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不思議探偵暁猫と招かれざる事件達  作者: ぽんでぴよっこ
第一章 高嶺の花
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第弐話 探偵事務所の愉快な仲間達(上)

依頼人の名前は詞夏シーシァというらしい。

朱色のきれいな長髪に額から赤い角が生えている彼女は儚げ美人、と呼ぶのに相応しいほど美しい。

そんな彼女は四季妃の中の秋妃であるリュウ 彩雅ツァイアの侍女をやっているらしい。

因みに四季妃というのは現在の皇帝に仕える妃たちのことで、後宮に住み、其々が協力して皇帝の仕事を手伝うのが役目。

他国では後宮というと皇帝と婚姻関係がある妃が入るものらしいが、この国では四季妃と皇帝は一切の婚姻関係がない。位の高い役人のようなものである。

そのため、彼女たちは時々大臣よりも強い権限や力を持つことがある。

そんな四季妃の女官、しかも侍女となれば賢く、明るい少女である彼女は彩雅様からの信頼も厚く、詞夏もまた彼女に心から仕えていた、らしい。

そんな彼女だが、ある日同じ部屋の別の侍女(名は明鈴(メイリン)という)の殺害の容疑をかけられてしまう。

その時刻、詞夏は外出中だったらしく、無実の証明は難しい。

しかも、使われていた凶器は無く、明鈴の首元には噛まれたような傷があったという。

詞夏のような鬼達は人の血肉を主な食べ物とする。

そのため彼女が疑われたらしい。

叫ぶように助けを乞う彼女を宥め、一旦主の元へ帰す。

人がいなくなり部屋に静寂が漂う。ようやく、息ができたような気がした。


(……参ったな、僕が得意なのは失せ物と猫探しだけなんだけど。)




実は暁明は俗に言う探偵業なるものは得意ではない。どちらかといえば失せ物や猫などを探す方が得意である。本来こういう話を聞くのは担当の奴がやるべきなのだが…

まぁあの人達に相談役をやらせても依頼人が困るだけだから仕方ない。

階段を登っていくと、何処からか現れた少女が暁明に飛びつく。


「うわッ!?」


暁明は僅かに蹌踉めくが慣れてるのか、流石にもう頭をぶつけたくないのか、少女を支えると、説教を始めた。


「暁華!!危ないって言ってるよね!?」

「でも、お兄様なら支えてくれるかな〜って思って。」

「……」


ふふっ、と笑う暁華に呆れてものが言えない暁明だが、表情が和らいでいる。

きっと、たった一人の妹であり、文字通り彼自身でもある暁華のことが可愛いのだろう。

暁華は事故があって分裂した、言わば暁明のもう一つの自分であるのだが…まぁ置いておこう。


「あ、そうだ。お兄様の代わりに朱蕾さんが代わりに料理作ってたよ。」

「え、ホントに?迷惑かけちゃったかな…」

「いつもどおりじゃない?」


この妹、意外と毒舌である。言いたいことが言えない暁明とは性格が真反対。

よく妹かどうか聞かれることがあるが、そういうところなんだろう。



そんなこんなで台所に急ぐと包丁のトントン、という音がで等間隔で鳴っていた。

近づくと、暁華の言う通り、朱蕾が一人静かに夕餉の準備をしていた。

美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。


「あ、朱蕾シュウレイさん…すみません任せちゃって…」

「大丈夫です。」

「ホントにすみません、手伝います!」

「大丈夫です。」


朱蕾としてはいつものことだ、と言いたげだがきっぱりと断られると、流石に辛い。

確かに朱蕾の動きは洗練されていてきっと一人でもこなすことが出来るのだろうと思うけれど、少しぐらい頼ってほしい。

実は朱蕾は暁明とは一切の関係がない。彼は彼の主人についてきているだけだ。

彼の主人がここに入り浸っているから、仕方なく来させられている。

それなのに料理や掃除を手伝ってくれている。


(…少しぐらい頼って欲しいんだけどなぁ。)

「…では泊詠ハクエイ様を起こしていただけませんか?きっと寝てらっしゃるので。」


聞き間違いかと思ったが、「起こしてくださらないのですか?」と聞かれ、これが幻聴ではないと実感する。


「…!わかりました、行ってきます!!」

「お願いします。」


少し呆れられた気もするが、それでも頼ってもらえるのは嬉しい。急いで泊詠さんを起こしに行こう。



とは思ったものの、何処かわからないので取り敢えず中央部屋に向かうと円卓には既に翠蘭、桜綾が座っていた。


「あ、暁猫シャオマオじゃん。今日も猫探し?」


翠蘭と札合わせをしていた、桜綾は此方を見つけると話しかけてくる。

ちなみに暁猫というのは暁明の渾名である。猫みたいに見えるかららしい。

個人的には嬉しいのだが、暁華に話すと、可哀想なものを見る目で見られた。これ如何に。


「はい、行方不明になった子猫を探しに。そういえば桜綾さん最近見ませんでしたが、何かありました?」

「親父がさァ、仕事を継ぐならいい加減仕事を覚えろっつってきたんだよ。」

「……此処いて大丈夫なんですか?」

「だいじょーぶだって。全部覚えたから、親父がくたばるまでは此処に入り浸れるな。」


桜綾は都で有名な商人の一人息子。一人息子だから勿論継がなければならない。

きっと親父さんは生意気な息子に苦労しているのだろうが…本人には知る由もない。


「そういえば泊詠さん見ませんでした?」

「泊詠?見てないな…翠蘭ツィランは?」


先程まで使ったであろう紙の束を抱えた少女、翠蘭に尋ねる。


『泊詠さんならさっき外に出ていきましたよ?』


翠蘭はサラサラ、と筆で紙に書き連ねる。


『お疲れのようでしたよ?まぁ疲れてるのならば無理に此処に来る必要はあるのかと思いますが…』

「ありがとうございます。ちょっと僕泊詠さん呼んできますね!」


翠蘭が文を書いている途中だが、朱蕾さんの頼み事を先に終わらそうと、外に出て泊詠さんを探すことにした。

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