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海底遺跡と森林限界  作者: 徒花案山子
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後始末

先代が死んだ。老衰で死んだ。

20年前は銃弾を避けた。避けずとも貫通した穴を一週間で完治させた。

今回は出来なかった。だからこの世界では珍しく老衰で死んだ。そういうことにしている。


捨てられた子供が拾われたのは塵が散乱した屑の溜まり場だった。

広く見れば結局屑には変わりなかったが、屑は屑なりに毎日が充実していた。

先代が死んだ、それまでは。


案の定跡を継いだ息子はまだ若く、それ故に鬼の首を自ら狩りたがる時があった。

しかし、気が向いた時にしか練習しないような楽器の腕前で賞など取れるわけなく、

彼は致命的なミスを犯してはその都度尻拭いの為に部下を殺した。

それは見せしめであり、もみ消しであり、目立ちたがりの彼自身であった。

そうして生き延びてきた彼は未だなお繰り返している。


緩やかな午後。自室で読みかけの本を読んでいた。

ノックもなしにドアが乱暴に開けられ、こめかみに銃口が突きつけられる。

驚くより先に理解する。あいつがまた何かやらかしたのだろう。

尻拭いは部下の仕事だ。だからあいつはここにはいない。こういう時だけ、いない。

違う。いつものことだ。そうしてみんな死んでいったのだ。

それでも恨み言や罵倒の一つでもくれてやろうと思ったが、何一つ浮かばない。

むしろ今まで以上に穏やかな心中に自分でも驚く。

近々、この組織は終わりを迎えるだろう。土台は既になく、上にいた者は落ちる。

別の組織に逃げた者もいた。足を洗う者もいた。その手伝いもした。

そう考えると今回、標的に選ばれたのは必然だったのかもしれない。

もうすぐ見えなくなる光に別れを告げ、目を閉じる。

無意識に呼び起こすあの時の記憶。


倒れこむ先代の体。赤い。広がる。

先代の最後の言葉。握った小さな手。

「息子を、頼む」

ああ、下手な感傷なんか捨ててさっさと後始末をしておけばよかったのだ。

今にしてようやく理解する。しかし、ここにあいつはいない。

仕方ない。落ちた鳥を仕留めるのはここにいない誰かに任せよう。

銃声が―

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