イエローローズチューリップ
「隣国の第2王子?」
あれから数日、私は父上に大事な話があると言われ、
父上の書斎に行った
父上の摂政であるロバルド・リンカーが紅茶を出してくれたので、セレスティアは父上に促されたままソファに座り話を聞いた
内容は隣国の第2王子と私との婚約の話だそうだ
「ホントは父上ね?セティを変な奴と婚約させたくないんだよ~ 恋愛して結婚して欲しいの!でも、相手は大事な同盟相手だし……
もちろん!無理強いはしないよぉ?」
くねくねと気持ち悪い←
親バカっぷりにはホントに呆れるけど……
これでも凄くいい父親なんだとは思う
威厳も何も無いけど←
「婚約でしょ?いいわよ」
「やっぱり~?……って、えぇ!?」
父上は驚愕した
「なんで~!?」
「いや、断ったら父上の立場が悪くなるじゃない」
そう言うと父上は目を潤ませた
「ウチの子凄くいいこ~!でもことわってくれてよかったのに!!逆に断って欲しかったよ~!」
そんな事したら面倒になることわかってるの?
ロバルトもため息ついてるよ
ハァ……←
「父上?ただでさえ今のお立場が悪いのに、これ以上悪くなったらどうするんです?」
「ウチの子辛辣ゥ!!」
国王はしくしくと嘘泣きを始めた
それを冷めた目で見ている私とロバルト
こりゃ救いようのないアホだ
「こりゃ救いようのないアホだな」
!?
私の心の声を代弁した!?
っていうかこの声……
「ロバルトぉ!?自分の君主に向かって何言ってくれてんのぉ!?」
やっぱりロバルトだったみたいね
「おっと失礼、つい心の声が」
うわー…
「ちょっとそれどうゆうこと!?」
こんなのが国王で良くこの国成り立ってるよ……
きっとロバルト含め部下が優秀なんだな
「だいたいなぁ!お前には子供がいないからそういうことが言えるんだよ!!」
「……」
「せめて何か言ってぇ!?」
ロバルトは無言の圧で国王を見ている
……いや、睨んでる?
「ところで父上、顔合わせはいつになるの?」
国王は思い出したように顔を引き締めた
「……明日だ」
・・・は?
「ゴホン……すみません、もう一度」
「明日だ」
明日?明日ってあの明日?
いくらなんでも急すぎる気が……
「隣国のもの達は随分と無礼なのね」
呆れた……
セレスティアは冷めた目で国王を見た
「いえ、そうゆう訳ではないのです」
そこにロバルトは横槍を入れた
「どうゆうこと?」
「実は、1ヶ月前から文で便りがきておりました」
「1ヶ月から!?……父上?」
セレスティアから黒い覇気が滲み出ている
国王はその様子に焦ったのか
「ち、違っ……誤解なんだ!!」
「どこがどう違うのかしら父上」
「す、すみませんでしたー!!」
国王が素晴らしいスライディング土下座をかました
その後しばらくセレスティアの説教が下り、
国王は馬鹿という結論に至った
「それで?その方の名前は?」
ゴホン…と国王が声を鳴らした
「……トムリア王国第2王子、ダイヤ・アン・リウム殿下だ
彼は国内からの支持も高く、優秀で我が国の王配になるには十分な器量と言えるだろう」
歳も近いしなと呟いた
……それくらいなら別に…
てゆうか逆に受けた方が良いのでは?
「だが、」
国王は話を続ける
「少々、性格に問題がな……」
……問題?
「それって……」
「まぁ、会ってみれば分かるだろうが」
そのあとはロバルトから相手方の資料を渡されて
明日の事について話をしてから父上の話は終了した
(一応リアムにも話しておいたほうが良いわよね……
母上は知っていると思うから良いか)
セレスティアはリアムに婚約の事を報告しに行った
護衛の人に挨拶をしてからドアを二回ノックする
「リアム?ちょっと良いかしら」
声をかけると部屋の中からガタゴトと音がなり静まった
しばらくすると、ガチャと部屋のドアが開いた
「……どうかしたのですか?姉様」
扉に手を付き
キラッと効果音がつきそうなほどいい笑顔でセレスティアを迎え入れた
「たいしたことじゃいわ……というか、さっき凄い物音がしたけど大丈夫?」
そうゆうとリアムは少し焦ったように”なんでもないですよ”
といった
”それならいいのだけど……”セレスティアもあまり深く探索はしなかった
(誰しも隠し事の一つや二つあるものね)
「部屋、お邪魔してもいいかしら」
と言うと何故かリアムの顔が赤くなった
「なっ……あねうッ……ダメです!!」
途中言葉になっていないけど断られた……なぜ?
「め、迷惑だったかしら……」
あ、やばい泣きそう……目が潤んできた
「ッ」
ただでさえ赤かったリアムの顔がもっと赤くなった
「リアム?顔赤いけど熱でもある?具合悪いのかしら」
そう言ってリアムに近づいたら避けられた
……え?
