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情報収集②

今のところ登場人物少なくてごめんなさい……!

もう1~2話でいっぱい人出てきます!

 情報収集のため書斎に入るという第一ミッションは願ってもない展開で叶ったグレイだったが、その後の本題、本から知識を得る、というところが想像していたよりも何倍も難しく、数日後、グレイは頭を抱えていた。


 それは、義母や義姉が書斎に訪れる頻度が思っていた数倍多かったためである。


 シンデレラの絵本でも事あるごとにシンデレラをいじめていた……などの記述があったようななかったような記憶があるが、実際書斎に義母や義姉が代わる代わる――1時間に一度ぐらいのハイペースでやってきては、部屋埃っぽいだの、少ししか進んでないだの、埃まみれで汚いだの罵っては満足して帰っていくのである。


 その上、さっきはどのあたりを掃除していた、だとかを彼女達の間で事細かに情報共有しているときた。そんな小学校の時の掃除の時間並みのしつこい監視の目にグレイはうんざりして、思わず「暇か……!」と叫びだしたくなった。外で聞き耳をたてられていては堪らないので心の中で叫ぶだけに留めているのだけれど。


 あんなにちらちら監視されていてはこっそり屋根裏部屋に本を持ち込もうにもその途中でばれて盗みだ何だと騒がれるに違いない。やっと分かった。彼女たちは、グレイが偶々目に入って、それが目障りだからいじめているのではないのだ。もはや、グレイをいじめること=楽しい趣味の域なのだ。


 その上、出かける時ですら使用人達にグレイの監視を申し付けて出ていくのである。使用人も使用人で、一度たりともグレイの様子を見に来たことなどない。その上で、グレイがきちんと掃除をしていても、さぼっていたと報告されグレイが義母達に罵られる、という負のループが発生するのである。改めて、シンデレラの立場の低さ半端ない……!あと命令無視されるとか義母達全く慕われてない……!と義母と使用人両方に感嘆を禁じ得ない。きっと義母達の外出中、使用人たちもサボっているのだろう。


 その嫌われ義母の名前はスーザン・ガディネ。百合の名前をもつ彼女ではあるが、実際のところは百合というよりも棘の多いバラだと心の中で悪態をついている。

 そして、その娘たち、義姉の名前はデイジーとロザリーと言い、花由来の彼女たちの名前はスーザンがつけたものであろうと推測した。

 義母と一緒になって楽しそうにグレイをいじめているのは姉のデイジーであり、妹のロザリーは直接何かをしてきたことはあまりないものの、グレイに対して無関心の態度を貫いている。


 とはいえ、ここ数日の義母達の態度を見ていて少々安堵している部分もあった。毎日毎日言葉で散々罵られてはいるものの、書斎掃除を言いつけられた初日に義母に髪を引っ張られた以外で、肉体的に痛いタイプのいじめはないのである。


 グレイの記憶を辿ってみても、デイジーに温めの紅茶をかけられたり、酷いものでもせいぜい義母に真冬に冷たい水を浴びせられた程度なので、出血するタイプの過激なものはひとまずない。もしかすると先日髪を引っ張られたのが最上級の虐待だったかも、とも思う。

 グリム童話では可愛がっている実の娘に足の指を削ぐように言う義母が現状その調子で生ぬるいので、シンデレラメルヘンver.である可能性が高いのではないか……と確証はないが、そう思えるだけでずいぶん気分が楽だった。


 そんなわけでグレイが義母達の目を盗んで本を読めるのは義母達の外出中の短い時間だけだった。


 その外出も、わざわざグレイに、

「これから私たちは出かけてくるけど、あなたは屋敷に残って掃除をしているのがお似合いよ、シンデレラ。それにあなた、外に出たくても屋敷の外に出るための服も持っていないものね、みすぼらしいわ!」

 と出かけることを本人たちが直接教えてくれるのでありがたかった。


 その場では、

「私も外へ出てみたいですお義母様、お義姉様みたいに可愛いドレスが欲しいです」

 と泣いてすがるような演技を都度しているが、満足そうな顔で彼女たちが屋敷を出て行ったことを確認するなり、ニコニコしながら、1時間ほどいつもの数倍のペースで掃除をした後、書斎の本を片っ端から読み漁っているのである。

