戦士ティアンナの受難2
「やっっっっっ………」
晩餐用の正装(気合◎)に身にまとった身体を雑にカウチに投げやり、ティアンナは吠えた。
「………っっってらんないわね!!」
「お嬢様、御髪が」
「かまやしないわよもう。
ねぇ、あんなパターン想定してた!?
答えよ調査員!!」
「いえ、完全に斜め上でした」
「そうよね?!」
「お嬢様、この後の予定はどうされますか」
「予定通りいくわよ!
衣装チェンジよ存分にやってちょうだい!」
ぷんすか言いながら、ティアンナはドッスンとドレッサーに腰掛けた。
乱れたかみを解く調査員(侍女)に身を任せる間、ティアンナの頭には先程までのシーンが何度も蘇った。
――――――
馬車から颯爽と現れたレイフォード・エルスワース侯爵令息はそれはもう絵姿の何倍も輝かしく、
サラッサラのやわらかなベージュブラウンの前髪が風で靡くたびに見え隠れする理知的な額に、瞬きするたびに光がちらちらと舞う瑞々しい瞳に、高さのある馬車から危なげなく着地するしなやかな体躯に、
ティアンナはバッキバキにときめいた。
そのかんばせに隠しきれない喜色をたたえたレイフォード・エルスワース侯爵令息はこちらを向き直り一礼する。
それを合図に母と共に彼の元へ向かう。
挨拶の口上を母が口にせんとした最中、令息はくるりと背を向け、馬車の中から不格好に這い出てくる誰かに手を貸し、丁寧に、丁重に着地させた。
ん?
…紳士。紳士ね。素敵よ。
ははーん、アレがケイナか、
もはや半分忘れかけてたわ。
母と自分が挨拶する間、ケイナ嬢は5歩しっかり下がり距離を取り、なんなら気配も消す。
「この度はお世話になります。
こちらは祐筆のケイナ嬢です」
レイフォード青年は自らの補佐を紹介し、
……ちょっと照れた。
なんで照れる?
視界の端でケイナ嬢が常識的な礼を取るのが見えたが、
ティアンナの頭は『???』でいっぱいだった。
それからはもう、違和感の連続だ。
とにかくケイナ嬢が平民としての常識的な行動をとり、
レイフォードがそれをひっくり返す。
ケイナ嬢があからさまに嫌がって引っ込もうとするのに、
レイフォードが引っ張り上げて構い倒す。
隣にいる母も、ティアンナも忘れかけていた「平民の祐筆=愛人説」が頭を掠めたようで、
ケイナ嬢をすかさず攻撃しだし、
ああもうなんか居たたまれない。
見てよあのケイナ嬢の迷惑そうな顔、半分意識を遠くに逃がしちゃってるじゃないの。
…あの令息、ちょっと配慮に欠けるんじゃありません?
むむむとティアンナの中で、レイフォードへの不信感が頭をもたげる。
しかし、レイフォードはしっかりお母さまのケイナ嬢への嫌みには嫌悪感を示し、
さっさと引き上げようとする素振りが見えたため、
ティアンナは慌ててカードを渡す。
…その反応もイマイチ。
晩餐会の後の交流の約束は取り付けたが、
はっきり言って全く手ごたえがない。
退出していった二人の背を見送り、
「…お母さま」
「あの平民、ずうずうしいこと!
自分がエルスワース侯爵令息の隣に相応しいとでも思っているのかしら、非常識な」
ぶううと音が鳴りそうなほど頬を膨らませて文句を言う母を見やり、
ティアンナは大きく息を吸った。
「どこをどう見たらそう見えるのですか!
ケイナ嬢は徹頭!徹尾!弁えた行動を取っていたではないですか!
非常識なのは!
平民に対し貴族に並べと命令するエルスワース侯爵令息と!
それを嬉々として攻撃するお母さまでしょう!
