姿をしていると言われ、第二神女・シャラドラは炎の女神とも言われる美しい姿をしていると言われている。


王族の姿を映す事は禁じられているので表に出てこず、一般人が姿を見たとしても消される事が多かった。


デルモスラウナは古代神を崇める国で、王族は儀式や祭典をして国民を導いている。いつか自分達は古代神の身元に帰り、国民は皆、古代神の信徒だという国だ。


ギルデイザイス帝国とは全く違う国だが、デルモスラウナ神王国は古代神を頂点に、王族と国民が団結する強い国で、国力も非常に高かった。


ドミトルは堂々とした態度でデルモスラウナを出迎える。引く様子は全くなく、話し合う準備を整えていた。


端から出てきたそれは全ての姿をドミトルの前に晒していく。

角から始まり、全体像が見えてくる。白くて大きな輝きはその存在を主張していた。


光が落ち着くと、残ったのは何の変哲もないただの白い箱で、ドミトルは無言でそれを見る。

「・・・・・・」


自分の常識が相手国に全く通じない事を実感した。






ーーーー



ドミトル自身は戦士を送り込んでくると確信していたのだが相手が送ってきたのは箱で、意味が分からずしばらく観察していたのだが、一応開けてみる。


贈り物のようなので失礼にならないよう慎重に手を伸ばした。


簡単な封印が施されていたのだが少し叩くと壊れたので、そんなに手間もかからず開ける事が出来そうだ。


ドミトルは注意しながら、そっと開ける。

何かあると思っていたがすんなりと箱は開いた。


中身は、目に映る青い光景が美しく、何かを青い紙で包んでいるように見える。

ドミトルはそっと閉めると、自分の魔力で簡単な封印を施す。見える仕草は柔らかいが、魔力は高速で動いていた。


きちんと箱を封印する事ができたようで、ドミトルの表情の強張りがとれる。

これで中身が勝手に飛び出す可能性がなくなったので安心できた。


「危ない所だった・・・」

デルモスラウナ神王国がどんな国か知ってはいたが、まさか他国の自分も同じやり方をしてくるとは思ってもいなかったのでドミトルは常識の通じない国だと再認識する。


「まさか戦士を箱で送ってくるとはな・・」


青い紙を剥げばデルモスラウナの戦士が出てくるようになっていた。


ドミトルを不意打ちで倒そうと思った訳ではない事は分かっている。デルモスラウナ神王国と言うのが根本的にギルデイザイス帝国と全く違う習慣があるというだけで、何が悪いという訳でもなく、生き方がそもそも違うだけだ。


デルモスラウナの国民は、古代神を崇める王族の命令で【供物】として捧げられる信者という認識があり、それを誇りに思っている。


王族が正式な儀式をする時には、一番古い神殿にて祈りを捧げ、古代神に供物として捧げられる者は青い紙に包まれた供物になる。

王族の青い剣によって破られた青い紙は消え、そして捧げられた供物は古代神のいる場所へと旅立つ。


辿り着く前に死んでも、辿り着いた先で死んでも、古代神へ捧げられし供物としての名誉を賜る事ができる。それがデルモスラウナの国民だ。


ドミトルは白い箱を見る。

これは王族が作り出した簡略儀式だ、と思った。


白い箱はギルデイザイス帝国に見立てたのだと予想する。

そしてドミトルが箱を開け、青い紙を剥いだなら供物は捧げられた事になり、供物として送られた戦士はドミトルの忠実な(しもべ)となったのだろう。


この箱に込められた本当の意味は、中身(供物)を持ってお帰り下さい、なのだとドミトルは感じた。


「さっさと干渉地帯を通常に戻せばいいだけだろうが。そんなに俺が戦士達をお見合いにかこつけて全員持って帰ると思われているのか?俺はこの場所に興味すらないんだぞ」


そもそも犯罪者の取り締まりの方が忙しく、近場にあったとしてもアラデルギル区域の境界門までしか見回っていない。

隊員達の様子を見て直ぐに帰っていた。


そんな風にドミトルが箱の前で悩んでいると、今度は違う気配がする。



「今度はアラビスレイド光王国か?」



ドミトルはその方向に目を向けた。


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