第陸話 秋妃の部屋
しばらく歩いていくと、とある部屋の前まで来た。
そして、その部屋の前で止まると、詞夏さんは深呼吸をして扉を開けた。
「秋妃様、暁明さんを連れてまいりました。」
「あら、ありがとう。入って頂戴。」
「はい。」
部屋には、沢山の本棚や机がある。そして、窓際には一人の少女が立っていた。
「はじめまして、暁明さん。私が秋妃、彩雅です。」
「は、はい!僕は暁明と申します!」
緊張しているのか、声を震わせながら自己紹介をする暁明を見て、微笑む秋妃。
「秋妃、早速だが本題にうつってもらいたい。貴女の侍女明鈴のことだが…」
泊詠さんは僕の代わりに伝えてくれた。
そうだ、今日はそのために来たんだ。よし、仕事頑張るぞ。
「えぇ、分かっていますわ。明鈴がどうなったか、思い出すだけでも胸が張り裂けそうですわ。」
秋妃様は丁寧に何があったかを説明してくれた。
首元が裂かれていたこと、その直前になにやら言い争っているのが聞こえたこと、同室の詞夏さんが犯人に疑われていること…
「でも、詞夏はそんな事しませんわ!!」
「私もそう思います。が、しかし今は我々は中立の立場なのでそれはなんとも。」
「……そうですよね。」
泊詠さんの言葉を聞いて俯く秋妃。涙を浮かべている。
そりゃそうだよね、自分に仕えてる側近が殺された。彼女の悲しみは計り知れない。
それでも、彼女は自分の感情を抑えて冷静でいる。強い人なんだなぁ……。
「とりあえず、私は詞夏さんの無実を証明するために動くつもりです。」
「暁明さん……。」
暁明は、決意に満ちた目をしていた。それを見た秋妃もなんだか嬉しそうにしている。
「私が手伝えることなら何でもします、だからどうか、詞夏の無実を証明してください!」
「はい、必ず。」
秋妃と暁明が握手を交わす。
その後は泊詠さんたちと共に部屋から出た。
「泊詠さん、僕は今から証拠集めに行ってきますね。」
「ああ……。」
何故か泊詠さんは少し考えている様子で返事をした。
ん?なんか変なこと言ったかな?
「あの、泊詠さん?」
「善人の皮を被った輩に惑わされるなよ。躊躇したら足元をすくわれる。」
「え?」
「行くぞ朱蕾。」
それだけ言うと、泊詠さんは朱蕾さんを連れて執務室に行ってしまった。