何やってんですか、雰囲気最悪ですよ!」
「だ、だって、身分不相応にも令息と隣り合って座るなんて…」
「座るよう命令していたのはその令息でしょう!!」
「でも、素直に座るなんて…」
「お母さまあなた、王族に命令されてお断りできますの?!」
「それはちょっと無理だけど…」
「彼女も一緒です!
彼女からしたら理不尽極まりない仕打ち!」
「で、でも…」
「でもじゃない!!ティアンナは心底恥ずかしゅうございました!!」
自らの母に強烈な言葉のパンチを食らわせ黙らせたあと、
ティアンナは思案した。
短い時間の観察ではあるが、
職務に徹する常識人に見えるケイナに構い倒すエルスワース侯爵令息。
これ…「愛人」説を考えてたけど…
「愛人未満」の可能性あるな…?
もしあの令息の様子がいわゆる「アプローチ」で、
それに全然気づかないケイナ嬢、という図式が正解なら、
かの令息は自らの思い人とふたりっきりで旅をしていることになる。
そして現状、まったく彼女に響いている感じがしない。
これ…わたくし、
文献上散見される「当て馬」もしくは「咬ませ犬」なる存在にされる可能性あるな…?
「…やってらんないわね」
彼の大きな手の中で、雑に折り込まれていった菫のカードを思いだし、
ティアンナは痛む胸を見ないふりをした。
――――――
それからの晩餐会はもっと悲惨だった。
ケイナ嬢は契約書作成中とのことで出席しなかったが、
正装で現れたレイフォードは見るからに落ち込んでいた。
心ここにあらず、べしょべしょに落ち込んでいる。
家族が振る話題にも当たり障りなく返答し、何なら自分から話を始めたりもするものの、
どこか覇気がなくカラ元気といった素振りだ。
ティアンナ一家に対する怒りは感じ取れないが、
少なくとも、寄り添おうという気持ちも感じられなかった。
こりゃなんかあったな。
食後すぐに部屋に引き上げていったレイフォードを見送り、
ティアンナ一家は顔を見合わせる。
口を開いたのは父だった。
「…すまんティアンナ」
「…一応聞いてあげますけれど、一体何を言ったのです」
「大した事ではないんだ。
その、平民を祐筆と言って傍に置くならば、
その場所にうちの娘はどうかと…」
ティアンナはあちゃーと天を仰ぐ。
「だ、だって、異世界人で平民の祐筆なんて、
つまりは愛人ってことだろう?
そのような者を手元に置くならば、
うちのティアンナのほうがよっぽど、って…
あんなに彼が気分を害するとは思わなかった」
まあ、それはそうだ。
実際ティアンナも、ほんの数時間前までそう思っていたし、
何ならそうするつもりだった。
でも、レイフォードが恋をしているならば話は別だ。
まだ成就していない、育ち盛りの恋なら尚更。
いくらティアンナが美しかろうと真心を捧げようと、
恋するものの情熱の注ぎ先を、他に逸らすことはできない。
「お父さま、こたびのお話、諦めてくださいませ」
「しかしティアンナ、お前はあんなに努力していたではないか」
「仕方がありません。
今後も善処は致しますが、期待はしないでくださいませ」
「ティアンナ…」
家族の視線を背中に受け、ティアンナは退出した。
ただ、家族にはすっかり敗北宣言をしたティアンナであったが、
ここで勝負を投げだすつもりはサラサラなかった。
婚活戦士に、途中棄権の選択肢はないのである。
幸いこの後、
ティアンナにはお待ちかねのツーショットトークタイムが待っている。
部屋には調査員も、次の衣装を手に待っている。
気合を奮い立たせ、ティアンナは胸を張った。
―――――――
そして現在に至る。
調査員(侍女)の手により、「プライベートのちょっと抜け感こなれコーデ」に変身したティアンナは、
バスケットにふたつのグラス、とっておきの赤ワイン、バケットとチーズ、ドライフルーツやチョコを詰め込んで、レイフォードの部屋の前に立っていた。
