第拾参話 証言
「どうぞ召し上がれ。」
「あ、ありがとうございます……」
僕は出されたお茶を口に含む。
……うん、美味しい。高級な茶葉を使っているのかとても香りが良い。
そして次にお菓子に手を伸ばす。これもまた絶品だ。
「どうやらお口に合ったようで良かったわ。」
「はい、凄くおいしいです。」
「ふふっ、ありがと。」
冬妃様は嬉しそうな顔を浮かべながら言う。
それから暫くの間、彼女と会話を楽しんだ後、僕は本題を切り出した。
「あの、一つ聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「えぇ、構わないわ。」
「明鈴さんについて教えて下さいませんか?」
「…………」
僕の問いかけを聞いて黙り込む冬妃様。そしてゆっくりと口を開いた。
「どうして、そんな事を知りたがっているの?」
「えっと……」
その問いに答えられず、口籠ってしまう。まさか、こんな風に聞かれるとは思わなかった。どうしよう……本当のことを言うべきなのか……。
僕は悩んだ末、本当のことを話すことに決めた。
「実は、明鈴さんが殺された事件について調べてるんです。」
「……どういうこと?」
僕の言葉を聞き、鋭い視線を向ける冬妃様。
それに対して、僕は包み隠さず話す事にした。
「僕は明鈴さんが殺された事件について、詩夏さんが殺していない証拠を集めているんです。…ですが、どう考えても詩夏さんしか殺せる人が居ないと思いました。だから称呼を集めようと…」
「つまり、貴方は犯人を捕まえようとしているということ?」
僕の言葉を遮って聞いてくる冬妃様。その表情はとても険しいものだった。
「そう……ですね。そう捉えていただいて構いません。」
「……なるほどね。」
僕の返答を聞いた彼女は、小さく呟いたあと、僕の目をじっと見つめてきた。
まるで心の奥底まで見透かすかのように。
「……分かったわ、私の知ってることなら何でも教える。」
「えっ!?良いんですか?」
思いのほかあっさり了承してくれたことに驚く僕。
冬妃様は笑顔でこう言った。
「えぇ、貴方には知る権利があると思うから。」
「ありがとうございます。」
「ただし、条件があるわ。」
「条件ですが?」
「貴方にお願いしたい事があるの。」
「……内容にもよりますが、出来る限り協力します。」
僕は彼女の言葉に対し、真剣に耳を傾けた。
「そう……なら貴方に頼みたいわ。」
「何でしょうか?」
「私の代わりに詩夏の話を出来るだけ聞いてあげて欲しいの。」
「……それだけですか?」
思っていたよりも簡単なことだったのに拍子抜けする僕。
しかし、冬妃様は首を横に振る。
「貴方は今、彼女が犯人だと思っているでしょう?でも、絶対っていうわけじゃない。」
…確かにそれもそうだ。僕はずっと決めつけてきた。
冬妃様の言葉を受け止め、頷くと、彼女は話を始めてくれた。