 というのも、普段の掃除はわざとかなり遅いペースで行っている。義母達は愚鈍で鈍間なシンデレラとそれすらも楽しそうに罵っていたが、本当は1時間で終わる掃除をわざと半日かけてやっていたりもする。

 理由は単純明快だ。書斎掃除の期間を1分でも1秒でも引き延ばしたいからだ。

 その為、1時間真面目に掃除をすれば、義母達の目には一生懸命掃除をしていたけれど使用人達にすら虚偽の報告でいじめられるシンデレラの像が映るのであった。


 まあ実際のところ、果歩の記憶が無かった時のグレイは、小言を言われるたび本当にシクシクと泣いていたし鈍くさくてしかたなかったのだ。しかし、果歩の記憶が戻った今は全く動じないメンタルと何事もそれなりにこなす技量を手に入れた。

 むしろ、性格は過激になったとも思っているので、いつか思わず逆ギレしていじめを悪化させそうで怖いと思っているところまである。


 そして本日も義母達が出かけて行った後、グレイは本を読んでいた。

 一週間の中でも短い時間しか読書の時間が取れず、まだまだ十分な情報が得られたとはいいがたい中ではあるが、ひとまず現在自分が暮らしている国や領地の地図などは実際に見て確認することが叶ったのだから大収穫である。


 まず、グレイが暮らしているのはユーグラシア王国の南西に位置するガディネ領。小麦が特産の豊かな土地だ。そしてガディネの姓を持つグレイは、元領主であり今は亡きアルフレッド・ガディネの実娘である。……つまり、グレイは侯爵家の人間であるということが判明した。

 また、ガディネ領は税収としても悪くない土地であり、約7000人と、国内の他領と比べても比較的多くの人口を有する。そして領内の民から集めた税金を使って、義母達は贅沢三昧しているようだ。

 屋敷を出ると領内には小さめの町が転々と存在しており、町同士では物の売買や商人同士の交流が盛んではあるものの、他領との関りはそれほど多くないらしい。

 とはいえ、帳簿を見る限り、ガディネ領の外に小麦を出荷し、他領から肉や魚を仕入れる程度の交流はあるようだが。

 ……なんて、そんな情報の山となっている父の書斎は父が亡くなってから3年間、誰かが立ち入るどころか掃除すらされてない有様なのである。

 また、この部屋の他に義母や義姉が執務室や書斎を持っているという話は聞いたことがない。


 そこまで考えて一点の疑問が生じた。この領の財源、今、誰が管理をしているのだろう。


 義母達が好き勝手に使っているお金はもしや、全く管理のされていない財源由来のものではないのか。帳簿もつけず、税金をずさんな管理をしていては、どこかで誰かがお金を横領していたとてばれるその日は来ないだろう。そしていつか国からガサ入れが入ったその日には、監督不行き届きでガディネ家は終わりである。没落の一途だ。

 ……と、そこまで考えたが流石にそこまでの事態には陥っていないとは信じたい。現実的なのは、使用人の誰かに管理させているのだということである。


 とはいえ、現状、グレイは屋敷にいる使用人の顔と名前も一致していない。というのも使用人の皆はグレイが話しかけたとて口もきいてくれないのだ。誰が管理しているのかなんて今のグレイには知る方法もなかった。

 ……が、財源の管理の件は早急に調べる必要があるだろうとも思った。何故ならば、万一ずさんな管理が行われていたとして、更に国にばれて横領で義母達の誰かがお縄になったとして、連帯責任でグレイまで首を切られては笑い事では済まないからである。


 心労が一つ増えた……と思っていると玄関の方が騒がしい。義母達が返ってきたのだろう。きっとそのまま真っ直ぐ書斎へ私をいびりに来るのであろう、と思ったグレイは本を棚に戻し、掃除をしていて義母の帰りに気がつけなかったフリを始めたのである。

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