もちろん未婚の婦女子たるもの、部屋に押し入るつもりはない。
気軽な感じで飲み直しのお誘いをかけるつもりだ。
軽い調子を心がけて部屋をノックし侍従に取り次いでもらい、
約束通り応接室にお誘いをかける。
少々着崩した礼服のままのレイフォードは物憂げで、
その様すら例えようもなく美しい。
「ワインはいかがかしら?」
ティアンナは応接室のソファにあえて深く腰掛け、
リラックスした様子で酒を勧める。
「ええ…はい、頂きます」
レイフォードは微笑んで答えてくれるものの、乗り気でないことは明白だ。
ティアンナはまた、少し痛む胸を無視し、
「飲みたいってお顔じゃありませんわね。
結構ですわ、何か他のものを用意しましょう。
レイフォード様、何か気にかかることがおありなのね」
レイフォードははっと顔を上げる。
「すみませんティアンナ嬢、気を遣わせるつもりでは」
「結構ですわ、何がお好み?」
「…では、…ミルクティーを」
侍女にミルクティーを用意させる間、
ティアンナはちょっと不貞腐れたふりでカマをかけてみた。
「で?レイフォード様の恋は上手くいってらっしゃるの?」
「唐突ですね。いえ、まだ…」
「まだ?」
「…失言でした。お忘れください」
「もう聞いちゃいましたわ。
で、わたくしの推測によるとレイフォード様の片思い、といったところなんでしょうか」
「そう…なんでしょうね。
うん、きっとそうだ」
ん?
なぜちょっとそこに引っかかる?
「へえ、一体どういうお方なの?
令嬢たち憧れの令息を射止めた女性とは」
「…どういう方なんでしょうね。
実は僕自身、よく分からないのですよ」
はあ?
なにそれ?
「へえ?レイフォード様は実体のない幽霊にでも惹かれていらっしゃる?」
「いいえ、いいえ、そのようなことは。
…でも、そうですね、幽霊…。
彼女は自身のことを、それに近しいように思っている節があります」
「なにそれ怖い思想」
「いや、致し方ないのですよ、彼女の境遇を思えば」
レイフォードが右手に、一枚のメモ用紙を転がしているのが分かる。
彼の視線はそこに注がれている。
「そちらのメモは?」
「こちらですか?…彼女が書いたものです」
メモにはこう書かれていた。
『疾きこと風のごとく、徐かなること林のごとく、
侵掠すること火のごとく、動かざること山のごとく』
なにこれ、すごくいい。
どっからどう見てもケイナ嬢の字で失恋決定だけど、
この文句すごくいい。
「この言葉、すごくいいですわね」
「でしょう?」
「ええ、この言葉が出てくる女性とはわたくしお友達になれそう」
「ティアンナ嬢は見る目がありそうだ」
そう言ってレイフォードは、瞳を大いに細めて嬉しそうに笑う。
ティアンナの胸はまたきしんだ。
「…うまく行くといいですわね、ケイナ嬢と」
レイフォードは弾かれたように目を見開くと、
「…お気づきでしたか」
「当然でしょう」
「大したお方だ」
「…レイフォード様」
「はい?」
「わたくし、ずっとあなたに焦がれておりました。
わたくしをあなたの将来の伴侶の候補に、入れてくださらない?」
「…この流れで、それを言いますか」
ええ、
ティアンナはミルクティーをぐっと飲みこみ、
「侵掠すること火のごとし、ですわ」
と笑った。
レイフォードも笑い返し、
「お気持ちは大変嬉しく頂きます。
しかし申し訳ございません、私には恋焦がれるひとがおりますので」
「承知いたしましたわ。
…ねえレイフォード様、そちらのメモ、わたくしにくださらない?」
「いたしかねます」
「けち」
「彼女のどんな小さなものでも、僕は手放したくないのですよ」
「わあ、重たい」
はは、とレイフォードは綺麗な顔で笑った。
ティアンナはバスケットを手に立ち上がる。
「ではごきげんよう」
「ティアンナ嬢」
「なにかしら?」
「…大丈夫ですか?