「リ、リアム?」
そうすると見かねたのか、護衛の騎士が
「王女殿下、それ以上は」
と言ってセレスティアとリアムの間に割って入った
「あぁ、リアムをとってしまってごめんなさいノア」
護衛の騎士こと、ノア・アストロメリア
近衛騎士団に所属している
この2人、結構仲がいいのよね
「姉上!?ノアとはそのような関係ではないと何回も言ってるじゃないですか!」
「そうですよ、王女殿下!コイ……リアム……様とはそのような関係では……ッ」
「でも長年一緒にいるのでしょう?」
「それはッ私がリアム…様の護衛騎士だからで……」
騎士団には種類があり、
主に王家の護衛役となる精鋭が集った近衛騎士団
(護衛騎士とも言う)
警察のように取り締まり、国民の安全を護る警極騎士団
そして、
魔獣や悪魔などを倒し、外部から国を護る煉獄騎士団
騎士団長の皆さん、顔がいいのよね……
てゆうか騎士って皆顔がいい気が……もしかして騎士団は顔が良くないと入れないとか……!?……なわけないか
とゆううかリエも顔がいい……
リアムは面食いなのかしら
「……え……あ…う……姉上……姉上!」
ハッ
しまったボーっとしてたみたい……話、聞いてなかったわ
「ご、ごめんなさい?」
「どうかしたのですか?」
「なんでもないわ」
私が考え込んでいる間、リアムが呼び掛けてくれていたみたいだ
「リアム様、いくらなんでもこんな長時間王女殿下を外で立たせておくのは些かどうかと」
ノアがスっと会話の中に入ってきてそう言った
「リ、リアム?私はこのままで大丈夫よ」
リアムは少し考える素振りをしてからこちらを見た
「そうですね……では、お入りください」
私を部屋の中に招くように扉を全部開けた
「ほ、ホントに私は大丈夫よ」
そう言うとリアムはニッコリ笑って
「いえ、姉上のお身体にさわりますので」
こうゆうとこも紳士だ
さすが攻略対象の1人
「あぁ、ノアも入れよ?」
ゆっくりとリエの方を向き圧をかけた
……しかもタメ口
「もちろんだ……です」
あらあら
「では、本題に入りましょう」
リアムはソファに腰を降ろして真剣な顔でそう言った
「そんなかしこまらなくても……
まぁ、良いわ
実は、私に婚約者が出来たの」
・・・「「は?」」
わぁ
2人ともすっごい声低ーい
リアムは眉間に皺を寄せ目付きが鋭くなった
ノアはあからさまに顔を顰めてる
そんなに私が先に婚約者見つけたのが嫌だったの?
「すみません姉上、もう一度お願いします」
リアムはまだ頭の整理が出来ていないようで
頭を抱えながらそう言った
「だから私に婚約者が……」
「なぜ、そういった話に?」
リアムはワナワナと震えている
「父上が勝手に持ってきた話だけど断る理由も別にないし」
セレスティアは、興味のなさそうにそう言った
「……相手の方のお名前は」
「……確かダイヤ・アン・リウムだったかしら」
そう言うとリアムは瞳を大きく見開いた
「あのダイヤ第2王子殿下ですか!?」
「知ってるの?」
そう聞くとギョッとした顔でこちらを見た
「姉上は知らないのですか!?ダイヤ第2王子殿下と言えば、
齢10歳で大人にも解けなかった”心と世界の繋がり”を発見した凄い人なんですよ!?」
あー、確かに新聞とかで見た事あるかも
いかにもリアムが尊敬しそうな功績ね
「あの人だったら仕方ない……?」
ボソッと呟いたのを私は聞き逃さなかった
「でも、性格に少し問題がみられるみたいよ」
そう言うとピタリとリアムの動きが止まった
「問題……?」
ノアは思い出したようにハッと息を呑んだ
「確かダイヤ第2王子殿下は頭も良く成績優秀だけど、とある理由で婚約がなかなか決まらないとか……噂ですが」
その理由を父上は教えてくださらなかったの
「その理由は?」
「……ダイヤ第2王子殿下の極度の女嫌いです」
……そんだけで?
「何故そんなことで婚約が決まらないんだ?」
リアムは私の心を代弁するかのようにそう言った
「それが、どうやらダイヤ第2王子殿下は婚約者候補の令嬢に自分を嫌いになるように仕向けるそうで……」
あぁ……それで
私もリアムも何とも言えない表情になっている
「で、でもそれなら婚約すること無く終わるのでは!?」
突如リアムが叫んだ
「いや?今回はそうはいかないみたい
王子がずっとそんな調子でいたから
王子の兄である国王陛下の堪忍袋の緒が切れたみたいで……」
「……あぁ、なるほど」
それで理解できるのもどうかと思うけど……
「ですがそれなら、別の婚約者を作って婚約を断るという手もございますが……」
スっとノアが手を挙げて恐る恐るそう言った
「……その婚約者に申し訳ないわ」
ノアは考えてからこう言った
「でしたら、リアム様はどうでしょう
確か、王族ならば家族間での婚姻は珍しくないでしょう?
それにセレスティア様とリアム様は血の繋がりがありませんし」
ノアはナイスアイデア!とでも言うように突拍子もないことを言い出した
リアムはそれを聞いて頬を赤らめている
「……まぁ、そうゆうことだからよろしくね」
セレスティアはノアの言葉を完全に無視した
「え、ちょ、セレスティア様!?」
ノアは無視されるとは思わなかったのか少し慌てている
セレスティアはそのまま2人の戸惑った声に聞こえないふりをして、部屋から去った
自分の部屋に戻り鏡の前に立ち、
少し服をずらして鏡に映る自分胸元を見て呟いた
「私が、誰かと結ばれるなんて事はできないのよ
それがたとえ、”婚約者”だとしても」
セレスティアはそう言い、諦めたように笑って目を伏せた
胸元には花の紋様が刻まれていた
黄色いバラ...「嫉妬」
黄色いチューリップ...「かなわぬ恋」