表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海底遺跡と森林限界  作者: 徒花案山子
47/126

名前

土手に寝転がって雲を見ていた。

日が沈みかけ、空はうっすらと紫がかっている。

ふと顔に影がかかり、顎を少し上げると彼の足が見えた。

上体を起こしてちゃんと目をやると彼も無言で空を見上げていた。

「隣に来なよ」

何となく声をかけた。

彼は視線をこっちに移し、優しく笑うと無言で頷いた。

彼が隣に座るのを見てからまた寝転がる。

彼も真似をして寝転がる。

「もう少しすると星が見えるよ」

「うん」

「ここは高い建物がないからよく見える」

「僕も見えるかな」

「どこら辺?」

「ちょうどあの辺、かな」

そう言って彼は目の前の空を指差した。

「今日は雲もないし、星日和だ」

空は紺色とオレンジがせめぎ合い、その中に小さな白い点が徐々に顔を出してくる。

「ほら、あれが僕だよ」

一際小さな点を示す彼はどこか寂しそうだ。

「思ったより小さいね」

「うん、もうすぐ終わってしまうから」

「…そっか」

「うん」

「じゃあもう会えないのかー」

「寂しい?」

「今はここにいるからそうでもないけど、多分明日から寂しくなると思う」

「そっか」

彼はおもむろに立ち上がると、土手を上がっていく。

「ねえ、名前は?」

「付けられる前に消えちゃうから」

もう影としか見えない彼は、多分笑っていた。


既に日が暮れた土手で一人考える。

次はどこの誰にお別れを言いに行くんだろう。

今から宇宙船に乗っても彼には追いつけないだろうな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