…僕が聞くことではないかもしれませんが」
ティアンナはもう一度、レイフォードの手の中のメモを見る。
何度見ても、そこにあるのは、自分の書いた菫のカードではない。
ティアンナは顔を上げて、努めて格好のいい表情を作った。
「動かざること、山のごとし、ですわ」
――――――――
「…で、これは一体どういうことなのです」
レイフォードは眉間にしわを寄せて、ごとごと動き出した馬車に揺られて気持ちが悪そうなティアンナに問う。
「わたくしだって聞きたいですわよそんなの!」
そうだ、ティアンナだって訳わかっていないのだ。
あの後レイフォードと飲むはずだったバスケットをそのまま持ってケイナ嬢の部屋に押しかけ、話に付き合わせながらしこたま飲んだ。
っていうかボトル全部飲んだ。
人生で初めてあんなに飲んだ。
本日はもう閉店のつもりのティアンナであったが、
朝両親にたたき起こされ、侍女を使ってドレスアップさせられ(かろうじてコルセットは回避)、少し食べていけとサンドイッチを食まされ、珈琲を流し込まれ、
エッサホイサと両親にこの馬車に詰め込まれたのであった。
直後に馬車は走り出し、哀れティアンナは両親の顔を恨みがましく見るしかなかったのだった。
「ちょっと!止まりなさいよ!」
馬車の窓から御者席に声を飛ばすが、
「すみませんご令嬢、ご両親から緊急時以外は中継の街まで決して止まるなと」
「買収されてるじゃないの!
王城の御者がそれでいいわけー?!」
と叫んだところで、ティアンナの気力は尽きた。
「もういいわ、寝る。
レイフォード様、わたくし昨日やけ酒して二日酔いなの。
休ませてちょうだい」
「あの後そんなに飲まれたんですか…おひとりで」
「いいえ、ケイナ嬢に付き合ってもらったわよ」
「なんですって!」
レイフォードは半分立ち上がる。
揺らすな揺らすな、気持ち悪い。
「何も危害は加えちゃいないわよ、
わたくしも純粋に彼女のことが知りたかっただけ。
誰かさんはあの素晴らしい句のメモをくれないし?」
レイフォードは口をぱくぱくさせている。
「いい子ね、彼女。
とっても素直で、フラットで。
どこであんな子捕まえてこられたの?」
レイフォードは虚を突かれたような顔をしたが、
やがてゆるゆると首を横に振った。
「いいえ、違うんです。
…僕が、彼女に捕まったのですよ」
「へえ?捕まったの?」
「ええ、ぐいっと」
ぐい、と手綱を引っ張るようなしぐさで笑う。
「そっか、彼女も戦士かー…」
「戦士?」
「いいえ、女性はみな戦士ってはなし」
「そうですか」
それからレイフォードは抜群の気遣いを発揮し、ティアンナを休ませてくれた。
ティアンナは目を閉じ、眠ったふりをしながら、
昨日のケイナ嬢とのやりとりを思い出していた。
たぶん、このふたり、既になにかあったとおもう。
調査票には職務以上の接点皆無、とあったが、
半年前と具体的な時期を上げてレイフォードの行動変容を上げ連ねたとき、
『ギクッ』
とした。
明らかに『ギクッ』って。
ケイナ嬢は比較的素直で分かり易いひとだったから、
たぶん、正解だと思う。
なんかあるぞ、こいつら。
もー本当に空回りじゃないのやってらんないわよー、
とぐるぐる考えているうちに、
ティアンナは本当に眠りに落ちて行った。
気付いたら雨だった。
馬車の窓からぐるりと一周見渡すと、
「あれ馬車が減ってるわね」
本を読んでいたレイフォードは、
え、と顔を上げる。
なかなかの土砂降りだ。
ティアンナの家の馬車で小ぶりなものが付いてきていたのだが、
それがいない。
「途中で帰ったのかしら。
わたくしどうやって帰ればいいのかしら」
「いやそれはないはずです、あれにはケイナ嬢が乗っている」
「え、でもいないわよ」
「…本当だ。いつの間に」
レイフォードはすぐさま御者に声を掛け、状況確認を命じる。
「ああ、お屋敷の馬車はぬかるみに弱いとのことで、
少し前に道をそれて引き返しましたよ。
ケイナ嬢は近くの街に宿を取らせるようです。
明日辻馬車を使って合流してもらいます」
「なんてことをしてくれるんだ!!!」
レイフォードは怒った。
それはもう怒った。
いやー、多分うちの御者もこっちの御者も、悪くないと思う。
うちの両親から、
「中継の街までは絶対ふたりきりにしろ」
とか言われてたんだろうし。
それを伝えると、
「なぜあなたはそんなに他人事なんですか」
と怒られた。わあとばっちり。
「まあ、わたくしの婚姻って両親のパワーゲームでもあるからね。
駒なのよ、所詮は」
「それでいいわけがない!!」
レイフォードはティアンナに向き合った。
「いいですか、
僕はあなたがくれたあのカードの言葉、
掛け値なしに本当に嬉しかった。
こうして話して、恋にはならないけれど、
とても素敵な人物だということは良く分かった。
そんなひとが駒のように扱われることを許すなんて、
あなた自身が許しても僕が許せるはずもない」
ティアンナはぱちくりした。
なんなら酔いもさめた。
『温かな幸せが、
あなたの隣にありますように』
自分が書いたカードの言葉が、ふいに思い出された。
「いいですか、
あなたには絶対に相応しい男がいます。
あなたの魅力にとっ捕まる男がいるはずだ。
ティアンナ嬢、どうか、」
その日までへこたれないで。
あなた自身を大切にして。
「…僕が言えた言葉ではありませんが」
最後に気まずそうに、レイフォードはつぶやく。
「とにかく、僕はケイナ嬢を探しに行きます。
馬を使いますので、ティアンナ嬢は屋敷へお戻りを。
これは僕個人からのお詫びの気持ちでもありますので、
エルスワース侯爵家の馬車をお使いください」
そういって颯爽と馬にまたがりケイナ嬢を探しに行ったレイフォードは、
とても逞しかった。
残されたティアンナは侯爵家の馬車に乗り換え、
侯爵家の使用人が代わりに王城の馬車に乗り込む。
なんでわざわざ乗り換え?とも思ったが、
公用車でなく侯爵家の馬車を使わせることで、
「しめし」がつくならそれでいい。
がたごと雨の様子を眺めながら、考えていた。
『温かな幸せが、
あなたの隣にありますように』
時間をかけて練習し、彼に贈るために書いた言葉が、
今、ティアンナ自身の胸に寄り添った。
へこたれないで。
温かな幸せを手にするその日まで。
「…もうちょっと頑張るかぁー…」
屋敷に到着すると、
両親が出迎えに出た。
「ティアンナ…」
「すみませんお父さま、お母さま。
エルスワース侯爵令息にはお断りのお返事を頂きましたわ」
「いいんだ、いいんだティアンナ。
すまない、お前を傷つけるつもりじゃなかった。
勝手をした私たちが悪い。すまなかった」
「傷つく?」
「だって、ティアンナあなた、泣いているじゃない」
「泣いている?わたくしが?」
「…いいえ、これは心の汗ですわ、お母さま」
ティアンナは自室へ向かう。
「調査員」
「は」
「湯あみを」
「ただちに」
「…ねえ、調査員」
「は」
「わたくし、今回はだめだったわ」
「残念でございます」
「結構頑張ったんだけど、だめだった」
「残念でございます」
「でもね、こうやって努力して、
ちょっとずつ強くなる自分が、
…あんまり嫌いじゃないのよ」
「さすがでございますお嬢様」
「さあ、まだまだ頑張らなきゃね」
わたくしの名はティアンナ、
高潔なる婚活戦士である。
ティアンナ嬢はとても魅力的な女性です。
そのうち誰かが絶対にとっ捕まる。
レイフォード君はケイナあたりにいっかい叩かれればいい。